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最近、この国が妙に元気だ。
市場には人があふれ、子どもがパンを売り、大人が笑っている。
誰も命令していないのに、なぜか町が整いはじめた。
……不安である。
私の知る歴史では、「うまくいってるときほど、あとで崩れる」。
つまり、この幸福は、たぶんバグだ。
「陛下、国庫の収入が増えました!」
「それは困るな。」
「は?」
「お金が増えると、人は考えなくなる。」
臣下は目を白黒させた。
私はスープをすすりながら言う。
「貧しいときは、世界を見上げる。
豊かになると、鏡を見る。
どちらが先に飽きるか、という話だ。」
結局、税を増やすでも減らすでもなく、
“気づいたら払ってた”という曖昧な制度を採用した。
結果として、皆それぞれ勝手に税を払った。
額はバラバラだが、なぜか収支は合っている。
その頃、周辺の国々がざわついていた。
「小国が静かに繁栄している」という噂は、
大国にとってはホラーである。
ある使者が来て言った。
「貴国はどんな秘策を?」
「昼寝と対話だ。」
「……冗談でしょうか?」
「いいや、哲学だ。」
彼は帰り際まで困惑していた。
私は少し罪悪感を覚えた。
しかし、笑いながら気づいた。
「混乱させるのも、立派な外交だな。」
午後、私は庭で昼寝をした。
遠くで民の笑い声がした。
それは、権力よりも深い安心の音だった。
この国は、王の哲学ではなく、民の惰性で動いている。
だがそれでいい。
思想とは、きっと「何もしない勇気」のことだから。
「明日もきっと何かが変わる。
だが、私は変わらない。
それが王という仕事だ。」
そしてその隙に、国はさらに豊かになっていた。




