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MIRV戦争Ⅲ
まず主人公国は、例の帝国の北部へ侵攻した。
核の炎で軍政が崩壊し、
指揮系統が失われた帝国は抵抗らしい抵抗さえできなかった。
ただし主人公国は武力ではなく、
水・食料・医療・電力の供給網を掌握する形で領土を制圧した。
軍を破るより、生活を取り戻した方が支配は早い。
人々は生き延びるため、主人公国の旗を掲げるしかなかった。
沈黙帝国は違った。
混乱の中でも最後まで沈黙を守り、
抵抗も降伏も示さない国だった。
ただ、沈黙は理性ではなかった。
ただの“指揮不能”だった。
主力艦隊も防衛網も、水爆に晒され崩壊し、
軍部は沿岸部を放棄するしかなかった。
主人公国は、沈黙帝国の主要都市を
“無血占領”していった。
兵士は剣を抜くまたは銃を構える必要すらなかった。
街はすでに力尽きていた。
水爆やMIRVの軌跡が空を染めていた日々は終わり、
世界の八割以上が主人公国の支配下に入った。
しかし、戦争が終わっても、
人々は言った。
「終わった気がしない。」
それでも、世界は続く。
主人公国は自国及び旧例の帝国と旧沈黙帝国の復興に着手しつつ、
同時にMIRV迎撃網の再構築を急いだ。
なぜか、諸島の小国が、まだ余裕に見えるからだ。
世界は学ばない。
しかし、生きることは続く。
そして主人公国の王は、
“生き延びる”という一点だけを信じていた。
そしてその時、轟音が起こった。




