MIRV戦争Ⅱ
弾頭が例の山地に落ちた瞬間、
主人公国は報復としてMIRVを発射した。
沈黙帝国はその起動を探知し、
「主人公国が二国を同時攻撃する」と誤解して反撃。
例の帝国は沈黙帝国の反撃を
「主人公国との共謀」と誤解し、追加のMIRVを撃った。
こうして、
“誰も攻撃したくなかったはずの三国が、
互いを殲滅するためにMIRVを撃ち合う”
という悲惨な事態が始まった。
誰も悪くなかった。
だが、誰も止めなかった。
世界は、理由すら分からずに地獄へ落ちた。
最初の閃光は、海を越えた例の帝国の北岸を白く染めた。
次の閃光は沈黙帝国の西部をさらい、
さらに次の閃光が、主人公の国の沿岸から十里ほど沖合で水柱を上げた。
MIRV──分裂し、散り、意思を持たぬまま複数の都市を選ぶ兵器。
三国は互いを責め、互いを疑い、
そして互いに“報復のための報復”を撃ち始めた。
しかし、混乱を決定的にしたのは三国ではなかった。
海洋のはるか南西、“観光国家”として知られた小さな諸島国家。
表向きは商業と観光で栄える穏やかな国。
だが、その裏では――
世界中から買い集めた核物質と密造工場によって、
大量の水爆を保有していた。
理由はただ一つ。
「どの大陸にも従属したくない」
その極端な恐怖心が、国を歪めていた。
諸島国家は、ついに引き金を引く。
三国すべてに向けて、
まるで“世界というテーブルをひっくり返す”かのように、
次々と水爆を発射したのだ。
灰色の航跡が夜空を引き裂き、
三国の想定を完全に越えた混乱が世界を覆った。
街は沈黙し、人々は空だけを見て震えた。
空には、落ちるはずのない光が落ちていた。
主人公の国は、かろうじて自国領の核迎撃網を守りきり、それに対処していた。
そして暴走した参謀に軟禁命令を出していた。
しかし例の帝国と沈黙帝国は、
小国の無差別攻撃により、
内陸部まで大混乱に陥っていた。
そして洋書の強化を指示しつつ主人公国の王は静かに判断した。
「この混乱は、もう誰も止められない。
止めうる者がいるとすれば──
我々しかいない。」
その言葉には熱はなかったが、
燃えるより冷たい“覚悟”があった。




