海戦
北東海域。
例の帝国の300隻の黒い艦群が外洋へと押し出しはじめた瞬間、
その進路の先に、主人公国の260隻が巨大な弧を描きながら迫った。
北東海域で踏みとどまっていた21隻を合わせ、
合計 主人公国287隻 が攻勢に移る。
一方、例の帝国は、
上陸作戦部隊を失った悔しさと、
自国の威信維持のための執念で
300隻すべてを戦列へと向けていた。
戦いがはじまり戦闘は、はじめは互角に見えた。
主人公国の艦隊は数こそ劣るが、
四方面から集めた精鋭で構成されている。
各艦隊は異なる戦法を持ち寄り、緻密な隊形を組んで攻撃と防衛を入れ替えた。
例の帝国は圧倒的な数で押しつつ、
外洋での戦闘経験が豊かで、
巨大艦の一撃一撃が主人公国の艦列を崩していく。
波が割れ、煙が空へ昇り.......
数日後──
主人公国:287隻 → 219隻
例の帝国:300隻 → 243隻
明確に例の帝国が優勢だった。
しかし、例の帝国側にも誤算があった。
補給線が長すぎた。
北東海域は灰の帝国本土から遠く、
戦闘が長引けば長引くほど、艦の燃料・弾薬が減り、運動が鈍くなっていった。
一方、主人公国は本土に近いため補給が早い。
そして、王は「この戦いで決着をつける気はない」と悟っていた。
両国が撤退したという報告は、
遠く離れた「沈黙の帝国」にも届いた。
沈黙の帝国──南方大陸を支配し、
長く干渉を避け、中立を貫き、
ただ静かに軍備を拡張してきた巨大勢力。
彼らは、主人公国、例の帝国のどちらよりも”少し”強大でありながら、
その力を決して外に向けてこなかった。
謁見の間で、帝国の重臣が低い声で告げる。
「両国の損耗率、予想を超過。
この機をもって、外洋への進出を。」
沈黙の帝国の皇帝はしばらく黙ったあと、
一言だけこう言った。
「準備せよ。」
すると翌日には、帝国全土で大規模な動きが同時に確認された。




