核の応酬
均衡は、いつも音を立てずに崩れる。
その朝も、空は晴れていた。
しかし、衛星観測網のスクリーンに赤い線が走った瞬間、
世界は静寂を失った。
西の大国が2重帝国を侵略し始めた。
理由は誰にも分からなかった。
ある者は、指導部の誤情報だと言い、
ある者は、迎撃システムの過剰反応だと語った。
だが、真実を確かめる者はいなかった。
複数の発射光が、夜明け前の地平を照らす。
二重帝国はただちに応戦。
報復の名のもと、同数の弾頭が空を渡る。
その軌跡は、大陸上空で光の帯となって交錯した。
そして 空は、ただ光と炎だけの領域となった。
軌道上で相殺される弾頭もあれば、大気圏を貫き地表を穿つものもあった。
主人公の国は中立を保ちつつも、すでに防衛衛星網と地対軌道迎撃システムを整備していた。
だが、予期せぬ事態が起きた。
二重帝国が報復の一環として「第三勢力にも核供給の関与がある」との情報を掴み
事実確認を待たずに数発の弾頭を主人公の国の主要防衛拠点へと向けたのだ。
第一波は軌道上で迎撃された。
だが、次の瞬間、複数方向からの飽和攻撃が開始される。
迎撃システムは過負荷に陥り、制御は処理を優先順位で切り替えるたびに遅延を生じた。
一発、また一発――軌道防衛網を突破した弾頭が防衛拠点へ到達し、閃光とともに大地を裂いた
そして主人公の国では 通信は一時的に遮断され、主都周辺や領都周辺のエネルギー網の四割が機能を 喪失し人口の二割が消失した。
そして二重帝国は首都を失い、西の大国は政治機構が消滅した。
焦土と化した大陸の上で、三国のうち二国が互いを滅ぼしつつあり、第三の国――すなわち彼の国が、半壊してもなお、嵐の中心で静かに静観していた。




