静寂
戦争が終わり、Ⅲ年が過ぎた。
工業区の地下には秘密研究施設があり、
誰もが存在を知りながら、誰も語らなかった。
人々はそれを「防衛技術の研究」と呼んだが、
実際には、次の戦争を“始めないための兵器”を作っていた。
――臨界兵器。
東の帝国は臨界連鎖反応の制御実験に成功し、
南西の二重帝国は地上発射型の実験弾頭を完成させ、
主人公の国は対核迎撃網を構築した。
迎撃システムは、衛星、地上砲台、から成り、
「空そのものを盾とする国家」と呼ばれた。
その計画に要した年月は四年。
だが、その間、一発の砲弾も撃たれなかった。
表向きの条約では、三国は「平和の均衡」を維持している。
だが、地下の通信線は互いを監視し、
衛星は他国の実験場を夜通し観測していた。
主人公は王宮の窓から、遠い山脈を見つめていた。
そこに、かつての戦場があったことを知る者は、
もはや少ない。
迎撃網の完成と臨界兵器の報告書――その最終頁には、こう書かれていた。
> 《この防壁は、敵の攻撃を防ぐためにある。しかし、完全であるほど、警戒を強め、戦争の引き金にもなりうる。》
そして3国は、守るために武装していき、
武装するほど、壊れる理由を増やしていった。
こうして大陸は、三国の均衡下に沈み、
やがて誰もが、「次のこの大陸での戦争は一度しか起きない」と口にするようになった。




