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第2話

「陛下、会議を始めてよろしいでしょうか。」


朝の光が玉座の間に差し込む。

一晩経っても、夢は終わらなかった。

いや、そもそも「終わる」構造が存在しないらしい。ログアウトボタンもない。

なので、そう考えるしかなかった。


「議題は三つございます。北部戦線、飢饉、税率です。」


それを聞いた瞬間、僕の脳は反射的に「タブ」を開こうとした。

だがもちろん、マウスもない。

代わりに、書記官が羊皮紙を広げた。そこにはびっしりと数字が並んでいる。

——まるでゲームのデータを手書きで再現したようだった。


「食料がないと北部は維持できません。

そして資源配分を念のため、南西に移動すべきです。」と将軍。

「ですが東は干ばつです。資源配分を東へ回すべきです」と農相。

「食糧が尽きれば民は離反します」と財務官。


なるほど、数値のバランスゲームだ。

でも、その声にこもる焦燥は、どのパラメーターでも再現できないほど生々しい。


僕は笑って言った。

「人って、簡単に“数”になるんだな。」


沈黙。

書記官の筆が止まる。


やばい、今のは“王”としての発言ではなかったらしい。

空気が冷える。

小さな国だからこそ、一言の重みが現実を変える。


しばらくして、農相が小さく言った。

「……数にされるのは、民ではなく、陛下の決断かと存じます。」


その言葉が、胸の奥に刺さった。

彼の目には怒りも哀れみもなく、ただの“現実”が映っていた。


——ああ、そうか。

この世界では、選択のたびに、数字が減り、夜が訪れる。

そして誰も、元の時点へリスタートできない。


僕は深く息を吐いて言った。

「わかった。配分は南西の農地に……少なくとも北部を切り捨てよう。」


将軍が頷く。

農相は歯を食いしばる。

外から、風とともにかすかな声が聞こえた。

それが誰のものなのか、僕にはわからなかった。


“勝つための決断”が“勝利や維持”であるとは限らない。

ゲームではいつも、そこを見落としていた。

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