短き盟約
世界 “OpenFront” の西方大陸。
主人公の国――地図の片隅に描かれるほど小さなその国は、勢力としては依然として目立たない。
だが、近隣諸国の評議会や商人たちの間で、その名は妙に耳に残るようになっていた。
理由は単純だ。
戦ではなく、取引と約束によって道を切り開いたからだ。
「期限つきの信頼」――それが彼の掲げた旗印だった。
半年間だけの防衛協定。
一年限りの交易優遇。
すべてが“有効期限つき”の約束。
他国の人は首をかしげた。
「なぜ、長く結ばない?」「信用を疑っているのか?」
主人公はいつも同じ答えを返した。
「変わるのが世界だ。だから、約束も呼応するように変わるべきだろう。」
それは哲学にも聞こえたが、実際には冷静な現実認識だった。
小国が長期同盟を結べば、いずれ飲み込まれる。
ならば、相手が変わるたびに契約も新しくすればいい。
こうして彼は、大国との防衛協定を半年、隣国との農産物協約を三季分と定め、まるで市場の取引のように国際関係を回転させた。(rot trade)
表面上は平穏だった。
だが――その“回転”が速すぎたのか、誰もが少しずつ疑念を抱きはじめる。
「次は誰と結ぶ?」
「次は、誰を切る?」
そして、風向きが変わる。
隣国の一つが、主人公の国の動きを「危うい」と見た。
そして――静かに、別の強国へと接近していく。
その知らせが主人公のもとに届くのは、秋の終わり、国境の商人たちが妙に落ち着かない頃だった。
貨幣の流れがにぶり、塩の値が上がり、街の空気が乾きはじめる。
「噂や経済というのは、風より早いな」
彼は書簡を一読し、淡々と呟いた。
「次は、“謀略”の試練が来る、というわけか。」
彼の国はまだ小さい。
しかし、その存在感は、すでに誰かの戦略地図に影を落としはじめていた。




