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第十六話 消えた神々と空からの偵察

消えた神々(ブライン族)


黒曜石の柱が林立するエンドの中心、エンダードラゴンは漆黒の玉座に座し、その真紅の瞳を虚空に向けていた。先ほどのエンダーマンからの報告、そして、彼がもたらした記憶の映像が、エンダードラゴンの心をざわつかせていた。


(…エンチャント金リンゴ…、それも、ただのエンチャント金リンゴではない…。私が、かつて、この世界から消し去ったはずの、特別な力を持つリンゴ…。)


エンダードラゴンの思考は、深く、そして、過去へと遡っていく。彼は、この世界が誕生して以来、数えきれないほどの時を、生きてきた。そして、その長い歴史の中で、彼は、様々な出来事を目撃し、そして、様々な存在と、対峙してきた。


その中でも、エンチャント金リンゴは、特別な存在だった。それは、単なる魔法のアイテムではなく、この世界の根源に関わる、神秘的な力を持つ果実。そして、その力は、時に、世界の秩序を揺るがすほどの、脅威となる可能性を秘めていた。


だからこそ、エンダードラゴンは、かつて、その力を恐れ、そして、エンチャント金リンゴを、この世界から完全に消滅させることを決意したのだ。彼は、自身の強大な魔力を使い、そして、配下のモンスターたちを総動員し、世界中に散らばるエンチャント金リンゴを、一つ残らず、探し出し、そして、破壊した。


それは、困難な作業だった。エンチャント金リンゴは、世界の奥深く、人知れず隠された場所に、存在していたからだ。しかし、エンダードラゴンは、決して諦めなかった。彼は、長い年月をかけ、そして、ついに、全てのエンチャント金リンゴを、この世界から消し去ることに成功したのだ。


(…それなのに、なぜ…? なぜ、今になって、あのリンゴが、再び、姿を現したのだ…?)


エンダードラゴンは、理解できなかった。彼の記憶が確かならば、エンチャント金リンゴは、完全に消滅させたはずだった。それなのに、なぜ、今、霊夢たちの手に、あのリンゴが渡っているのか?


その時、エンダードラゴンの脳裏に、ある一つの可能性が、浮かび上がった。


(…まさか…、奴らなのか…?)


エンダードラゴンは、そう呟き、そして、深く、息を吐き出した。彼の脳裏に浮かんだのは、かつて、この世界に存在した、ある種族の姿だった。


彼らは、人間でありながら、強大な魔力を持ち、そして、エンチャント金リンゴを、生み出す力さえ持っていたという。彼らは、その力を使って、この世界に、繁栄をもたらした。しかし、同時に、彼らは、その力に溺れ、そして、互いに争い、ついには、滅び去ってしまった。


彼らの名は、ブライン族。


エンダードラゴンは、ブライン族の存在を、古文書や、伝承を通して、知っていた。しかし、彼は、ブライン族のことを、単なる伝説、あるいは、過去の遺物だと考えていた。なぜなら、彼が、この世界に現れた時には、既に、ブライン族は、滅び去っていたからだ。


しかし、もし、ブライン族が、完全に滅び去っていなかったとしたら…? もし、彼らが、どこかで、密かに生き残り、そして、再び、エンチャント金リンゴを、生み出したとしたら…?


(…ブライン族…。奴らは、スティーブやアレックスなどが死んで、ヘロブライン化した種族…。…もし、奴らが、今回の出来事に関わっているとすれば…、これは、ただ事ではない…。)


エンダードラゴンは、そう考え、そして、深い憂慮を覚えた。ブライン族は、かつて、エンダードラゴンと、互角に渡り合った、唯一の存在だった。もし、彼らが、再び、力を取り戻し、そして、エンダードラゴンに、敵対するようなことがあれば、それは、この世界にとって、大きな脅威となるだろう。


エンダードラゴンは、玉座から立ち上がり、そして、エンダーマンを、呼び寄せた。


「…エンダーマン、お前は、ブライン族について、何か知っていることはないか…?」


エンダードラゴンは、エンダーマンに、そう問いかけた。彼の声は、静かだったが、しかし、その奥には、強い決意と、そして、僅かながらも、不安の色が、滲んでいた。


エンダーマンは、主の問いに、少し戸惑いながらも、答えた。


「…ブライン族…ですか…? …それは、かつて、この世界に存在したという、伝説の種族…。…彼らは、強大な魔力を持ち、そして、エンチャント金リンゴを、生み出すことができたと言われています…。…しかし、彼らは、その力に溺れ、そして、滅び去ったと…。」


エンダーマンは、自分が知っている、ブライン族に関する情報を、全て、エンダードラゴンに伝えた。しかし、その情報は、断片的で、そして、不確かなものばかりだった。


エンダードラゴンは、エンダーマンの報告を聞き、そして、さらに深く、考え込んだ。


(…やはり、ブライン族か…。…奴らが、今回の出来事の、黒幕である可能性は、高い…。…しかし、奴らの目的は、一体、何なのだ…? …なぜ、今になって、再び、姿を現した…? …そして、なぜ、霊夢たち、人間の勇者に、力を貸すような真似を…?)


エンダードラゴンの思考は、迷宮の中を、彷徨うようだった。そして、彼は、その答えを見つけるために、さらなる情報を、必要としていた。


「…エンダーマン、お前は、引き続き、イリジャーたちを監視し、そして、奴らから、ブライン族に関する情報を、聞き出せ。…そして、もし、奴らが、何か、怪しい動きを見せたら、すぐに、私に報告するのだ。」


エンダードラゴンは、エンダーマンに、そう命じた。そして、彼は、再び、玉座に座り、そして、深く、瞑想に入った。


彼は、これから、どうするべきか? そして、この世界に、再び迫りつつある、脅威に、どう立ち向かうべきか? エンダードラゴンの、長く、そして、孤独な戦いは、まだ、始まったばかりだった。


夜の帳が下り、静寂が村を包み込むはずだった。しかし、今夜は違う。空には不気味な羽ばたき音が響き、村人たちは恐怖に震えながら、家の中に閉じこもっていた。


「なんだ…? あの音は…?」


村長の家で休息を取っていた霊夢は、異様な音に気づき、窓の外を見上げた。月明かりに照らされた空には、黒い影がいくつも飛び交っている。それは、コウモリのような翼を持ち、赤い目を光らせた、不気味な怪物…ファントムだった。


「ファントム…!? なんで、こんなところに…?」


魔理沙もまた、異変を察知し、窓の外を睨みつけた。ファントムは、通常、プレイヤーが数日間眠らないと上空に出現するモンスター。村の近くに現れるのは、異常事態だった。


「とにかく、村人たちを守らないと…!」


妖夢は、二刀を手に取り、部屋を飛び出した。霊夢と魔理沙も、それぞれトライデントを構え、後に続く。


村の広場に出ると、そこは既にパニック状態だった。ファントムたちが、次々と村人たちに襲いかかり、悲鳴と怒号が飛び交っている。


「くっ…! 数が多い…!」


霊夢は、トライデントを振り回し、ファントムを撃ち落としていく。青白い光の軌跡が、夜空に幾重にも描かれ、ファントムたちは、その光に触れるたびに、悲鳴を上げながら、消滅していく。


「ハハッ! 面白いじゃないか!」


魔理沙は、雷を纏うトライデントを、楽しそうに振り回している。彼女の周りには、常に雷が落ち、ファントムたちは、その雷撃に巻き込まれ、次々と黒焦げになっていく。


妖夢は、二刀を巧みに操り、ファントムたちの攻撃を、華麗にかわしながら、確実に、その数を減らしていく。彼女の剣は、まるで風のように速く、そして、その動きは、まるで舞を舞っているかのように、美しい。


ルーク、ガロン、フィン、三匹のオオカミたちも、果敢にファントムに立ち向かっていた。彼らは、鋭い牙と爪で、ファントムたちに噛みつき、そして、引き裂いていく。


しかし、ファントムの数は、あまりにも多かった。霊夢たちが、いくら倒しても、次々と新しいファントムが現れ、終わりが見えない。


「一体、どこから湧いてくるの…!?」


霊夢は、息を切らしながら、呟いた。彼女の体には、無数の傷が刻まれ、体力も、徐々に消耗していく。


その時、魔理沙が、何かに気づいたように、叫んだ。


「霊夢! あのファントム、見てみろ!」


魔理沙が指差す方向には、一匹のファントムが、他のファントムたちとは異なる動きをしていた。そのファントムは、村人たちを襲うことなく、ただ、空を旋回し、そして、まるで何かを探しているかのように、キョロキョロと、辺りを見回していた。


「…あれは、偵察…?」


妖夢は、そのファントムの動きを見て、そう推測した。


「…だとすれば、まずいわね…。あのファントムに、この村の位置を、知られてしまう…!」


霊夢は、そう言うと、トライデントを構え、そのファントムを、撃ち落とそうとした。しかし、その時、ファントムは、まるで霊夢の攻撃を予測していたかのように、素早く方向転換し、そして、村から遠ざかっていく。


「逃げられた…!」


霊夢は、悔しそうに呟いた。彼女は、今の一撃で、仕留めるつもりだったのだが、ファントムは、予想以上に、素早かった。


逃げたファントムは、闇夜に紛れ、そして、どこか遠くへと、飛び去っていった。そして、そのファントムが向かった先には、イリジャーたちの野営地があった。


エヴォーカーは、焚き火の前に座り、そして、静かに、ファントムの帰りを待っていた。そして、彼の前に、先ほど逃げたファントムが、姿を現した。


「…ほう、戻ってきたか…。…それで、何か、収穫はあったか…?」


エヴォーカーは、ファントムに、そう問いかけた。ファントムは、まるでエヴォーカーの言葉を理解しているかのように、小さく頷き、そして、その記憶を、エヴォーカーに伝えた。


ファントムの記憶の中には、霊夢たちがいる村の位置、そして、村人たちの様子、さらに、霊夢たちの戦いぶりなどが、鮮明に記録されていた。


エヴォーカーは、ファントムの記憶を、全て確認すると、満足げに頷いた。


「…なるほど、これが、人間の勇者たちの力か…。…確かに、侮れない相手のようだな…。」


エヴォーカーは、そう言うと、不気味な笑みを浮かべた。


「…しかし、心配は無用だ。…我々イリジャーには、強力な魔法がある。…そして、何よりも、我々には、この私、エヴォーカーがいる…。」


エヴォーカーは、そう言うと、立ち上がり、そして、魔法の杖を、天高く掲げた。彼の体からは、魔力のオーラが、溢れ出し、周囲の空気を、震わせている。


「…さあ、今こそ、我々の力を見せる時だ…! …人間の勇者たちよ、覚悟するがいい…! …イリジャーの恐ろしさを、思い知らせてやる…!」


エヴォーカーは、そう言うと、高らかに笑い声を上げた。その笑い声は、夜の闇に響き渡り、そして、まるで、悪夢の始まりを告げるかのようだった。


そして、その笑い声に呼応するかのように、イリジャーたちの影が、静かに、しかし確実に、霊夢たちのいる村へと、迫りつつあった。

へロブラインはスティーブが変化した者だと個人的に思っています。

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