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第十五話 新しい駒

漆黒の玉座、絶望の報告


エンドディメンションの中心、黒曜石の柱が林立する不気味な空間。そこに鎮座する巨大な黒い影、エンダードラゴンは、その真紅の瞳で、眼下に跪くエンダーマンを見下ろしていた。エンダーマンは、漆黒の身体を震わせながら、主への報告を終え、静かにその言葉を待っていた。


「…ゾルクが、敗れた、だと…?」


エンダードラゴンの声は、低く、重く、空間全体を震わせるようだった。その声には、怒りというよりも、むしろ、信じがたいといった感情が込められていた。


「は、はい…! 奴は…、人間の勇者たちに…、敗北いたしました…!」


エンダーマンは、震える声で、主の言葉を肯定した。彼は、ゾルクの最期を、直接、目撃したわけではない。しかし、彼が感じ取った、ゾルクの生命の灯火が消え去る瞬間、そして、彼の意識と繋がっていた、魔法のネットワークが途絶えた瞬間、その全てが、ゾルクの敗北を、明確に物語っていた。


「…ゾルクは、我が与えた、エンチャント装備を、身につけていたはず…。それほどの力を持っていたにも関わらず、敗れた、というのか…?」


エンダードラゴンは、信じられないといった様子で、言葉を繰り返した。彼の脳裏には、かつて、ゾルクに、エンチャント装備を授けた時の光景が、鮮明に蘇っていた。


あの時、ゾルクは、狂喜乱舞し、そして、エンダードラゴンに、永遠の忠誠を誓ったのだ。彼は、その力で、必ずや、人間たちを滅ぼし、そして、この世界に、永遠の闇をもたらすと、高らかに宣言した。


しかし、そのゾルクが、敗れた。それも、人間たちに。エンダードラゴンにとって、それは、到底、信じられない出来事だった。


「…その、人間の勇者たちとは、一体、何者なのだ…? 奴らは、一体、どんな力を持っている…?」


エンダードラゴンは、エンダーマンに、問いかけた。その声には、僅かながらも、警戒の色が滲んでいた。


エンダーマンは、主の問いに、震える声で答えた。


「奴らは…、三人組の人間と、三匹のオオカミ…。自らを、預言の勇者と名乗っているそうです…。そして、奴らは、信じられないほどの、強大な力を、持っています…。」


エンダーマンは、ゾルクから送られてきた、最後の記憶を、エンダードラゴンに伝えた。それは、霊夢たちが、エンチャント金リンゴを食べ、そして、驚異的な力で、ゾルクとゾンビたちを、打ち倒していく、衝撃的な光景だった。


エンダードラゴンは、エンダーマンから送られてきた記憶を、その目で、しっかりと確認した。そして、彼は、その映像の中に、信じられないものを、見つけた。


「…な…、なんだ…、これは…!?」


エンダードラゴンは、驚愕の声を上げた。彼の真紅の瞳は、大きく見開かれ、そして、その瞳孔は、激しく揺れていた。


エンダードラゴンが見たもの。それは、霊夢たちが、エンチャント金リンゴを食べている姿だった。そして、そのリンゴは、ただのエンチャント金リンゴではなかった。それは、エンダードラゴン自身が、かつて、この世界から、完全に消滅させたはずの、特別なエンチャント金リンゴだったのだ。


「…なぜ…、あのリンゴが…、まだ、存在している…? …あれは、私が、この世界から、完全に消し去ったはず…! …一体、誰が…、何のために…?」


エンダードラゴンは、混乱した様子で、呟いた。彼の脳裏には、様々な疑問が、渦巻いていた。


そして、彼は、その疑問を、エンダーマンに、ぶつけた。


「…エンダーマン、お前は、何か、知っていることはないか…? …なぜ、あのリンゴが、再び、この世界に現れたのだ…?」


エンダーマンは、主の問いに、困惑した表情を浮かべた。彼は、エンチャント金リンゴについては、何も知らなかったのだ。


「…申し訳ございません、エンダードラゴン様…。私は、何も…。」


エンダーマンは、そう答えることしかできなかった。


エンダードラゴンは、エンダーマンの答えに、失望した様子を見せた。しかし、彼は、すぐに、気を取り直し、そして、新たな命令を、エンダーマンに下した。


「…仕方ない。…ならば、今度は、別の者を、差し向けるしかないな…。」


エンダードラゴンは、そう言うと、不気味な笑みを浮かべた。


「…イリジャーたちだ。…奴らは、人間でありながら、強力な魔法を操る。…そして、何よりも、奴らは、我々と同じように、この世界に、混乱と破壊をもたらすことを、望んでいる…。」


エンダードラゴンは、イリジャーたちのことを、思い浮かべながら、そう言った。イリジャーたちは、かつて、エンダードラゴンと、同盟関係を結んでいた。しかし、彼らは、その傲慢さと、そして、独自の野望のために、エンダードラゴンから、離反したのだ。


しかし、今、エンダードラゴンは、再び、彼らの力を利用しようと考えていた。霊夢たち、人間の勇者を倒すために。


「…エンダーマン、お前は、直ちに、イリジャーたちの元へ行き、そして、奴らに、私の言葉を伝えよ。…『人間の勇者たちを、倒せ』と…。」


エンダードラゴンは、そう言うと、エンダーマンに、視線を送った。その視線は、冷酷で、そして、有無を言わせぬ、威圧感に満ちていた。


エンダーマンは、主の命令に、深く頭を下げた。


「…御意。…直ちに、イリジャーたちの元へ…。」


エンダーマンは、そう言うと、漆黒の身体を、空間に溶け込ませるように、消え去った。彼は、エンダードラゴンの命令を、忠実に実行するために、そして、霊夢たち、人間の勇者を倒すために、イリジャーたちの元へと、急いだのだった。


薄闇の森、イリジャーたちの野営地


一方、その頃、イリジャーたちは、薄暗い森の中に、粗末なテントを張り、野営をしていた。彼らは、文明を拒絶し、破壊と略奪を繰り返す、アウトロー集団。その中でも、特に強力な力を持つ、エヴォーカー、ヴィンディケーター、ピリジャーリーダー、そして、ウィッチの四人が、焚き火を囲み、密談を交わしていた。


「…しかし、エリートスケルトンが、人間に倒されるとはな…。全く、信じられん話だ…。」


ピリジャーリーダーは、粗野な声で、そう言った。彼は、エンダードラゴンから、エンダーマンを通して、伝えられた、ゾルクの敗北、そして、霊夢たち、人間の勇者の存在について、まだ、半信半疑だった。


「…フン、所詮は、骨だけの、能無しだったということよ…。奴らは、我々イリジャーの足元にも及ばない…。」


ヴィンディケーターは、そう言うと、手に持った鉄の斧を、力強く握りしめた。彼の瞳には、狂気じみた光が宿っており、そして、その表情は、まるで、血に飢えた獣のように、歪んでいた。


「…しかし、油断は禁物ですわ…。その人間の勇者たちは、エンチャント金リンゴを食べて、力を得たというではありませんか…。…それは、ただの人間ではない、ということ…。」


ウィッチは、不気味な笑みを浮かべながら、そう言った。彼女は、魔法薬の調合に長けており、そして、その知識と技術を使って、様々な実験を繰り返していた。彼女にとって、霊夢たち、人間の勇者は、興味深い研究対象だった。


「…エンチャント金リンゴ、か…。…確かに、それは、気になるな…。」


エヴォーカーは、静かに、そう呟いた。彼は、イリジャーたちの中でも、最も冷静沈着で、そして、最も強力な魔法の使い手だった。彼は、常に、冷静な判断力で、状況を分析し、そして、最も効果的な戦略を、立案する。


「…しかし、心配は無用だ。…我々イリジャーには、強力な魔法がある。…そして、何よりも、我々には、この私、エヴォーカーがいる…。」


エヴォーカーは、そう言うと、自信に満ちた表情で、立ち上がった。彼の体からは、魔力のオーラが、溢れ出し、周囲の空気を、震わせている。


「…私は、この日のために、新たな魔法を開発してきた…。…その名も、『ファントム召喚』…。」


エヴォーカーは、そう言うと、不気味な笑みを浮かべた。


「…この魔法を使えば、私は、強力なファントムを、無限に召喚することができる…。…そして、そのファントムたちは、必ずや、人間の勇者たちを、打ち破ってくれるだろう…。」


エヴォーカーは、そう言うと、魔法の杖を、天高く掲げた。そして、彼は、その杖に、魔力を集中させ、そして、一気に、その魔力を解放した。


「…ファントム召喚…!」


エヴォーカーが、呪文を唱えた瞬間、彼の周囲に、無数の魔法陣が、出現した。そして、その魔法陣から、次々と、ファントムたちが、召喚されていった。


ファントムたちは、半透明の、コウモリのような姿をしており、そして、その瞳は、赤く光り輝いていた。彼らは、エヴォーカーの命令に従い、空を飛び回り、そして、不気味な鳴き声を上げている。


「…さあ、行け、ファントムたちよ! …人間の勇者たちを、見つけ出し、そして、奴らを、打ち倒すのだ…!」


エヴォーカーは、そう言うと、ファントムたちに、命令を下した。ファントムたちは、エヴォーカーの命令に従い、一斉に、空へと飛び立った。彼らは、まるで、黒い雲のように、空を覆い尽くし、そして、四方八方へと、散らばっていった。


エヴォーカーは、ファントムたちが飛び立っていく様子を、満足げに見つめていた。そして、彼は、再び、焚き火の前に座り、そして、静かに、言葉を続けた。


「…これで、準備は整った…。…あとは、奴らが、我々の罠に、かかるのを待つだけだ…。」


エヴォーカーは、そう言うと、不気味な笑みを浮かべた。彼の瞳には、冷酷な光が宿っており、そして、その表情は、まるで、獲物を狙う、肉食獣のように、鋭かった。


こうして、イリジャーたちは、霊夢たち、人間の勇者を倒すために、動き出した。そして、彼らの魔の手は、静かに、しかし確実に、霊夢たちに、迫りつつあった。

最初はミュータントゾンビって名前で行こうと思ったけど名前つけたほうがいいと思って名前つけました。

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