第十三話 腐者への反撃
霊夢、魔理沙、妖夢は、地面に倒れ伏し、体の自由が効かない。まるで悪夢の中にいるかのようだった。ゾルクの圧倒的な力、そしてエンチャントによって強化されたゾンビたちの終わりのない猛攻。彼らの容赦ない攻撃は、三人の体力を容赦なく奪い、希望を打ち砕いていった。
霊夢は、激しい痛みに耐えながら、必死に立ち上がろうとする。しかし、体は鉛のように重く、思うように動かない。彼女の視界は、徐々に狭まり、意識が遠のいていくのを感じていた。
魔理沙もまた、地面に倒れ、荒い息を繰り返している。彼女の体は、無数の傷を負い、血が滲んでいた。自慢の魔力も、ほとんど底をつきかけている。彼女は、悔しそうに歯ぎしりをしながら、ゾルクを睨みつけた。
妖夢は、静かに目を閉じ、瞑想するように、呼吸を整えていた。彼女の体も、限界に近づいている。しかし、彼女の心は、まだ折れていなかった。彼女は、最後の力を振り絞り、何かを掴もうと、必死にもがいていた。
ルーク、ガロン、フィン、三匹のオオカミたちも、満身創痍だった。彼らは、ゾルクの攻撃を、何度も受け、その度に、地面に叩きつけられてきた。彼らの体は、傷つき、血を流し、もう、立ち上がる力さえ、残っていないように見えた。
まさに絶体絶命。誰もが、そう思った、その時だった。
霊夢は、ふと、自分の服のポケットの中に、何かが入っていることに気づいた。彼女は、痛む体を、必死に動かし、震える手で、ポケットの中に手を突っ込んだ。そして、彼女が、その「何か」を、ポケットから取り出すと、その場にいた、全ての人々が、息を呑んだ。
それは、黄金色に輝く、美しいリンゴだった。表面には、神秘的な光の粒子が、渦巻いており、まるで、小さな太陽のように、光り輝いている。そう、それは、この世界でも、ごく限られた場所にしか存在しないと言われる、幻のアイテム、エンチャント金リンゴだった。
霊夢は、このリンゴを、先ほど、森の中で、偶然、見つけていたのだ。その時は、何気なく、ポケットにしまっていたのだが、今、まさに、そのリンゴが、彼女たちの、最後の希望となろうとしていた。
「そうだ…! まだ…私たちには…これがある…!」
霊夢は、かすかな希望を胸に、震える声で、そう呟いた。彼女の瞳には、再び、力が宿り、その表情には、かすかな笑みが浮かんでいた。
彼女は、力強く、エンチャント金リンゴを握りしめると、それを、力いっぱい、かじりついた。
その瞬間、まるで、奇跡が起きたかのように、彼女の体の中に、温かいエネルギーが、流れ込んでくるのを感じた。それは、まるで、太陽の光を浴びているかのような、心地よい感覚だった。
傷ついた体は、みるみるうちに回復し、失われた体力は、急速に蘇っていく。彼女の体は、再び、力に満ち溢れ、まるで、何事もなかったかのように、立ち上がることができた。
「すごい…! これが…エンチャント金リンゴの、本当の力…!」
霊夢は、その驚くべき効果に、目を見張った。彼女は、自分の体が、完全に回復したことを確信すると、残りのエンチャント金リンゴを、魔理沙、妖夢、そして、オオカミたちに、分け与えることにした。
魔理沙は、霊夢から、エンチャント金リンゴを受け取ると、それを、まるで宝物のように、大切に両手で包み込んだ。そして、彼女は、そのリンゴを、一口、大きくかじりついた。
その瞬間、彼女の体にも、霊夢と同じような、奇跡が起きた。
「うおおおおおお! すっげええええ! なんだ、この力は!? 体力が…みるみるうちに、回復していくぞ!! まるで、生まれ変わったみたいだ!!!」
魔理沙は、興奮した様子で、叫び声を上げた。彼女の体からは、金色のオーラが、溢れ出し、周囲の空気を、激しく振動させている。
妖夢は、霊夢から、エンチャント金リンゴを受け取ると、静かに、そして、感謝の気持ちを込めて、一口、食べた。その瞬間、彼女の体にも、温かい光が満ち溢れ、傷ついた体が、癒されていくのを感じた。
「…ありがとうございます、霊夢さん…。まるで…夢を見ているようです…。」
妖夢は、静かに、そう呟いた。彼女の表情には、安堵と、そして、再び、戦うための、決意が、浮かんでいた。
ルーク、ガロン、フィン、三匹のオオカミたちも、霊夢から、エンチャント金リンゴを、分け与えられた。彼らは、そのリンゴを、まるで、ご馳走のように、美味しそうに食べた。
すると、彼らの体にも、奇跡が起きた。傷ついた体は、みるみるうちに回復し、失われた力は、完全に蘇った。彼らは、嬉しそうに尻尾を振り、そして、感謝の気持ちを込めて、霊夢に、吠えた。
霊夢たちは、エンチャント金リンゴを、ひたすらに食べ続けた。そして、ついに、彼女たちの体力は、完全に回復した。それどころか、彼女たちの体の中には、以前よりも、さらに多くのエネルギーが、満ち溢れていた。
それは、まさに、エンチャント金リンゴがもたらした、奇跡だった。そして、その奇跡は、霊夢たちに、再び、戦うための力を、与えてくれたのだった。
ゾルクは、エンチャント金リンゴによって、急速に体力を回復させ、再び立ち上がった霊夢たちの姿を、信じられない思いで見つめていた。彼の目は、驚愕と、そして、僅かながらも恐怖の色を浮かべ、まるで、悪夢でも見ているかのように、その場に立ち尽くしている。
先ほどまで、圧倒的な力で、霊夢たちを追い詰め、勝利を確信していたはずだった。しかし、今、その状況は、完全に逆転してしまった。エンチャント金リンゴという、予想外のアイテムの出現によって、霊夢たちは、再び、戦う力を取り戻したのだ。
ゾルクの脳裏には、エンチャント金リンゴに関する、様々な情報が、走馬灯のように駆け巡っていた。
エンチャント金リンゴ。それは、この世界でも、ごく限られた場所にしか存在しない、幻のアイテム。古代の神々が作り出したとも、あるいは、大自然が生み出した奇跡とも言われる、伝説の果実。それを口にした者は、どんな傷も癒え、失われた体力は完全に回復し、そして、一時的に、超人的な力を得るという…。
ゾルクは、その情報を、知識としては知っていた。しかし、彼は、それを、ただの伝説、おとぎ話だと、信じて疑わなかった。なぜなら、彼自身、長年、この世界を支配してきたエンダードラゴンの配下として、数々の戦いを経験してきたが、エンチャント金リンゴを、実際に目にすることも、手にすることも、一度もなかったからだ。
しかし、今、彼の目の前で、その伝説が、現実のものとなっている。霊夢たちは、確かに、エンチャント金リンゴを食べ、そして、その驚異的な力によって、完全に復活を遂げたのだ。
「ば…馬鹿な…! あ…ありえない…!」
ゾルクは、混乱した様子で、言葉を絞り出した。彼の声は、震えており、その表情には、動揺と、そして、恐怖の色が、はっきりと浮かんでいた。彼は、自分が、これまで信じてきた常識が、覆されたことに、強い衝撃を受けていたのだ。
「な…なぜだ…!? なぜ、貴様らのような、人間どもが、そんな貴重なものを…!? エ…エンチャント金リンゴは、この世界でも、ごく限られた場所にしか存在しない、幻のアイテムのはず…! そ…それを、なぜ…!?」
ゾルクは、まるで、理解できない現実に、混乱しているかのように、何度も、同じ言葉を繰り返した。彼の言葉には、焦りと、そして、苛立ちが、滲み出ていた。
霊夢は、そんなゾルクの様子を、冷ややかに見つめていた。彼女は、先ほどまで、ゾルクの圧倒的な力の前に、絶望的な状況に追い込まれていた。しかし、今、彼女の心は、静かな怒りと、そして、勝利への、強い決意で満たされていた。
彼女は、右手に握るトライデントを、力強く構え直し、そして、ゾルクに向かって、静かに、しかし、はっきりと言い放った。
「…エンチャント金リンゴの力は、確かにすごいわ…。でも、それは、私たちの勝利を、約束するものではない…。私たちは、自分たちの力で、あなたを倒す…!」
霊夢の言葉には、エンチャント金リンゴの力に頼るのではなく、あくまで、自分たちの力で、勝利を掴み取るという、強い意志が込められていた。
そして、彼女は、ゾルクを、真っ直ぐに見据えながら、仲間たちに、呼びかけた。
「みんな、行くわよ! 今こそ、私たちの力を見せる時よ! …反撃開始!」
霊夢の言葉は、まるで、戦いの狼煙のようだった。その言葉に、魔理沙、妖夢、ルーク、ガロン、フィンは、力強く頷いた。彼らの表情には、もはや、恐怖や不安の色はなく、ただ、勝利への、熱い想いだけが、燃え上がっていた。
彼らは、エンチャント金リンゴによって、体力を完全に回復させただけでなく、心までも、再び、希望と、闘志で満たされていたのだ。そして、彼らは、今、まさに、ゾルクに対して、反撃を開始しようとしていた。
霊夢の力強い号令を受け、魔理沙は、まるで雷神と化したかのように、戦場の中心に躍り出た。彼女は、右手に握る雷を纏うトライデントを、力強く、そして高々と、天に向かって掲げた。その瞬間、トライデントの先端から、眩いばかりの雷光が放たれ、周囲の闇を切り裂き、夜空を明るく照らし出した。
「ハハッ! 見せてやるぜ、ゾルク! これが、私の奥義だ!」
魔理沙は、哄笑しながら、ゾルクを挑発する。彼女の瞳には、恐怖や不安の色は一切なく、ただ、純粋な闘志と、勝利への確信だけが、燃え上がっていた。
「鳴鳴雷刺!」
魔理沙が、技名を叫んだ瞬間、それまで晴れ渡っていた夜空が、突如として、暗雲に覆われ始めた。まるで、彼女の魔力に呼応するかのように、空は、不気味な音を立てながら、急速に変化していく。そして、次の瞬間、激しい雷鳴が、周囲に轟き渡った。
ゴロゴロゴロ… ドゴォォォォォォォン!!!!
その音は、まるで、天が怒り狂っているかのようで、大気を震わせ、地面を揺るがすほどの、凄まじいものだった。
そして、魔理沙は、雷鳴が轟く中、トライデントを、力強く、そして正確に、ゾルクに向かって投げ放った。トライデントは、まるで雷光そのもののように、空を駆け上がり、一直線に、ゾルクの頭上へと、飛んでいく。
その速度は、人間の目では捉えきれないほど速く、まさに、一瞬の出来事だった。そして、次の瞬間、トライデントが、ゾルクの頭上に到達した、まさにその場所、そこに、巨大な雷が、落ちた。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!
その衝撃は、凄まじく、周囲の地面を激しく揺らし、立っていることさえ困難なほどだった。巨大な木々は、雷の直撃を受け、まるでマッチ棒のように、簡単にへし折られ、そして、地面は、大きくえぐられ、土煙が、空高く舞い上がった。
しかし、魔理沙は、その衝撃に、微動だにせず、ただ、静かに、ゾルクの様子を見つめていた。そして、彼女の投げたトライデントは、まるでブーメランのように、美しい弧を描きながら、彼女の手元に、戻ってきた。
魔理沙は、戻ってきたトライデントを、しっかりと受け止めると、再び、それを構え、ニヤリと笑った。
「まだまだ、こんなもんじゃないぜ! これからが、本番だ!」
魔理沙は、そう言うと、再び、トライデントを振りかぶり、次の技を繰り出そうとする。彼女の体からは、雷のエネルギーが、まるでオーラのように、溢れ出し、周囲の空気を、バチバチと音を立てて、震わせていた。
「喰らえ、ゾルク! これが、私の全力だ!」
魔理沙は、叫びながら、トライデントを、力強く、地面に向かって振り下ろした。
「ゼウスの怒り!」
その瞬間、トライデントの先端から、無数の雷が、まるで解き放たれた獣のように、周囲の空間に、発生した。そして、その雷は、まるで生き物のように、意思を持っているかのように、うねり、そして、ゾルクに向かって、襲いかかった。
バチバチバチバチバチバチバチバチ!!!!!!
その雷の数は、数えきれないほど多く、まるで、雷の嵐が、ゾルクを飲み込もうとしているかのようだった。そして、雷は、ゾルクの体を、容赦なく、直撃し、その度に、巨大な爆発を引き起こした。
ドゴォォォン! ドゴォォォン! ドゴォォォォォォォン!!!!
その爆発は、一つ一つが、先ほどの雷撃に匹敵するほどの威力を持っており、周囲の地面を、激しくえぐり、焦土に変えていく。そして、その爆発音は、まるで、神々の怒りを表すかのように、周囲に響き渡り、全てを破壊し尽くすかのようだった。
魔理沙の「ゼウスの怒り」は、まさに、その名の通り、神の雷を、地上に再現したかのような、圧倒的な攻撃だった。そして、その攻撃は、ゾルクを、完全に、飲み込もうとしていた。
魔理沙の放った雷撃が、夜空を切り裂き、大地を揺るがす中、霊夢もまた、静かに、しかし力強く、戦いの舞台へと歩みを進めた。彼女は、右手に握る青白く輝くトライデントを、まるで自身の体の一部であるかのように、自然に、そして優雅に構えている。その姿は、まるで水辺に佇む白鷺のように、静謐でありながらも、内に秘めたる力強さを感じさせた。
霊夢は、深く息を吸い込み、そして、静かに息を吐き出した。その瞬間、彼女の体から、水色のオーラが溢れ出し、周囲の空気を、ひんやりと冷やしていく。それは、まるで、彼女が、水の精霊と一体化したかのような、神秘的な光景だった。
そして、霊夢は、大きく目を見開き、青白く輝くトライデントを、力強く、そして大きく、振りかざした。
「受けてみなさい、ゾルク! これが、水の力よ!」
霊夢は、凛とした声で、そう叫んだ。その声は、まるで鈴の音のように、澄み切っており、しかし、不思議なほどに、周囲に響き渡った。
「波濤乱舞!」
霊夢が技名を叫んだ瞬間、トライデントの先端から、信じられないほどの量の水流が、まるでダムが決壊したかのように、一気に放出された。その水流は、ただの水ではなく、霊夢の霊力と、トライデントの力が融合した、特別な水流だった。
水流は、まるで意思を持っているかのように、うねり、そして渦を巻き、激しい波となり、ゾルクと、彼に従うゾンビたちを、目指して、怒涛のように押し寄せていく。
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!
その水流の音は、まるで、海が荒れ狂っているかのようで、周囲の空間を、水しぶきで満たし、全てを飲み込もうとするほどの、圧倒的な迫力を持っていた。
水流は、まず、ゾルクの周りにいたゾンビたちを、まるでゴミのように、簡単に押し流していった。ゾンビたちは、なすすべもなく、水流に飲み込まれ、そして、どこか遠くへと、流されていく。
そして、その水流は、ついに、ゾルクの巨体にも、襲いかかった。ゾルクは、その水流の勢いに、驚愕の表情を浮かべ、必死に、その場に踏みとどまろうとする。しかし、その水流は、あまりにも強力で、そして、容赦なかった。
「ぐ…おおおおおおおおお!!!!」
ゾルクは、苦悶の叫び声を上げながら、水流に押し流され、その巨体は、まるで木の葉のように、くるくると回転しながら、後方へと吹き飛ばされていく。彼は、必死に、何かにつかまろうとするが、その手は、空を切るばかりだった。
霊夢は、水流を放出しながらも、決して、攻撃の手を緩めなかった。彼女は、さらに、次の技を繰り出そうと、トライデントを構え直した。
「まだよ、ゾルク! これで終わりじゃないわ!」
霊夢は、そう言うと、トライデントの先端に、自身の魔力を集中させ始めた。トライデントは、まるで、彼女の霊力に呼応するかのように、さらに激しく、青白い光を放ち始める。
そして、霊夢は、大きく息を吸い込み、そして、一気に、その霊力を解放した。
「喰らいなさい! 激流突刺!」
霊夢が技名を叫んだ瞬間、彼女の体は、まるで水と一体化したかのように、滑らかに、そして、しなやかに、動き出した。彼女は、トライデントを構え、そして、激流のエンチャントの力を利用し、まるで水を得た魚のように、水流の中を、高速で回転しながら、ゾルクに向かって、突進していった。
その姿は、まるで、巨大な水竜が、獲物に向かって、突進していくかのようで、その勢いは、全てを破壊し尽くすほどの、圧倒的なものだった。そして、その突進は、水流に押し流され、体勢を崩していたゾルクに、容赦なく、襲いかかった。
魔理沙の雷撃が大地を焦がし、霊夢の水流が全てを押し流していく。その圧倒的な力の奔流の中で、妖夢もまた、静かに、しかし確実に、戦いの舞台へと歩みを進めていた。
彼女は、常に冷静沈着であり、状況を的確に判断し、そして、最も効果的な行動を選択する。今、この瞬間も、彼女は、霊夢と魔理沙の攻撃によって、ゾルクとゾンビたちが混乱している状況を、冷静に見極めていた。そして、彼女は、この機を逃さず、自らの奥義を繰り出すことを決意した。
妖夢は、深く息を吸い込み、そして、静かに息を吐き出した。その瞬間、彼女の体から、静謐な気配が立ち上り、周囲の空気を、澄み切ったものへと変えていく。それは、まるで、嵐の前の静けさのようでもあり、あるいは、夜明け前の静寂のようでもあった。
そして、彼女は、二刀を構え、低く、しかし力強い声で、スペルカード名を、厳かに宣言した。
「…奥義… 彼岸剣!」
妖夢がスペルカード名を叫んだ瞬間、彼女の体から、無数の桜色の弾幕が、まるで花吹雪のように、美しく、そして幻想的に、周囲に放出された。それは、単なる弾幕ではなく、妖夢の霊力と、彼女が長年培ってきた剣技が、融合した、特別な弾幕だった。
弾幕は、一つ一つが、まるで意思を持っているかのように、空中で複雑な軌道を描きながら、舞い踊る。そして、その弾幕は、まるで、春の訪れを告げる桜の花びらのように、優雅で、そして美しかった。
しかし、その美しさとは裏腹に、その弾幕は、触れたもの全てを、無慈悲に切り裂き、そして消滅させてしまう、恐ろしい力を持っていた。
そして、妖夢は、さらに、技名を、静かに、しかし力強く、叫んだ。
「地獄極楽滅多斬り(じごくごくらくめったぎり)!」
妖夢が技名を叫んだ瞬間、桜色の弾幕は、さらに加速し、そして、その数を増していった。それは、もはや、花吹雪というよりも、桜色の嵐と呼ぶべきものだった。
そして、その桜色の嵐は、ゾルクと、彼に従うゾンビたちを、容赦なく、襲っていく。弾幕は、ゾンビたちの腐敗した体を、いとも簡単に切り裂き、そして、ゾルクのエンチャントされた鎧にも、確実にダメージを与えていった。
それは、まさに、地獄と極楽を、同時に味わわせるような、恐ろしくも美しい、そして、圧倒的な攻撃だった。ゾンビたちは、弾幕に触れるたびに、苦悶の叫び声を上げ、そして、光の粒子となって、消滅していく。
ゾルクは、妖夢の攻撃に、強い衝撃を受けた。彼は、霊夢と魔理沙の攻撃だけでも、手一杯だった。しかし、そこに、妖夢の、この予測不能で、そして、広範囲に及ぶ攻撃が加わったことで、彼は、完全に、窮地に追い込まれてしまったのだ。
彼は、エンチャントされた鎧と、自身の強靭な肉体で、何とか、攻撃に耐えようとする。しかし、霊夢、魔理沙、妖夢、三人の連携攻撃は、あまりにも強力で、そして、容赦なかった。
雷撃は、彼の体を焦がし、水流は、彼の動きを封じ、そして、桜色の弾幕は、彼の体を、無慈悲に切り裂いていく。彼は、徐々に、体力を消耗し、そして、その動きは、鈍くなっていった。
「ぐ…、馬鹿な…、こ…こんなことが…、あってたまるか…!」
ゾルクは、信じられないといった表情で、霊夢たちを見つめる。彼の体は、無数の傷を負い、黒い血が、とめどなく流れ出ていた。彼は、もはや、立っていることさえ、困難な状況だった。
霊夢は、そんなゾルクの様子を、冷ややかに見つめていた。彼女は、トライデントを構え、ゾルクに、最後の一撃を、加えようとする。
「…これで…全て、終わりよ…!」
霊夢は、そう言うと、トライデントを、力強く、そして、正確に、ゾルクの心臓に向かって、振り下ろそうとした。
しかし、その時…
ゾルクは、最後の力を振り絞り、まるで、祈るように、叫んだ。
「…エンダードラゴン様…、どうか…、私に…、力を…! そして…、この世界に…、永遠の闇を…! …エンダードラゴン様…、万歳…!」
その言葉を最後に、ゾルクは、力尽き、地面に、崩れ落ちるように、倒れた。彼の体は、まるで砂のように、サラサラと崩れ、そして、光の粒子となって、空中に、消え去っていった。
そして、ゾルクに従っていたゾンビたちも、まるで操り人形の糸が切れたかのように、その場に、バラバラと、崩れ落ちていった。彼らは、もはや、動くことはなく、ただの、腐敗した肉の塊と化してしまった。
霊夢たちは、勝利したのだ。