第十二話 超人(アルティメット・クリーチャー)ゾルク
地獄からの腐者
洞窟の奥深く、そこは、まるで地獄の入り口を思わせるような、異様な空間だった。水滴が、絶え間なく天井の鍾乳石から滴り落ち、淀んだ水たまりに波紋を作る。湿った土と、腐敗臭、そして、何かが焦げたような、鼻を突く臭いが混ざり合い、吐き気を催すほどの悪臭が、空間全体に立ち込めている。
鍾乳洞の隙間から差し込む、頼りない光は、足元をかろうじて照らすだけで、周囲は、まるで闇そのものが蠢いているかのような、深い暗闇に包まれていた。
その暗闇の中、異質な存在が、まるで悪夢の中から這い出してきたかのように、沈黙を破った。
ダイヤモンド製の鎧。それは、本来ならば、英雄や騎士が身に着けるべき、栄光と希望の象徴。しかし、今、その鎧は、微かな光を反射して鈍く、そして、冷たく輝き、まるで、その輝きが、この世のものではないことを、示しているかのようだった。
その鎧を身に纏うのは、筋肉質な異形、…ミュータントゾンビ。通常のゾンビとは、明らかに異なる、圧倒的な存在感。それは、まるで、死と破壊の化身のようだった。
ヘルメットの奥から覗く、赤い瞳。それは、まるで地獄の業火のように燃え盛り、暗闇の中でも、獲物を探す獣のように、鋭い光を放っている。その手には、炎のエフェクトを纏ったダイヤモンドの剣が、握られていた。その剣は、まるで、これから起こるであろう、血腥い惨劇を、予感させるかのように、不気味に揺らめいている。
彼の周囲には、通常のゾンビたちが、無秩序に、…しかし、まるで操り人形のように従順に、集まっていた。腐敗臭を撒き散らし、時折、うめき声、…いや、それは、まるで死者の呻きのようであり、それを漏らす彼らと、エンチャントされたダイヤモンドの鎧を纏うミュータントゾンビとの間には、圧倒的な力の差、…そして、明確な、支配と服従の関係が、見て取れた。
ミュータントゾンビは、静寂を切り裂くように、低い、…まるで地獄の底から響いてくるかのような声を発した。その声は、ゾンビ特有の、喉を絞められたような唸り声を含みつつも、驚くほど明瞭な言葉を紡いでいた。
「……静粛に。」
その一言は、まるで魔法の呪文のように、周囲のゾンビたちのざわめき、…うめき声を、一瞬にして、完全に静止させた。彼らは、本能的に、…いや、もはや本能すらも超越した、絶対的な服従によって、この異質な存在が、自分たちを統率する者、…支配者であることを、理解しているようだった。
ミュータントゾンビは、まるで王が臣下を見下ろすかのように、ゆっくりと周囲を見渡し、改めて口を開いた。その言葉は、命令というよりも、むしろ、これから行うべき「仕事」を、淡々と説明するような、冷静な響きを持っていた。
「諸君ら、…状況は理解しているな…?」
ゾンビたちは、沈黙を守ったまま、ただ、ミュータントゾンビを、見つめ返している。彼らの腐りかけた瞳には、知性や感情の光は、一切宿っていない。彼らが、その言葉を理解しているのか、いないのか、…判然としなかった。
ミュータントゾンビは、まるで人間が、虫の反応を気にするように、小さく、…しかし、侮蔑を含んだ、ため息をついた。
「……まあ、良いだろう。…どうせ、理解などできなくとも、…問題はない。…改めて説明する。…聞け。」
彼は、ダイヤモンドの剣を、まるで王笏のように、ゆっくりと持ち上げ、洞窟の奥、…暗闇の先、…人間どもの住む世界を、指し示した。
「我々の主、…偉大なるエンダードラゴン様からの、…新たな御命令だ。…例の人間たち、…自称『勇者』とやらを、…速やかに捕捉、…そして、…排除せよ、…と。」
その言葉に、ゾンビたちの間から、微かな、…しかし、確かな、うめき声が漏れ始めた。それは、理解なのか、…あるいは、血への渇望なのか、…それとも、単なる本能的な反応なのか…。
ミュータントゾンビは、ゾンビたちの反応を、まるで気にも留めないかのように、言葉を続けた。
「スケルトン部隊は、…既に、彼らに敗北した。……哀れな奴らだ。…力及ばず、…無駄死にした。…だが、…我々は違う。…我々には、…エンダードラゴン様から、…直々に賜った、…この、絶対的な力がある。」
彼は、まるで、自分の力を誇示するかのように、自身のダイヤモンドの鎧を、軽く叩き、そして、ダイヤモンドの剣を、まるで供物のように掲げた。鎧からは、エンチャントの、…禍々しい紫色の光が、剣からは、燃え盛る炎のエフェクトが、暗闇の中で、…まるで、悪魔の紋章のように、存在感を主張する。
「このエンチャントされた装備は、…あのエヴォーカーが、…エンダードラゴン様のために、…特別に作り上げた、…最高傑作だ。…並の人間など、…我々の敵ではない。…いや、…例え、…自称勇者であろうと、…この力の前には、…無力であろう。…赤子も同然だ。」
ミュータントゾンビの声には、絶対的な自信と、…そして、人間に対する、圧倒的なまでの傲慢さ、…そして、…微かな愉悦が、滲み出ていた。しかし、同時に、任務の重要性を理解しているような、…冷酷なまでの、冷静さも感じられた。
「作戦はこうだ。…諸君らは二手に分かれ、…東西から、人間どもの居場所、……おそらくは、…あの忌々しい村だろう…、…そこを包囲する。…発見次第、…直ちに、私に報告せよ。…そして、…もし、…奴らが抵抗するようなことがあれば……」
ミュータントゾンビは、そこで言葉を切り、ダイヤモンドの剣を、まるで処刑の準備をするかのように、ゆっくりと下ろした。その刃先は、地面に突き立てられる寸前で止まり、まるで生き物のように、静かに炎を揺らめかせている。
「……容赦は無用だ。…徹底的に、…そして、…残酷に、…排除せよ。…一人残らず、…殺せ。…この世に、…生かしておく価値など、…ない。」
その言葉は、冷酷で、…そして、絶対的であり、…有無を言わせぬ威圧感に満ちていた。周囲のゾンビたちは、その言葉の意味を理解したのか、…あるいは、本能的に恐怖を感じたのか、…一層身を固くし、…まるで、石像のように、静まり返った。
ミュータントゾンビは、最後に、念を押すように、…まるで、獲物に刻印を押すかのように、言った。
「……繰り返す。…これは、…エンダードラゴン様の、…御命令だ。…失敗は、…絶対に許されない。…必ず、…任務を遂行せよ。…さもなくば、…諸君ら自身の存在が、…消滅すると思え。」
再び、洞窟は、まるで墓場のような、静寂に包まれた。しかし、その静寂は、先ほどまでのものとは異なり、重く、…冷たく、…そして、…言いようのない緊張感と、…死の予感に満ちたものだった。
ミュータントゾンビとゾンビたちの間には、言葉を交わさずとも通じ合う、…いや、…言葉など必要としない、…絶対的な支配と服従、…そして、…死の運命を共有する者同士の、…一種の連帯感のようなものが、生まれていた。
やがて、ミュータントゾンビは、まるで死神が動き出すかのように、再び、ゆっくりと動き出した。
「……では、…出発だ。…人間どもに、…エンダードラゴン様の、…怒りと、…恐怖を、…教えてやるのだ。」
彼の号令を合図に、ゾンビたちは、まるで地獄の軍勢のように、ゆっくりと、…しかし、確実に動き始めた。洞窟の奥へと続く道は、東西に分かれており、彼らは、それぞれの方向へと、…まるで、死の行進のように、黙々と歩を進めていく。
洞窟には、ゾンビたちの、…腐りかけた足が地面を引きずる音と、…エンチャントされた鎧が擦れる音だけが、…まるで、死者の魂の叫びのように、…不気味に響き渡っていた。
エンチャント装備を身に纏った、圧倒的な力を持つミュータントゾンビを先頭に、新たな、…そして、…絶望的な脅威が、人間たちの住む村へと、…静かに、…しかし、…着実に、…そして、…冷酷に、迫りつつあった。
薄闇が世界を支配し、静寂が辺りを包み込む中、霊夢と魔理沙の二人は、先ほど岩盤から引き抜いたばかりの伝説のトライデントを手に、村の周辺を警戒しながらパトロールしていた。夜空には満月が煌々と輝き、その冷たい光が木々の間から差し込んでは、地面に複雑な模様を描き出している。長く伸びた影は、まるで生き物のように蠢き、時折、微かな風が吹くたびに、木々の葉がさざめき、不気味な音を立てていた。
霊夢は、右手に握る青白く輝くトライデントを、まるで自分の体の一部であるかのように、軽く、しかしリズミカルに振ってみる。トライデントの先端からは、神秘的な光が放たれ、周囲の闇を優しく照らし出していた。その手応えは、今まで彼女が扱ってきたどの武器とも全く異なる、不思議な感覚だった。まるで、トライデント自身が意志を持ち、霊夢の動きに呼応しているかのような、一体感と力強さを感じさせるのだ。
「本当に、このトライデント…信じられないくらいの力を感じるね…」霊夢は、まるで独り言のように呟きながらも、その声には隠しきれない興奮と、未知の力への期待が込められていた。彼女は、トライデントを握る手に、微かな震えを感じながらも、その圧倒的な存在感に、次第に心を奪われていくのだった。
一方、魔理沙は、左肩に雷を纏う金色のトライデントを、まるで長年連れ添った相棒のように、無造作に担いでいる。時折、トライデントの先端から放たれる電光が、彼女の周囲を明るく照らし、その表情を浮かび上がらせていた。魔理沙は、不敵な笑みを浮かべながら、まるで全てを見透かすかのように、周囲の闇に目を凝らしている。
「ああ、こいつはとんでもない代物だぜ、霊夢!」魔理沙は、興奮を隠せない声で言った。「今までのどんな武器よりも、遥かに強力だ。こんなすげえ武器を手にしたからにゃあ、もう怖いもん無しだな!どんな奴が相手だろうと、このトライデントで、まとめてぶっ飛ばしてやるぜ!」
彼女は、そう言いながら、トライデントを軽く振り回してみる。そのたびに、雷光が空気を切り裂き、バチバチと音を立てて周囲にスパークを散らした。それは、まるで彼女の内に秘められた魔力が、トライデントを通して解放されているかのようだった。
妖夢は、二人から少し離れた場所で、静かに、しかし警戒を怠ることなく、周囲の気配に集中している。彼女は、トライデントを手にすることはなかったが、二人の持つ武器から放たれる圧倒的なエネルギーを、肌で感じ取っていた。妖夢は、いつものように二刀を構え、静かに、そして真剣な眼差しで、霊夢と魔理沙に語りかけた。
「霊夢さん、魔理沙さん…確かに、トライデントは、とてつもない力を秘めているようです。しかし、油断は決して禁物です。これほど強大な力を持つ武器…扱いを間違えれば、私たち自身をも傷つけてしまう危険性も、十分に考えられます。…それに、」
妖夢は、そこで言葉を区切り、一度深く息を吸い込んだ。そして、再び静かに、しかし決意を込めた声で続けた。
「…これほどの力を持つ武器を、私たちが手にしたということは、それだけ大きな脅威が、すぐそこまで迫っているのかもしれません。村長様の言葉、そして預言の書のことも、気になります。私たちは、これから、何が起こるのかわからない、未知の戦いに、立ち向かっていくことになるのかもしれないのです。」
妖夢の言葉に、霊夢と魔理沙は、一瞬、動きを止めた。二人の表情から、先ほどの興奮と高揚感が消え、代わりに、静かな緊張感が漂い始める。しかし、すぐに、霊夢は、力強く微笑みながら、妖夢に答えた。
「大丈夫よ、妖夢。心配しないで。私たちは、今までだって、色々な困難を乗り越えてきたじゃない。今回だって、きっと、大丈夫。それに、私たちには、このトライデントがある。この力を正しく使えば、きっと、どんな敵にも打ち勝てるはずよ。」
魔理沙も、ニヤリと笑いながら、トライデントを軽く叩いた。「ああ、そうだぜ、妖夢! 心配すんなって! 私と霊夢、そしてこのトライデントがあれば、怖いものなんて何もねえ! 何が来ようと、全部まとめて、ぶっ飛ばしてやるさ!」
二人の言葉に、妖夢は、少しだけ安心したように、小さく頷いた。そして、再び、周囲の警戒を強め、静かに、しかし油断なく、夜の闇の中を、歩き始めたのだった。
月明かりの下、三人と、彼らに忠実に付き従う三匹のオオカミたちは、静かに、しかし確実に、運命の夜へと、歩みを進めていく。彼らの行く手には、一体、何が待ち受けているのだろうか…? その答えは、まだ、誰にも分からなかった。
ルークは、純白の毛並みを夜風に揺らしながら、鋭敏な鼻をひくつかせ、周囲に漂う微かな匂いの変化を丹念に嗅ぎ取っていた。彼の鼻は、単なる生物の匂いだけでなく、魔力や、さらには死の気配までも、正確に感知することができるのだ。彼は、神経を集中させ、まるで空気中に漂う見えない情報を読み解くかのように、静かに、しかし深く、匂いを嗅いでいた。そして、突然、彼は低く、しかしはっきりとした声で言った。
「…間違いない。近くに、何かの気配がする。それも、ただの気配じゃない…強い魔力を帯びた、複数の存在…数は多い…おそらく、モンスターの群れだ。」
ルークの言葉に、その場に緊張が走った。彼の言葉は、単なる推測ではなく、長年の経験と、鋭敏な感覚に基づいた、確かな警告だった。
ガロンは、漆黒の毛並みを逆立て、筋肉質な体を低く構えながら、喉の奥から獣の唸り声を響かせた。その声は、低く、重く、周囲の空気を震わせるほどの威圧感に満ちていた。彼は、まるで獲物を前にした猛獣のように、鋭い牙をむき出しにし、いつでも戦闘態勢に入れるように、身構えている。
「…奴らの狙いは、おそらく村だろう…」ガロンは、唸り声に言葉を混ぜながら、推測を口にした。「こんな夜更けに、これほどの数のモンスターが、こんな場所をうろついている理由なんて、他に考えられない。…だとすれば、奴らをここで迎え撃つしかない。村に近づけさせるわけにはいかない。」
彼の言葉には、強い決意と、村を守ろうとする、揺るぎない意志が込められていた。
フィンは、まだ若く、経験も浅いため、不安そうな表情を浮かべながらも、精一杯、勇敢に振る舞おうとしていた。彼は、小さな体を震わせながらも、精一杯、声を張り上げて言った。
「う、うん…! ぼ、僕たちだって、やればできる! みんなで力を合わせれば、きっと大丈夫! 絶対に、村を守り抜いてみせる!」
フィンの言葉は、まだ頼りない響きを含んでいたが、その純粋な気持ちは、霊夢たちの心を、確かに勇気づけた。
その時、彼らの緊張を切り裂くように、森の奥深くから、不気味な唸り声が響き渡ってきた。それは、今まで霊夢たちが耳にしてきた、どのゾンビの唸り声とも、明らかに異なる、異質な響きを持っていた。
通常のゾンビの唸り声は、単調で、知性を感じさせない、空虚な響きを持っている。しかし、今、聞こえてくる唸り声は、より低く、より深く、そして、何よりも、その声の奥に、明確な意志と、知性を感じさせる、不気味な響きを帯びていた。それは、まるで、闇の底から響いてくる悪魔の囁きのようでもあり、聞く者の心に、本能的な恐怖を呼び起こさせる、恐ろしい音だった。
「…来るぞ…!」
霊夢は、直感的に、敵の接近を察知した。彼女は、右手に握るトライデントを、強く握り締め、構えを正す。トライデントの先端からは、青白い光が、さらに強く放たれ、周囲の闇を、一層深く照らし出していた。
そして、ついに、闇の中から、巨大な影が現れた。それは、今まで霊夢たちが見てきた、どのゾンビよりも、遥かに巨大で、そして異様な姿をしていた。
通常のゾンビの、少なくとも二倍はあろうかという、巨大な体躯。その体は、単に大きいだけでなく、異常なまでに筋肉が発達しており、まるで岩のように、ゴツゴツと隆起している。全身は、まばゆいばかりの光を放つ、ダイヤモンド製のエンチャント装備で覆われており、その隙間からは、腐敗した肉が、不気味に覗いていた。
背中には、巨大なダイヤモンドの剣を背負っている。その剣は、ただのダイヤモンドの剣ではなく、エンチャントによって、燃え盛る炎のエフェクトを纏っており、まるで地獄の業火を具現化したかのように、周囲の空気を揺らめかせていた。
そして、何よりも異様なのは、その巨大な影の後ろに、無数のゾンビたちが、蠢いていることだった。彼らは、まるで巨大な影に操られる人形のように、無秩序に、しかし確実に、霊夢たちに向かって、迫ってきていた。
それは、まさに、悪夢のような光景だった。圧倒的な力を持つ異形の怪物と、それに従う無数のゾンビの群れ。彼らの存在は、この静かな夜に、新たなる戦いの始まりを告げていた…
ミュータントゾンビは、巨大な体を揺らしながら、ゆっくりと霊夢たちの前に歩み出た。その一歩一歩は、大地の鼓動のように重く、周囲の空気を震わせる。ダイヤモンド製のエンチャント装備が、月明かりを反射して鈍く輝き、背中に背負った炎のエフェクトを纏うダイヤモンドの剣は、まるで生き物のように、蠢いているように見えた。彼は、その異様な姿を誇示するかのように、堂々と霊夢たちの前に立ち塞がり、そして、低く、しかし、周囲に響き渡るような声で、自身の名を名乗った。
「……我が名はゾルク。偉大なるエンダードラゴン様に忠誠を誓い、この地を統べる、ミュータントゾンビのリーダーだ。」
ゾルクの声は、ゾンビ特有の唸り声を含みながらも、驚くほど明瞭で、そして、知性に満ちていた。彼の言葉には、単なる自己紹介以上の意味、つまり、これから始まる戦いへの、強い決意と、霊夢たちへの、明確な敵意が込められていた。
霊夢は、ゾルクの言葉に、一瞬の動揺も見せず、トライデントを構えたまま、真っ向から彼を睨みつけた。青白い光を放つトライデントの先端が、ゾルクの巨大な体を照らし出し、その異様な姿を、さらに強調している。霊夢は、静かに、しかし力強く言った。
「エンダードラゴン…? やっぱり、そうだったのね。お前たちは、あの闇の竜の配下…この世界を、恐怖で支配しようとする、悪の尖兵なのね。」
霊夢の言葉には、怒りや憎しみだけでなく、この世界を守ろうとする、強い決意が込められていた。
ゾルクは、霊夢の言葉を聞き、まるで嘲笑するかのように、口元を歪めた。その表情は、人間を遥かに超えた、怪物のそれだった。
「いかにも、我らはエンダードラゴン様の忠実なる僕。貴様らのような、秩序を乱す、愚かな人間どもは、この世界には不要。エンダードラゴン様の偉大なる支配の、妨げとなるものは、全て排除しなければならない。…故に、ここで、貴様らを始末させてもらう。」
ゾルクの言葉は、まるで宣告のようだった。彼の言葉には、一切の容赦も、慈悲も感じられなかった。
魔理沙は、ゾルクの傲慢な態度に、怒りを露わにし、雷を纏うトライデントを、大きく振り回した。トライデントの先端から放たれる電光が、夜空を切り裂き、周囲を眩い光で照らし出す。彼女は、荒々しい口調で言い放った。
「ふざけるな、この化け物が! 誰が、あんたたちエンダードラゴンなんかに、支配されるっていうんだ! 私たちは、私たち自身の意思で、この世界を自由に生きているんだ! 誰にも邪魔させないし、ましてや、あんたたちのような、悪党に屈するつもりなんて、毛頭ないぜ!」
魔理沙の言葉は、まさに、自由への叫びだった。彼女の言葉には、どんな困難にも屈しない、強い意志と、仲間たちを守ろうとする、熱い想いが込められていた。
妖夢は、霊夢と魔理沙の間に立ち、静かに、しかし、決然とした態度で、二刀を構えた。彼女の瞳には、恐怖の色はなく、ただ、静かなる闘志が燃え上がっている。妖夢は、落ち着いた声で、ゾルクに告げた。
「私たちは、あなたたちの相手になります。…たとえ、エンダードラゴン様の配下であろうと、この村に、そして村人たちに、指一本触れさせるわけにはいきません。私たちは、最後まで、この村を守り抜きます。」
妖夢の言葉は、まるで誓いのようだった。彼女の言葉には、村を守るという、強い使命感と、どんな敵にも立ち向かう、覚悟が込められていた。
ゾルクは、霊夢、魔理沙、妖夢、三人の言葉を聞き、まるで虫けらを見るかのような、軽蔑の表情を浮かべた。そして、彼は、ゆっくりとダイヤモンドの剣を抜き放ち、その切っ先を、霊夢たちに向けた。剣からは、炎のエフェクトが、さらに激しく燃え上がり、周囲の温度を、急上昇させていく。
「ほざけ、人間ごときが…。このゾルクの力、そして、偉大なるエンダードラゴン様から直々に賜った、このエンチャント装備の威力…貴様らの、ちっぽけな力で、一体何ができるというのだ? …せいぜい、無駄な抵抗をせずに、大人しく滅びるがいい。それが、貴様らにできる、唯一の…」
ゾルクが、そこまで言いかけた時、彼は、突如として、言葉を止めた。そして、まるで何かに気づいたかのように、目を見開き、空を見上げた。
霊夢たちも、ゾルクの視線を追って、空を見上げる。そこには、満月が煌々と輝き、星々が、まるで宝石のように、夜空を彩っていた。しかし、その美しい夜空に、今まさに、異変が起ころうとしていた。
月が、徐々に、赤く染まり始めていたのだ。それは、まるで血の色のような、不気味な赤。そして、その赤色は、次第に濃さを増し、夜空全体を、不吉な色に染め上げていく。
「何だ…? これは…?」魔理沙が、困惑したように呟いた。
霊夢も、妖夢も、そして、ゾルクでさえも、この異常な現象に、言葉を失っていた。
そして、その時、ゾルクが、まるで絶叫するかのように、叫んだ。
「これは…エンダードラゴン様の、御力…! 我らに、さらなる力を、与えてくださる…!」
ゾルクの言葉と同時に、彼の体から、黒いオーラが、噴き出し始めた。それは、まるで闇そのものが、彼の体を蝕んでいくかのようだった。そして、その黒いオーラは、徐々に、ゾルクの全身を覆い尽くし、彼の姿を、さらに異様なものへと、変貌させていく。
ダイヤモンド製のエンチャント装備は、黒いオーラに侵食され、その輝きを失い、まるで腐敗した金属のように、変色していく。背中に背負っていた炎のエフェクトを纏うダイヤモンドの剣は、炎が黒く染まり、まるで呪われた武器のように、禍々しいオーラを放ち始めた。
そして、ゾルクの瞳は、完全に、赤く染まっていた。それは、まるで血の色のような、狂気に満ちた赤。彼の口からは、人間のものとは思えない、獣のような唸り声が漏れ聞こえる。
「グオオオオオオオオ!!!!」
ゾルクの咆哮が、夜空に響き渡った。それは、まるで、この世の終わりを告げるような、恐ろしい音だった。
そして、その咆哮を合図に、ついに、戦闘の火蓋が切って落とされた。
ゾルクは、まるで野獣のような咆哮を上げながら、エンチャントによって黒く染まった巨大な腕を、力任せに地面に叩きつけた。その瞬間、彼の全身から溢れ出す黒いオーラが、さらに激しさを増し、まるで彼の怒りに呼応するかのように、周囲の空気を震わせる。
「腐者破砕地!」
ゾルクが、技名を叫んだ瞬間、彼の腕が地面に触れた場所を中心に、世界が崩壊していくかのような、凄まじい衝撃が発生した。
ドゴォォォォォォォォォォン!!!!!!
その音は、もはや単なる衝撃音ではなく、大地の悲鳴、世界の終焉を告げる音のようだった。地面は、まるで巨大な怪物に引き裂かれるかのように、無数の亀裂が走り、巨大な地割れが、瞬く間に広がっていく。大地は悲鳴を上げ、土煙が空高く舞い上がり、月明かりを遮り、周囲を暗闇に包み込んだ。
「くっ…!」
霊夢は、突如として足元に発生した地割れに、咄嗟に反応することができず、バランスを崩し、足を取られてしまった。彼女は、トライデントを地面に突き刺し、辛うじて転倒を免れたが、その衝撃は、全身を駆け巡り、彼女の体を、激しく揺さぶった。
「な、なんだ!? こ、この威力は…!?」
魔理沙は、ゾルクの攻撃によって発生した、凄まじい衝撃波に、吹き飛ばされそうになる。彼女は、雷を纏うトライデントを地面に突き立て、必死にその場に踏みとどまろうとするが、まるで嵐の中にいるかのように、体が大きく揺さぶられ、立っていることすら困難な状況だった。
「皆さん、気を付けてください! ゾルクの攻撃範囲は、見た目以上に広いです!」
妖夢は、二刀を地面に突き刺し、その場にしゃがみ込むことで、低い姿勢を保ち、バランスを崩すことなく、衝撃に耐え抜いた。彼女は、鋭い洞察力で、ゾルクの攻撃の特性を見抜き、霊夢たちに、警戒を呼びかける。
ルーク、ガロン、フィンは、オオカミならではの、卓越した身体能力と、鋭敏な感覚を駆使し、瞬時に危険を察知し、地割れを巧みに避けていく。彼らは、まるで風のように、素早く、そしてしなやかに、地面を駆け抜け、ゾルクの攻撃範囲から、脱出することに成功した。
ゾルクは、霊夢たちが苦戦している様子を見て、まるで獲物をいたぶる獣のように、ニヤリと、不気味な笑みを浮かべた。彼の口元は、大きく裂け、腐敗した歯が、月明かりに照らされ、不気味に光っている。
「どうだ、人間ども! これが、エンダードラゴン様から授かった、真のミュータントの力だ! 貴様らのような、ひ弱な存在には、決して抗うことなどできはしない! …さあ、大人しく、ここで滅びるがいい!」
ゾルクの言葉には、絶対的な自信と、人間たちへの、圧倒的な優越感が、滲み出ていた。彼の言葉は、まるで死刑宣告のように、霊夢たちの心に、重くのしかかった。
しかし、霊夢たちは、決して諦めなかった。彼女たちは、ゾルクの圧倒的な力の前に、確かに、苦戦を強いられていた。しかし、彼女たちの瞳には、まだ、希望の光が宿っていた。そして、その瞳の奥には、この村を、そして村人たちを、必ず守り抜くという、強い決意が、燃え上がっていたのだった。
ゾルクは、先ほどの「腐者破砕地」による攻撃で、霊夢たちが体勢を崩している隙を見逃さなかった。彼は、肺の中に溜め込んだ空気を、一気に解き放つかのように、大きく口を開け、そして、まるで地獄の底から響いてくるような、凄まじい咆哮を放った。
「咆哮轟音撃!」
ゾルクが技名を叫んだ瞬間、彼の口から放たれた咆哮は、単なる音波ではなく、目に見えない衝撃波となって、周囲の空間を激しく振動させながら、霊夢たちに向かって、怒涛のように押し寄せていった。
その衝撃波は、まるで巨大な壁が迫ってくるかのように、視覚的にも圧迫感を与えるほどの威力を持っていた。空気は、目に見えるほどに歪み、地面は、まるで波打つように揺れ動き、周囲の木々は、激しい風に煽られるかのように、大きく揺さぶられている。
「ぐああああ!」
霊夢たちは、突如として襲い掛かってきた、目に見えない衝撃波を、完全に避けることができず、まともにその攻撃を受けてしまった。衝撃は、全身を駆け巡り、まるで巨大なハンマーで殴られたかのような、激しい痛みが、彼女たちの体を襲う。
霊夢は、衝撃で吹き飛ばされ、数メートル後方の地面に、叩きつけられた。彼女は、一瞬、息が詰まり、全身に激痛が走るのを感じた。しかし、すぐに立ち上がり、トライデントを杖のようにして、再び戦うための体勢を整える。
魔理沙は、持ち前の負けん気の強さで、衝撃波に耐えようとしたが、その威力は、彼女の想像を遥かに超えていた。彼女は、まるで木の葉のように、空中に吹き飛ばされ、地面を激しく転がっていく。しかし、すぐに体勢を立て直し、雷を纏うトライデントを構え、ゾルクを睨みつけた。
「くそっ…! ただの咆哮じゃないって…!? 何なんだ、この力は…! まるで、見えない何かに、殴られたみたいじゃないか…!」
魔理沙は、苦痛に顔を歪めながらも、悪態をつき、ゾルクに対する、闘志を、さらに燃え上がらせるのだった。
妖夢は、二刀を素早く交差させ、体の前でX字の形を作ることで、衝撃波を、ある程度、受け流すことに成功した。しかし、完全に防ぎきることはできず、衝撃の一部が、彼女の体を、激しく揺さぶる。彼女は、二刀を構え直し、ゾルクを鋭く睨みつけながら、冷静に分析を始めた。
「音の攻撃…、しかも、ただの音じゃない…。これは、おそらく、魔力、もしくは、それに近い、特殊なエネルギーを、音波に乗せて、攻撃している…厄介ですね…。」
妖夢は、ゾルクの攻撃の特性を見抜き、その対策を、瞬時に考えようとしていた。
ルーク、ガロン、フィンは、衝撃波を、間一髪で避けることに成功した。彼らは、オオカミならではの、優れた身体能力と、鋭敏な感覚で、危険を察知し、素早く身を翻し、攻撃範囲から、脱出したのだ。
ゾルクは、霊夢たちが、苦しみながらも、まだ立ち上がっている様子を見て、まるで勝利を確信したかのように、高らかに笑い声を上げた。その笑い声は、夜の闇に響き渡り、周囲の空気を、さらに不気味に震わせる。
「無駄だ、無駄だ、人間ども! このゾルクの力、そして、エンダードラゴン様から賜った、このエンチャント装備の威力! 貴様らのような、弱き者たちには、到底、理解できないだろう! …さあ、大人しく、ここで滅びるがいい! それが、貴様らにできる、唯一のことだ!」
ゾルクの言葉には、一切の容赦も、慈悲もなかった。彼は、霊夢たちを、完全に、見下しており、その勝利を、確信しているようだった。しかし、霊夢たちは、決して諦めなかった。彼女たちの瞳には、まだ、希望の光が、確かに灯っていたのだ。そして、その瞳の奥には、この村を、そして村人たちを、必ず守り抜くという、強い決意が、燃え上がっていた。
ゾルクは、まるで獲物を追い詰める肉食獣のように、低い唸り声を上げながら、その巨体を揺らし、猛烈な勢いで霊夢に向かって突進してきた。その姿は、まるで巨大な岩が転がってくるかのようで、周囲の地面を振動させ、木々をなぎ倒しながら、一直線に迫ってくる。
「腐者衝突破!」
ゾルクが技名を叫んだ瞬間、彼の体は、さらに加速し、まるで黒い砲弾のように、霊夢に襲いかかった。その速度は、人間の目では捉えきれないほど速く、まさに一瞬の出来事だった。
ドゴォォォォォォォォォォン!!!!!!
凄まじい衝撃音と共に、ゾルクの強烈なタックルが、霊夢の体を直撃した。その衝撃は、まるで巨大なトラックに轢かれたかのようで、霊夢は、為す術もなく、空中に吹き飛ばされ、数メートル後方の地面に、激しく叩きつけられた。
「がはっ…!」
霊夢は、肺の中の空気を全て吐き出し、激しい痛みに、思わず呻き声を上げた。全身の骨が軋み、まるで体がバラバラになってしまったかのような、激しい衝撃が、彼女の体を駆け巡る。彼女は、必死に立ち上がろうとするが、体が思うように動かず、地面に手をついて、荒い息を繰り返すことしかできなかった。
「霊夢!!」
魔理沙と妖夢は、霊夢が吹き飛ばされるのを目の当たりにし、悲痛な叫び声を上げながら、彼女に駆け寄ろうとした。しかし、ゾルクは、二人の動きを、完全に予測していたかのように、素早く方向転換し、今度は、魔理沙に向かって、突進を開始した。
「邪魔だ、小娘…!」
ゾルクは、唸り声を上げながら、魔理沙に、その巨大な拳を、連続で叩きつける。
「腐者百裂拳!」
ゾルクが技名を叫んだ瞬間、彼のエンチャントによって黒く染まった腕が、まるで機関銃のように、高速で動き始めた。その拳は、一つ一つが、巨大な岩のようで、それが、雨あられのように、魔理沙に降り注ぐ。
ドゴ! ドゴ! ドゴ! ドゴ! ドゴ! ドゴ! ドゴ! ドゴ!
その拳は、まるで嵐のように、止むことなく、魔理沙を襲い続ける。一撃一撃が、致命傷になりかねないほどの威力を秘めており、その速さは、人間の目では、捉えきれないほどだった。
魔理沙は、雷を纏うトライデントを、必死に振り回し、ゾルクの拳を、防ごうとする。しかし、ゾルクの拳は、あまりにも重く、そして速く、彼女は、徐々に、防御を崩され、追い詰められていく。
トライデントと、ゾルクの拳が、激しくぶつかり合うたびに、金属が擦れる、耳障りな音と、火花が、周囲に飛び散る。魔理沙は、全身の力を振り絞り、必死に耐えようとするが、ゾルクの圧倒的な力の前に、彼女の体は、徐々に、後退していくのを、感じずにはいられなかった。
「くそっ…! なんだ、この化け物の、パワーは…!? まるで、壁に、殴りかかっているみたいじゃないか…!」
魔理沙は、苦痛に顔を歪めながら、悪態をつく。彼女は、今までに、これほどまでの力を持つ敵と、戦ったことはなかった。ゾルクの圧倒的なパワーと、エンチャント装備の威力は、彼女の想像を、遥かに超えていたのだ。
ゾルクは、魔理沙が防戦一方になっているのを見て、まるで嘲笑するかのように、口元を歪めた。そして、彼は、さらに攻撃の手を強め、魔理沙を、完全に、打ちのめそうとするのだった。
ゾルクは、魔理沙を圧倒的な力で打ちのめそうと、さらに攻撃の手を強めた。彼の拳は、まるで嵐のように、止むことなく魔理沙に降り注ぎ、その一撃一撃が、彼女の体力を確実に削り取っていく。
「死ね、人間! これで終わりだ!」
ゾルクは、勝利を確信したかのように叫び、渾身の力を込めた右ストレートを、魔理沙の顔面目掛けて、繰り出した。その拳は、まるで巨大な鉄球のようで、もし直撃すれば、魔理沙の命はないだろう。
しかし、その時、一筋の閃光が、ゾルクの視界を横切った。それは、妖夢が放った、渾身の斬撃だった。
「させるか…!」
妖夢は、霊夢が倒され、魔理沙が絶体絶命の危機に陥っている状況を、決して見過ごすことはできなかった。彼女は、全身のバネを使い、まるで風のように、素早く、そして静かに、ゾルクの背後に回り込み、二刀を構え、渾身の力を込めて、斬りかかったのだ。
妖夢の剣は、月明かりを反射して、鋭く輝き、まるで流星のように、ゾルクの背中を狙う。しかし、ゾルクは、その攻撃を、完全に予測していたかのように、驚くべき速さで、振り返った。
「愚かな…!」
ゾルクは、低く唸りながら、右腕を背後に回し、妖夢の剣を、素手で掴み取ったのだ。その動きは、まるで、ハエを叩き落とすかのように、簡単で、そして、無造作だった。
妖夢の剣は、ゾルクのエンチャントされた手によって、完全に止められてしまった。その衝撃で、妖夢の手は痺れ、剣を握る力が、一瞬、弱まる。
ゾルクは、妖夢の剣を、まるで木の枝を折るかのように、簡単に握りつぶしてしまった。そして、彼は、妖夢を、まるでゴミを捨てるかのように、乱暴に地面に叩きつけた。
「ぐあっ…!」
妖夢は、地面に叩きつけられた衝撃で、息が詰まり、激しい痛みに、顔を歪めた。彼女は、必死に立ち上がろうとするが、体が思うように動かず、地面に手をついて、荒い息を繰り返すことしかできなかった。
霊夢、魔理沙、そして妖夢。三人の勇者たちは、それぞれ、ゾルクの圧倒的な力の前に、為す術もなく、打ちのめされてしまった。彼女たちは、地面に倒れ、苦痛に顔を歪めながらも、必死に立ち上がろうとするが、体が思うように動かない。
ルーク、ガロン、フィン、三匹のオオカミたちは、その光景を、ただ見ていることしかできなかった。彼らは、ゾルクの周りを、果敢に駆け回り、攻撃の機会を、必死に探していた。しかし、ゾルクの全身を覆う、エンチャントされたダイヤモンド製の鎧は、あまりにも硬く、彼らの鋭い牙や爪では、傷一つ、付けることすら、できなかったのだ。
彼らは、何度も、何度も、ゾルクに飛びかかり、攻撃を試みた。しかし、その度に、ゾルクは、まるでハエを払うかのように、簡単に、彼らをあしらい、そして、彼らを、地面に叩きつけていた。
ルークは、鋭い牙で、ゾルクの足に噛みつこうとしたが、鎧に阻まれ、逆に、牙が欠けそうになってしまった。
ガロンは、その巨体を活かし、ゾルクに体当たりを試みたが、まるで岩にぶつかったかのように、弾き飛ばされてしまった。
フィンは、素早い動きで、ゾルクの背後に回り込もうとしたが、ゾルクは、まるで背中に目がついているかのように、その動きを察知し、簡単に、彼を捕まえてしまった。
三匹のオオカミたちは、満身創痍になりながらも、決して諦めなかった。彼らは、霊夢たちを、そして、村を守るために、最後の力を振り絞り、ゾルクに立ち向かっていった。しかし、彼らの攻撃は、ゾルクには、全く通用しなかった。
ゾルクは、まるで、子供の遊びに付き合っているかのように、余裕の表情で、オオカミたちの攻撃を、いなし続けていた。そして、彼は、ついに、勝利を確信したかのように、高らかに笑い声を上げた。
「ハハハハハ! 無駄だ、無駄だ! 貴様らのような、弱き者たちには、このゾルクには、決して勝てない! …さあ、大人しく、ここで滅びるがいい!」
ゾルクの勝利宣言が、夜空に響き渡った。それは、まるで、死神の宣告のようでもあり、霊夢たちの心に、絶望の影を落とすのだった。
霊夢、魔理沙、妖夢が打ちのめされ、ルーク、ガロン、フィンもゾルクに手も足も出ない。まさに絶体絶命、万事休すかと思われたその時、ゾルクは、予想外の行動に出た。彼は、勝利を確信したかのように高らかに笑い声を上げると、突如、攻撃の手を止め、仁王立ちになったのだ。
そして、彼は、両腕を大きく広げ、まるで儀式を行うかのように、ゆっくりと、自身の胸を、力強く叩き始めた。
「腐者胸叩!」
ゾルクが、低く、しかし力強い声で、技名を叫んだ。その瞬間、彼の胸から、不気味な音色が響き渡り始めた。
ドンドン! ドンドン! ドンドン! ドンドン!
それは、まるで巨大な心臓の鼓動のようでもあり、あるいは、地獄の底から響いてくる太鼓の音のようでもあった。その音は、一定のリズムを刻みながら、周囲の空間を、激しく振動させ、霊夢たちの心臓にまで、直接、響いてくるかのようだった。
そして、その音に呼応するかのように、ゾルクに従う、無数のゾンビたちの動きが、明らかに変化した。それまで、ただ無秩序に、のろのろと動いていたゾンビたちが、まるで、何かに憑りつかれたかのように、突如として、狂暴性を増したのだ。
彼らの腐敗した瞳は、赤く光り輝き、その動きは、より速く、より強く、そして、より攻撃的になった。まるで、理性や恐怖心を失い、ただ、破壊衝動だけに突き動かされる、狂戦士のように、霊夢たちに、襲いかかってくる。
「な、何だ…!? こいつら…急に、動きが…!?」
魔理沙は、突然の変化に、驚きの声を上げた。彼女は、先ほどまで、何とか対応できていたゾンビたちの攻撃に、徐々に、押され始めているのを感じていた。
妖夢も、息を切らしながら、必死に刀を振るい、ゾンビたちの攻撃を、防いでいる。彼女は、冷静に状況を分析し、ゾルクの行動と、ゾンビたちの変化の関連性に、すぐに気づいた。
「これは…ゾルクの能力…! あの胸を叩く行為…、おそらく、あれが、ゾンビたちを、強化している…!」
妖夢の言葉に、ルークは、鋭い牙を剥き出しにし、ゾンビの一体に、噛みついた。しかし、強化されたゾンビは、以前よりも、はるかに手強く、ルークの攻撃を、 簡単に受け流してしまう。
「まずい…! このままでは、ジリ貧だ…! 数で押し切られてしまうぞ…!」
ルークの言葉には、焦りの色が滲んでいた。
ガロンは、その巨体を活かし、ゾンビたちを、次々と薙ぎ倒していく。しかし、彼の攻撃も、以前ほどの効果はなく、ゾンビたちは、すぐに立ち上がり、再び、襲いかかってくる。
「くそっ…! キリがない…! 何とかして、ゾルクを倒さなければ…この状況は、打開できない…!」
ガロンは、低く唸りながら、ゾルクを睨みつけた。しかし、ゾルクは、まるで、自分には関係ないかのように、悠然と、胸を叩き続けている。
フィンは、恐怖に震えながらも、必死に、ルークやガロンの援護をしようと、動き回っていた。しかし、彼の小さな体では、強化されたゾンビたちに、太刀打ちすることはできず、何度も、地面に叩きつけられ、傷ついていく。
「で、でも…どうやって…? ゾルクは、あんなに強くて…、それに、あの鎧…、僕たちの攻撃じゃ、全然、効かない…!」
フィンは、絶望的な状況に、涙を浮かべながら、それでも、諦めずに、立ち上がろうとする。
その時、地面に倒れていた霊夢が、ゆっくりと、立ち上がった。彼女の体は、満身創痍で、服は破れ、血が滲んでいる。しかし、彼女の瞳には、まだ、希望の光が、確かに灯っていた。
霊夢は、右手に握るトライデントを、力強く握りしめ、ゾルクを、真っ直ぐに見据えた。彼女の瞳には、恐怖も、絶望も、なかった。あるのは、ただ、この村を、そして村人たちを、必ず守り抜くという、強い決意だけだった。
「…まだ…まだ、諦めるわけにはいかない…! 私たちは、絶対に、負けない…!」
霊夢の言葉は、まるで、自分自身に言い聞かせるかのようだった。しかし、その言葉には、強い意志と、仲間たちへの信頼、そして、勝利への、揺るぎない確信が、込められていた。
そして、その言葉は、霊夢だけでなく、魔理沙、妖夢、ルーク、ガロン、フィン、そして、その場にいる、全ての人々の心に、希望の光を、再び灯すのだった。
ミュータントゾンビです。
完全に見た目はハルクです。
元ネタがアメコミなので技名は英語です。
ミュータントModのアイテムにもハルクハンマーというアイテムがあります。