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第八十二話 勇者たちのその後

 龍討伐から帰還したアイラとライモは、選挙で忙しい日々を送った。


 アステール国で初めてとなる男女平等、身分関係なしの民主的な選挙を盛り上げるため、ライモは日々選挙の啓蒙活動を行った。アイラは貴族の選挙違反を取り締まり、選挙法の厳しい改正をしながら、民主主義の基盤を作る法案を提示した。


 投票率は七十%。初めて衆議院の議席が貴族院を上回った。

 カレンとヤスイチは当選、シモンズは落選したが次は必ず挽回すると意気込みを話した。


 二人は毎晩、寝室でお互いの近況を報告し合い、ハグとキスをして眠りについた。

 アイラはライモの寝相の悪さに、ライモはアイラの寝起きの不機嫌さに慣れてきたころ、ようやく結婚式の日がきた。


 ライモはアイラが作ってくれたパールのような輝きを放つ白いスーツをジーモンに着せてもらった。

 アイラは三官女にドレスの着付けとヘアメイクをしてもらった。アイラのドレスはミランダのお下がりで、肩のレースと腰のフリルを取ったシンプルなデザインに改良された。


 ジーモンがライモにベールを、エドワードがアイラにベールをかぶせる。二人の親は涙で少し手を震わせていた。


「今ここに、世界樹の祝福のもと、二人の魂が一つの未来を紡ぐことを誓います。

 あなたがた勇者二人が乗り越えた数多くの試練はここに集約されました。


 手を取り合い、互いを信じ、困難の時は寄り添い話し合い、祝福の時はさらに大きな喜びにすること。

 病める時も健やかなる時も、互いを信じ愛し合うと誓いますか?」


 コダールが誓いの言葉をよく通る、澄んだ声で言った。


「はい、誓います」


 ライモとアイラは同時にベールを取って誓い、キスをした。


 世界樹に白い花が咲いた。


「おめでとうございます!」の言葉の渦のなかで、アイラとライモは互いの頬を手のひらで包み、鼻先をくっつけて笑い合った。二人の結婚式を観に遠くの国からも観光客が来た。


 大勢の人が来たが、オーが大量の料理を作るので皿は空になることがなく、セバスチャンが自費で買ってきたシャンパンのタワーが常に溢れ、子供たちはドレスやタキシードではしゃいで駆け回り、人々は楽しい披露宴を楽しんだ。


「普段着で結婚式に来るなんて初めてだ」と庶民たちは喜び、貧困街から来た子供たちはケーキに大はしゃぎした。

 誰一人として取り残さない、みんなが楽しい結婚式と披露宴を、アイラとライモは幸せな気持ちで眺めていた。


 満月の夜、披露宴会場は舞踏会に変わった。

 ピアノの緩やかな伴奏でアイラとライモは頬をくっつけて踊った。十五歳のアイラの誕生日にできなかった、チークダンスだ。


「あなたを何度抱きしめても、キスをしても足りない。どうしてそんなに魅力的なの?」


 アイラがライモの顎を、そっと人差し指でなぞって言う。


「それは、君のことを愛しているから」


 アイラはライモの応えに満足して、口づけをした。


  ※


 一ヶ月後、久しぶりの休日。

 城の庭のパラソルの下、終わりかけの夏をアイラとライモは惜しんでいた。二人とも半袖半ズボンのラフな格好で、敷布の上で寝転がっていた。


「新婚旅行、どこに行きたい?」


 アイラが尋ねる。眠りかけていたライモはまぶたを開いた。


「んー、どこがいいかなぁ。今は海の気分」


 ライモは気だるい声で答えた。


「それだ、海! 私、海って見たことない。アステールに海はないからね。そうだ、海行こう。今から」


 アイラが起き上がって言う。


「今からは無理だよ。あしたも仕事だよ」


「…………だよね、言ってみただけ。あー、海行きたい。私、泳げるかな」


 アイラは再び寝転がってつぶやく。ライモもまたうとうとしかけたが、肩を揺すられて起きた。


 バティストとオーがパラソルの下に立っている。


「お休み中のところ、すみません。ライモさん、あなたに緊急のお知らせです」


 バティストが言った。

 ライモは慌てて起き上がり、髪の乱れを整えた。


「ライモ、落ち着いてよく聞いてくれ」


 オーが険しい顔をしている。何事かとライモは緊張した。


「ライモさん、あなたはこの国の人間ではありません。

 あなたは、この国にかつていた元魔王の子供です。

 あなたの母親の元魔王、名前はログといいます。

 ログは今、外の世界で戦っています。外の世界は人類滅亡の危機にあります。ライモさん、あなたが助けに行かないといけません」


 バティストの言葉をライモは理解できない。


「俺も同じく、この世界の人間ではない。イルカに育てられたという話は嘘だ。俺はこの世界から外の世界に流されて、外で育てられた。俺とともに来てくれ、ライモ」


「どういうことなの!」


 アイラが叫ぶ。


 ――りんごの皮。

 そうだ、あの記憶。


 ――――あきら、リンゴの皮が好きなんて変わってるなぁ。ほら、リンゴの実も食べて。美味しいよ。


 母が、リンゴを食べさせてくれた。


「おかあ、さん……」


 ライモは母の顔を思い出した。




 革命の双龍・完結

『大坂大祓大作戦』に続く

 

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