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第五十五話 電撃!婚約報告の後の三官女

 アイラとライモがキスをしたあと、リディアが堂々と歩いてきた。


「えー、これから二人の結婚については私、リディア・ラボルトがお答えします」


 リディアの左右にエルサとノラがやってきた。


「リディアご令嬢! こんな身分差の恋なんてありなんですか?」

「宮廷道化師と女王が結婚するなんて前代未聞です!」

「身分差の問題は? ライモの政治的な責任問題は?」

「これは王室の危機では!?」


 リディアは目を閉じて、記者たちの言葉を聞いた。

 ガヤガヤと同じ質問ばかりになったところで、カッと目を見開く。


「うるさい!」


 リディアの一喝で、場が静まる。

 硬直した空気のなか、リディアだけが悠然と立っていた。


「王室? そんなもの、とっくの昔に解体してるの。身分差、道化師、どーでもいいの。愛し合ってんのに文句ある!?」


 リディアは記者たちを真っすぐ睨み、小柄な体から信じられないほど地響きのある声で言った。


「二人は幼馴染で長い時間をともにしてきたと、リディア・ラボルトが証言します! そして、私たちの女王とそのパートナーを三官女は祝福します!」


 瞬間、場の空気が震えた。

 でも、リディアは怯まない。

 さらに力をたぎらせた。


「だいたい、身分がどうとか言ってる奴らに限って、自分は幸せではないくせに、人の幸せに文句つけるのよ。

 く、だ、ら、ないっ!

 美しく賢い二人が結ばれた、尊いでしょうが!

 結婚は家同士の結びつきだとか、もう古いのよ。はい、これが結婚の革命です。ついてきなさい!」


 リディアの演説に、群衆から旗が上がった。紫色、白、緑の三色の旗、フェミニズム協会だ。

 そして黄色に緑のジェンダー解放の騎士団、ミモザ騎士団の旗。

 リディアの圧に記者たちが引いていった。


「そ、その、新しい結婚とは具体的には?」


 青年記者がおそるおそる尋ねてきた。


「家制度を解体します。結婚しても、どちらかの家に属す必要も姓名も変える必要はありません。個人が個人として尊重される、それが新しい結婚の形です。女王アイラはそれを体現しました。

 国民のみなさん、結婚の幸せとは何か、考えてみてください。そうして声をあげていってください。自分の幸せを尊重しましょう」


 ノラが進み出て、微笑みながら記者に答える。しなやかなその仕草は場の緊張を緩めた。


 青年記者は懸命にその言葉を帳面に書き込んだ。


「では、お二人の結婚式はいつですか!? ぜひ、女王様の誕生祭のように城を解放してください。結婚式、見たいです!」


 若い女性記者が手を挙げて、はしゃいで言った。

 アイラと同じ金髪にポニーテール、強めのアイラインで、見てすぐにアイラのファンだとわかる。


「結婚式は未定ですが、国民にオープンな式にする。と、アイラが言ってたよな?」


 エルサが言ってから、リディアに確認してきた。


「ええ、そうです、たぶん。でもアイラのことですから、そこまで豪勢な式にはしないと思うわ。あなた、そのメイク素敵ね」


 リディアは若い女性記者に、にっこり微笑みかけた。


「やばっ、リディア様に微笑みかけられた」

「リディア様、かわいい」


 “かわいい”という声に、リディアは少し照れた。


「では、ここで三官女の質疑応答を終了いたします」


 ノラが言った。リディアは下を向いてノラの後についてった。


 翌日、新聞の見出しは「女王アイラ、宮廷道化師と婚約」一色だった。アンが描いたアイラとライモが寄り添う姿が美しく、その絵が各社で使われた。アンはこの絵の使用権を高く売ったそうだ。特に自分が辞めたフェミニズム協会に否定的なことを書いた新聞社には、二倍の値段で売ったという。


 ノラ、リディア、エルサは喫茶室を飾り付けている。

 アイラ女王婚約パーティーを開くのだ。


「まったく、私ってば苦労人だわ。アイラとライモの面倒に振り回されて」


 リディアはぶつぶつ文句を言うが、台に乗って花のリースを壁にかけるのに夢中だ。自然と頬が緩んでいる。


「ふふふ、そうねぇ。でも良い振り回され方をしているわ。十五歳で初デートした子たちが、ついに結婚するのね」


 ノラが特別なレースのかけ布を、ソファーにかけて言う。


「でもね、普通は身分差で悩むものじゃない? なのにアイラってば女王に即位したその日に、その日にライモに求婚して!

 ライモが猫になって逃げたらシクシク泣いてノラに慰められて、挙げ句の果てに婚約指輪を無くす!」


「あの時は驚いた。人間が猫になる瞬間を見た」


 不器用なのでお茶会の準備に参加させてもらえず、部屋の角に立っているエルサが言った。


「ふふ、それでそのあと、オーさんがやってきて。花婿のお届けですーって」


 ノラが声に出して笑い出す。


「それ、それ、それ! オーってあいつ、人を驚かせるために生きてるの。名前の通りじゃん! “おー”…………感嘆の声。って。そうよ、オー。あのバカでかいの、どこ行った!」


 リディアは花輪をかけたい場所に手が届かず叫んだ。


「お呼びですね! ハートの可愛らしいアイシングクッキーを作っていました」


 オーが高速で現れ、手にはクッキーが盛られた皿を持っている。リディアは急に出てきたオーに驚かず、クッキーを見定める。ピンクに水色、淡い黄色などパステルカラーのハートのクッキーは確かにかわいい。


「うん、いいじゃない。そうだ、オー。あんたも私たち三官女の道連れね。いいこと? アイラとライモがこれから何があっても、私たちが一番の味方ですからね!」


 リディアが言うと、オーはにっこり笑った。


「ああ、そうだな! ライモは俺の相棒だ、何があっても守る!」


「アイラは私たち三官女が守る」


「僭越ながら、わたくしも…………」


 メイドのシンシアが、おそるおそる部屋に入ってきて言った。


「ええ、もちろんよ。シンシア、今日のパーティー、楽しみましょう。そうだ、シンシア。いつもメイドの服じゃなくて、たまには私のドレスを着てみない? 私とあなた、体型が似ているからきっと似合うよ」


 リディアはシンシアの手を引いて、アイラの部屋に向かった。

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