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和都歴450年6月 神話

>紗矢へ


あれから祖柄樫山の頂上付近にある山小屋に着いた。ここは❝蓮次の学び舎❞と言われるらしい。

部屋は一部屋だが、温泉が湧き出ていて、湯治もでき、書物も沢山あった。

毛皮の寝床があり、囲炉裏で暖もとれる。

籠るには困らない場所だった。


台座があり、そこに横になることで神と話せるらしい。

着いたその日には疲れもあるので、神は降りてこないと妖が言う。

台座に横になるも、やはり何も起こらない。


暫くは書物でこの天孫降臨を学ぼうと、日々を過ごす。

色々と分かってきた。

極楽浄土といわれる楽園に、神・大山主(おおやまぬし)は居られ、娘である女神・山照(やまてらす)が神たる人間に相応しいかを判定すると。邪悪なる神・禍津命(まがつみこと)はその神兵を襲うのだと。最初の神兵、それは置田蓮麻呂(おきたれんまろ)

素晴らしい。蓮麻呂の子孫は代々、神の家系として生きながらえ、今もこの村にいる。そして、山照と邪神・禍津命の子孫も。神々の血脈が延々と記されている。

『ここは本当は入っていけない場所。他所者は特にね。』

妖はそういうと神酒・❝御美姫❞を注いでくれる。そしてそのまま僕のカラダを求めてくる。穢れをもっと払わなければと。もしかして君が山照なのか。

僕は彼女を拒まず、受け入れていく。いや、寧ろお願いしたいくらいに。

僕の感覚を分かるように、妖もカラダを動かす。まさに女神の所業だ。こんな感覚は未だかつてない、紗矢、お前では及ばない感覚を、妖は教えてくれる。

『これなら…そろそろ神も面会して…くださる…わ…』

妖がそう言ってくれた。それでも僕はカラダを止めない。欲望を、穢れを全てここで出し尽くすのだ。


僕は最後、動けなかった。妖がそのまま、台座に運んでくれた。


ーその日も何も現れなかった。


これを繰り返すらしい。でも苦痛どころか寧ろ幸せだ。長く女神と共に過ごせることが。


紗矢、君はまだつまらない現実で起こることに嘆いているようだ。

君も信仰を積めば、きっと幸せが何か、見えてくるはずだ。


西岡 良二郎


ーーーーー


良二郎さんへ


彼方の手紙から、最早まともな思考では無いようね。その女に飲まされているお酒、本当に神酒なのかしら?彼方はここを出るときは、その山の神話を鼻で笑っていたのよ?

神が降りるなら、何故、不幸な人が沢山いるのかと。この世界の理不尽を、一緒に嘆いていたわ。

もし彼方が神に会うならば、それを聞いてちょうだい。目が覚めるはずよ。


あら、母乳の時間かしら?お兄様が力を連れてきたわ。直ぐあげないと。

私はこの子のことで手がいっぱい。お兄様が毎日来てはお手伝いをしてくれるから、今日からは泊まってもらうことにしたわ。

彼方が妖と泊まって過ごすように。


紗矢

次回2025/3/28(金) 18:00~「和都歴450年7月 神との謁見」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
洗脳されすぎて、びっくりしてます。元の世界には帰れないですね。
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