和都歴450年5月 儀式と覚悟
>愛しの紗矢へ
僕が神兵になるかどうかを悩んでいると、野崎さんは神の降臨する家に赴き、答えはその後でも構わないと仰った。僕も是非にと、回答した。
僕が神奈備へ向かう前に一つ忠告を受けた。神兵たる男はその溜まった悪液を体内から出してからでなければ神に会うにも失礼だと。すべての悪液を出し尽くすほど、神と明確に対話が出来るのだと。
妖さんと共に日輪を発ち、夜も更けるころ、神奈備に入った。
神奈備の赤島さんに会うなり、話は聞いているようで、直ぐにある建屋に案内された。❝赤島売春宿❞。
例の儀式をするには、ここで適当な女を買って、済ませろと言われた。
妖さんにも、その覚悟がなければ神に会うことは出来ないと。
そう、僕は神に会うため、選ばれるためにこの❝儀式❞を済ますに過ぎない。
しかし、僕が選ぶのはこの店の女性じゃない。
妖さん、その人だ。
彼女は驚きもせず、寧ろ光栄とばかりに❝儀式❞の相手をしてくれた。
彼女は神酒❝御美姫❞まで用意してくれたのだ。
凄い感覚だ…ただカラダを交えているだけではない、何か特別な…
『良二郎さん 彼方の●●の▽は*****です。さぁ■■を▼の〇に▢▢▢▢▢なさいな。』
これは、この感覚は、忘れることもできないー
気が付くと朝になって寝床にいた。汗もビッショリかいていた。
妖さんがお茶を持ってきてくれた。彼女が言うように、体内から穢れが無くなり、感覚が鋭くなった気がする。
神に会いに後は山を登るだけだ。
しかし、着いたばかりでの体力の消耗、英気を養うためにも1日はゆっくり休む必要があるらしい。
妖さんが、僕の湯治にも付き合ってくれ、披露している個所を労わってくれる。
これが神の使いなのか。
ところで、君の神への懇願はなんだい?そこまで下品なお願いもないだろう。仮にも僕の母親だ。何か困れば兄を頼れと言ったはずだ。
とはいえ、カラダの健康には気を付けてほしい。
愛しい人へ
西岡商店・副店主
西岡 良二郎
ーーーーー
良二郎さんへ
彼方の心配も他所に、子どもは無事生まれました。❝力❞と名付けました。
そして、どういうつもりなの?儀式とか言って、他の女を宛がわれているだけでしょう?
それが神に会う条件だなんて笑わせるわね。
お義父様もカンカンで、絶縁は免れないわ。
お義兄様も憐れんでか産後、毎日顔を見せてくれるの。そして力も嬉しそうに懐いているわ。
そんな光景を見て、私は今、幸せを感じている。
彼方の神への面会旅もいい加減に切り上げて、早く戻る事をお勧めするわ。お義父様も都の官人に連絡を入れ、彼方の捜索をお願いするかもしれないわ。
そんな輩とは早く手を切るの。そして帰ってきて。
紗矢
追伸・私にその女との情事の言葉まで書いて寄こすとはどういうつもり?悪阻以上の吐き気がします。
次回2025/3/11(火) 18:00~「和都歴450年6月 神話」を配信予定です。