和都歴450年4月 守護者
>愛しの紗矢へ
君が、僕と妖さんの仲を疑うとはね。説明する前に僕はかなり資金が貯まった事を報告しておく。凄い額だ。家を建てるだけじゃない。向こう数十年は都で暮らせる。これでお金の心配はいらない。その代わり、僕はそんな彼らに興味が尽きなくなった。
野崎さんの権力は、神の守護者・置田蓮次の力によるものらしい。今も置田蓮次はこの山の英雄として生きているらしい。信じられるかい?
僕にも神兵として、資金を調達する役目を与えてくれるというのだ。でも、そうなると、この村に永住しなくてはならない。君や子どものこと、家の事情を話したら、少し考えてくれと言われた。
そして、今度は置田蓮次が、神と話していた場所が山頂付近の小屋にあるらしい。
置田村の北・神奈備に明日にでも移動しようと誘われた。実に光栄だ。
訳あって野崎さんらは日輪を離れることができないらしく、神奈備の乙名・赤島さんに話をつけておいてくれるらしい。ただし、北地区と山頂付近への一人での往復は危険を伴う。
護衛も兼ねて、妖さんが同行してくれるらしい。嬉しい限りだ。彼女なしではこの村にもいられなくなりそうだ。
無論、家に帰れば愛する君が居る。誤解が無いようもう一度言うが、妖さんは飽くまでこの村での世話係に過ぎない。
おっと、もう日が暮れる。今夜も早く妖さんの元に帰らなければ。
心身の健康を大切に、愛しの妻へ
西岡商店・副店主
西岡 良二郎
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良二郎さんへ
私の声にも顧みず、ひたすら仕事と妙な人間関係の構築に励んでいることに心労を感じています。最近はお兄さんが良く来てくれて、お粥やら野菜の味噌煮汁を作ってくださるの。弟の不祥事に申し訳なさそうで、私もつい甘えてしまうわ。
そろそろ子どもも生まれそう。それまでには帰ると言っていた彼方でしたが、当てにはしていません。
先日、良二郎さんのお義母様が来て、私に怒鳴り散らしていったわ。彼方が帰らないのは私のせいでもあると。彼方が興味津々の神とやらに、お願いして欲しいわね。あのお義母様の死罰を。
その後、再び、お義兄様が私を優しく慰めてくれました。
心配はいらないと。彼方がお産に間に合わないなら、立ち会って下さるそうよ。
彼方の言う世話係とは何のことなのかしら?
そして神と交信にでも登山するつもり?お願い、半日もしないで多くの稼ぎができるその仕事は、異常よ。彼方は忘れてはいけない。西岡良二郎は、私、西岡紗矢の夫であり、神の使いでも何でもないことを。
無事をただひたすら祈っています。
紗矢
次回2025/2/24(月) 18:00~「和都歴450年5月 儀式と覚悟」を配信予定です。