和都歴450年3月 偉大なる神兵
>愛する妻・紗矢へ
君はそういう時期なのか、少し誤解して感情的になっているんだ。大丈夫、ここ妖さんの部屋では寝泊まり以外のことは絶対ないし、寧ろ高く買ってくれる客先まで案内された。野崎さんは豊倉さんとも懇意で、このままなら、予想以上の売り上げでここでの生活すら豊かにできる。
彼らのお陰で、少しの品を捌くと、都以上の対価を得る。午後には時間が余るので、神兵の訓練に参加してみた。兵士は過酷だが、それを終えた後の宴が、彼らの士気を保っているらしい。
今夜も料亭❝伊佐❞で野崎さんから、神々の話を傾聴できる。
また、ここの気の利く芸者さんは皆、野崎さんの仲間がやっている店に所属している女性らしい。こういうのも変だが、神の教えを受けた女性は、また一段と綺麗に見える。
このお酒のせいかもしれないが、神酒❝御美姫❞というらしい。彼女たちの接待も素晴らしい。ただ、それでも紗矢、君が一番の女性であることに変わりはない。
野崎さんにも女性のことを聞かれるや、そう断言している。
さて、今夜も妖さんの元へ帰らなければ。僕が居ないと寂しくて寝れないらしい。
彼女はどこか不思議と紗矢、君の様な瞳と声をしている気がする。性格は全く違うのに。
最近は紗矢、君がくれた襟巻で君を感じることに寂しさを覚えてきた。
こんな寂しい気持ちを、君が慰めてくれていたのだと、改めて実感している。
愛しているよ、紗矢。
西岡商店・副店主
西岡 良二郎
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最愛の人、良二郎さんへ
彼方の行動は少し危険に感じます。お兄様にこれらの手紙を拝読して頂きました。私と同じ考えですし、一歩間違えれば当家から絶縁されかねません。私は彼方が無事であれば絶縁されても構いません。しかし、このままではあなたの立場もない。万が一のことが彼方にあれば、私とこの子はどうしていけば良いのですか?
それと妖とかいう女は、私ではありません。私の襟巻を握りしめ、彼女を見てみればわかります。
彼方の神話に対する想いは本当に野崎という男からですか?
正気を取り戻してください。その妖という女に、彼方は何か捕らわれてしまったのではないですか?
良二郎さん、愛しています。どうか気持ちを奪われないで。
紗矢
次回2025/2/8(土) 18:00~「和都歴450年4月 守護者」を配信予定です。