和都歴450年2月 紗矢からの手紙
>愛する妻・紗矢へ
ここ祖柄樫山へ来て、一番の驚き、嬉しいことが起こった。何だと思う?君からの手紙がこの宿❝波❞に届いたんだ。ありがとう紗矢。実は明日、宿を発ち、秘八上へ向かうところだったんだ。着き次第、宿の名前を伝えるよ。
日輪を発つ前に、先日話した豊倉さんが、乙名という日輪の統括・野崎さんに会わせてくれるらしい。直ぐにでもといわれ、彼の屋敷へ赴いた。彼はここの商売をこれからも是非にと快諾された。同時にこの地の神話の話にも詳しいらしく、酒を交えて話をされた。ここ置田村は英雄・置田蓮次が神の安息地として、黛紅蓮から命を引き換えに守った村だそうだ。野崎さんは、その置田蓮次の片腕として、今も黛村からこの村を守っているらしい。素晴らしいことだよね、神の為に命を懸けて村を守る。彼はそんな神兵を募集しているそうだ。
夜も更け、酒も結構入っていたし、宿に戻るよりもと、野崎さんは部屋を宛がってくれた。彼の妹さん、妖さんが色々とお世話をしてくれた。彼女は旅人の持成しや慰めの仕事なんだとか。
彼らの話を聞いて、もう少し日輪に居るのも悪くないと思い始めた。だが、宿は引き払い、ここ妖さんの部屋で。
妖さんの部屋にある神棚やら、神具が僕を守ってくれているようで、凄く心身が慰められるんだ。これが神兵になると常に得られる加護なのだとか。そのせいか、彼女からも癒しのオーラを感じるんだ。
誤解しないでくれ。僕の愛する気持ちは何も変わらない。君と、お腹を蹴る子どもに早く会いたいことも。
愛しているよ、紗矢、永遠に。
西岡商店・副店主
西岡 良二郎
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良二郎さんへ
やはり、彼方の周りにいる人は、彼方を騙しているかと思います。いくら村の偉い人が御持成ししてくれても、その妖とかいう妹と同じ部屋に寝泊まりするなんて、何だか気分が悪いわ。
一体どうしてしまったの?私への気持ちが変わっていないなら、直ぐにでも村から帰還してください。
まさか神兵にと誘われて、その見返りに妹さんを宛がわれたわけではないですよね?
ああ、不安です。良二郎さん、愛しているなら早く戻って来て。
愛しています、紗矢
次回2025/1/29(水) 18:00~「和都歴450年3月 偉大なる神兵」を配信予定です。




