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和都歴449年12月 最愛の妻・紗矢へ

>最愛の妻・紗矢へ


都を出て、3日は経ったのだろうか?ようやく祖柄樫山へ着いたみたいだ。それでも僕は君のことばかりを考えている。初めて出逢ったのも年末の初雪の日だったね。

僕の猛烈な恋心を、有名な旅芸者の君は受け入れてくれた。二人でカラダを温め合ったあの日、そこから僕の人生は幸せで一杯だ。

君と生まれてくる子に素敵な家を建てるためにも、出稼ぎは一番手っ取り早い。僕のいない間に不自由があれば、兄さんを頼ってくれ。これは何度も言ったかな。

なるべく早く君の元に戻るつもりだ。


師走の風も厳しいが、この山から吹き下ろす風も一段と厳しい。

今日はこの山でも都に一番近い、置田村の日輪と言う地で宿を取ることにした。

❝波❞という宿らしい。山なのに、変わった名前だよね。


そうだ、聞いてくれ紗矢。宿の女将が面白いことを言っていた。この祖柄樫山には大昔、神々が降臨したらしい。その子孫が存在して今もこの山の何処かに点在しているんだってさ、まさかな。天孫降臨とか言っていたが、そういうことを売り文句にしなければ、こんな辺境の山に誰も来ないのだろう。


君が持たせてくれた手作りの毛糸の襟巻で君を感じながら今夜を過ごすよ。

早く、必要な売り上げ分を稼ぎ、君の元に戻りたい。

紗矢、愛しているよ。


西岡商店・副店主

西岡 良二郎

宿屋・波 ー 449年


ーーーーー


良二郎さんへ


彼方との出逢いを忘れるはずもありません。彼方とあの寒い冬を共に温め合って過ごしたからこそ、今、私のお腹には彼方の子が居るのよ。

そして、今も私たちを真剣に愛してくれる良二郎さんに感謝の気持ちは絶えません。

今の一番の悩み、それは良二郎さん、彼方に会えないこと。それを除けば悪阻(つわり)が少し辛いくらいです。

お義兄さんにはまだ何も連絡はしていないけれど、お米や野菜を持ってきてくれたの。さすが、彼方のお義兄さんね。

祖柄樫山の神話は聞いたことがあります。旅芸者をしていた時期にかじった程度ですが。神々に近い地であるならば、何か御加護でもあるよう、神社に寄ると良いでしょうね。

良二郎さん、彼方の御無事をここから祈っています。


紗矢

次回2025/1/6(月) 18:00~「和都歴450年1月 日輪での初日の出」を配信予定です。

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