5 師と弟子
多分西に犬の里があるっぽい。
気になるけど、「敵が来たぞー!」とか言われて殺されそうだな。怖いな。うん、やめておこう。
「なぁ、お主これからどうするのじゃ?この森から出るとしても、彷徨って餓死するか魔物にやられるかじゃろう。」
マジか。
「それは嫌です。死ぬとしたら、寿命で死ぬのがいいです。」
前世は、森の中で死んじゃったし、今世も森の中で死にかけた。
「そうか……ならば、わしの弟子になれ。生き方を教えてやろう。丁度暇だったしのぅ。お主は、生きていくための力がつけられる。わしは、話し相手ができる。一石二鳥じゃろ。どうじゃ?」
暇なんだ……。
でもいいかもしれない。
このままだと俺、絶対ゴブリンとかにやられそうだもんな。ゴブリンは嫌だな、うん。
「わかりました。これからよろしくお願いします。」
「良い選択じゃ。これからわしのことは、師匠と呼ぶのじゃ。里では、恐れ多いとか言って弟子になってくれる奴がおらんのじゃ。じゃから、お主がわしの初めての弟子じゃ。よろしくな。」
スト爺ちゃんの次は師匠か。
まぁ、いいけど。
こんな感じで俺は、師匠と出会い修行をすることとなった。
◇ ◇ ◇
数日後。
俺は今、倒れている。お腹が減ったとか、ゴブリンに襲われたとかではない。と言うか衣食住には困っていない。
修行でだ。
師匠は、すごくスパルタで休む時間をくれない。
最初のほうは平気だったのだ。
最初の授業では、師匠の経験をもとにした教えを頭に叩き込むことをやった。ざっくりまとめるとこんな感じ。
1、勝てる相手には積極的に倒してステータスを上げること。
2、勝てないと思った相手には全力で逃げる。
3、自分の実力と、限界を知っておけ。
このようなことが大事だと言われた。
次の授業では、知識量を上げろということで、毒草や薬草の見分け方や薬の作り方を教わった。
生きていくために、必要なことだと俺も思ったのでここまではすぐ覚えられた。
その次の授業は、実践だ。
火のおこし方や聞き耳を立てて水場や、敵(主に魔物だが)を見つける練習が多かった。大変で、コツを見付けるまでとても苦労した。たまにこっちが魔物に見つかって死にかけたりしたし。
そのまた次の授業は、体力作りと武器の使い方。俺は今、ここでつまずいている。
俺は体力と筋肉が付きにくいらしく、昔から運動が苦手だった。なのですぐ限界を迎え倒れるのだが、師匠は、
「まだじゃ。まだやれるのじゃ!! ……多分。」
とのことだ。
その言葉に報いるために頑張れば気絶をする。
そして、次の日には筋肉痛になるのだ。そのおかげで体力と筋肉が、付いてきた。しんどかったけど。たまに吐いたしね。
武器の使い方は「なかなかいいのぉ。」と師匠に褒められた。だが大剣や、剣と盾で戦うのは「センスがないのぅ」と言われ、それ以来使ったことはない。
でもそれ以外は、だいぶ良くなっている。今のところ得意なのは、暗殺者みたいなスタイルの2本の短剣を使った双短剣と2本の剣を使った双剣と普通に1本だけ使う剣と弓だ。
師匠からは、「なかなか多才じゃな。」と言われた。
この調子でどんどん技術力を上げていこうと思う。