4 最強に近いお爺さん
お爺さん泣き止まない。びっくりするほど泣き止まない。
どんだけ恐れられてんだよ、とツッコミを入れたい。
……とりあえず、自己紹介しないと。せっかくあいさつしたんだし。
でも本名言うのやだな。よし。本名は捨てよう。そこまで思い入れないしね。
そうだな…黒髪黒目だし、ブラック?
戦隊ものの変身後の名前みたいでいやだ。俺は日曜の朝放送しているやつの登場人物じゃない。
他には、シュヴァルツ、アーテル、ノワール、ネーロ、ネグロ、プレート、アスワド、メラン、ヘイ…イマイチだな…略してみるか…
ヴァルツ、アテル、ノル、ネロ、ネグ、プレト、アワド、メン、へ……どれでもいいや。と言うか全体的にダサいな。
こういうときは小さい頃よくやるやつ。
ど・れ・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・う・りの出番。
ノルだな。決定!
「あ、あの。お爺さん。俺、ノルっていうですけど、お爺さんの名前はなんていうんですか?」
とりあえず名前を聞いてみる。
「う、うぅ…な、名前を、き、聞いてきて来たのは、お主が初めてなのじゃ~!!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。」
ずっと泣いているな。このお爺さん。
疲れないのかな。特に喉が。
「それで名前は何ですか?」
改めて聞く。
泣き止んだお爺さんは、
「わしは、ストロンジント。スト爺ちゃんとでも呼んでくれ。
これでも、わしの種族の中では二、三番目の強いんじゃよ。すごいじゃろう?」
確かにすごいけど、
「本当ですか?」
「本当じゃよ。何なら、戦ってみるか?」
いやいや。俺戦うの苦手だし。
ゴブリンすら倒せないのに、どうやって倒せばいいんだよ。
また石でも投げればいいの?まぁ、ゴブリンに石投げても倒せなかったんだけどね………
負ける未来しか見えない。遠慮しておこう。
「遠慮します。俺弱いんで。」
「ん? 弱い? 気配通り? じゃあなんでこの森におるんじゃ? この森はフィーネアマネセルと言われている魔境じゃぞ。
Bランクか、Aランクの冒険者ぐらいじゃないと二日間生き残るのは難しいといわれておるのに。お主、運がいいのう。」
ここ、やばいところだったんだな……。
お爺さんの言う通り俺、運がいいなぁ。
……いや、運がいいどころじゃないだろ!!
豪運だよ!!めちゃくちゃ豪運だよ!!!!!
もしかしたら豪運より上かもしれない。
俺の運やべぇ。
すごく興奮してしまった。
それは置いといて。
「なんで、お爺「スト爺ちゃんと呼ぶんじゃ」……スト爺ちゃんは、こんなところにいるんですか?」
なんでスト爺ちゃんって呼んでほしんだろう?
謎だ。とても謎だ。
「この先に、わしの種族であるワーウルフの里があるんじゃ。わしは結構えらいほうじゃから、皆に気を遣わせてしまうんじゃよ。それが嫌で、少し離れたここに住んでるんじゃ。まぁ、里が危なくなったら助けに行くがのぅ。まぁ、100年にあるかないかぐらいじゃが。」
スト爺ちゃんは西のほうを向いてそう言った。
西のほうにあるのかな? 懐かしんでいるのかな? それにしても、何年ぐらいここに住んでるんだろう?
この3つを問いてみたい。
聞かないけど。