表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/40

第六話 オレは錬金術師で、薬師だ!!!

13時過ぎにもう一話投稿します。

「さっきのは何だったんですか? 」

「あぁ……あれは」


 言えない!

 超が付くほどに秘匿(ひとく)技術のことだから言えない!!!

 しかしあの状況をどう説明したことやら。


 さっきの騒動(そうどう)一因(いちいん)でもあるケルブは知らぬ(ぞん)ぜぬで前を歩いていた。

 何か新しい事にでも気付いたのか軽くスキップをしている。

 このままだと踊りそうだ。


 最前列を行くケルブについて行く形でオレ達は今下山(げざん)している。

 もうあの樹は光っていない。

 ケルブの言う通りあそこで採り(そこ)なったら一生(おが)めなかったかもしれないな。

 そう思うと感謝なのだが、素直に喜べない。


 せめて道を照らす者(ガイド)をやり過ごすのを手伝ってくれ!


「……不思議な光柱(こうちゅう)聖光(せいこう)の蒼白い光でもない。単に輝いているだけ」

「そしてケルブさんとアルケミナさんの食いつきよう」

「そもそも『陽光(ようこう)の大樹』って何ですか? 」

「……」


 言えない!

 誰か。助けてくれ!!!

 冷や汗を流しつつ、そう心の中で叫びながら黙秘(もくひ)(つらぬ)き通し山を降りた。


 ★


「! 血の臭い! 」


 あと少しで下山(げざん)完了という所でウルガスが、気付いた。

 瞬間全員が戦闘形態をとる。

 オレは後ろに下がった。


「……モンスター探知ディテクト・モンスター。モンスターじゃないみたい」

「いや。モンスターを倒した後かもしれない」


 モンスター探知ディテクト・モンスターは生きているモンスターに反応しても死んでいるモンスターには反応しない。

 もしかしたらモンスターとの戦闘で負傷したのかも。


「むう。ならば生命体探知(ディテクト・ライフ)


 ミスナが魔法を発動し、探知を広げた。

 瞳をつぶって集中している。

 するとピクンと体がはねた。


「……一人いた」

「! 」

(ふもと)。でも微弱。これは……厳しい」


 苦い顔をするミスナ。

 尻尾(しっぽ)も耳も()れている。


「行こう」


 ぽつりとオレはそう言う。


「しかし……」

「厳しくともまだ生きている。生きているのならばまだやりようはあるだろう」

「だけど犯罪者かも」

「ならば治した後で衛兵(えいへい)に突きつけるのみ! オレは錬金術師で――薬師だ!!! 行くぞ、ケルブ!!! 」


 そう言いオレは(ふもと)へ走った。


「全く世話の焼ける相棒だ」


 ★


 多くのモンスターの死骸(しがい)()ぎ去りながら(ふもと)まで降りると、そこには一人の騎士がいた。

 しかし周りに血だまりが出来ている。

 これはまずい。


「ケルブ! 」

「分かっている。だが」


 ああ、と(うなず)き騎士の(よろい)を脱ぎ()てる。


 デカッ!!!


 女だったか。

 だが関係ない。

 傷がある場所を探す。


「ケルブ。横腹(よこばら)をやられている。血管だ」

「まずは消毒。水球(ウォーター・ボール)


 ケルブが軽く傷口を(ステッキ)で叩くと水球を出る。

 そして傷口を洗う。

 ケルブに手を当て魔力を充填(じゅうてん)しながらその様子を見るがすぐに赤く染まった。

 まずいが……。


臓器増殖促進グロウス・スティミュラトリィ・オルガン


 (ステッキ)を払いのけると水球も移動し土に染み込む。


 すぐさま(ステッキ)を突き付けて次の魔法を発動した。

 すると血管が(ふさ)がり、皮膚が(ふさ)がる。

 これで安全、ではない。


吾輩(わがはい)は最後の仕上げと行こう。硬化付与エンチャント・ハードニング


 軽くコンコンと叩き、細密(さいみつ)な魔法操作で血管を、若干固くさせて破裂(はれつ)を防いだ。


「よくやった。後は任せろ」

「任せたよ。相棒」


 腰に手をやりアイテムバックから一本のハイ・スタミナ・ポーションを取り出す。

 それを口に含み――口で飲ませた。


 口を離して、胸に耳を当てる。

 心臓は、動いているな。

 よし。大丈夫そうだ。


「けほっ! けほっ! 」

「ふぅ……。息はあるようだ。これで一安心だろう」


 むせる彼女を見ると気が抜け腰を地面につけた。


「お疲れ様。これで君はまた一つ命を救った」

「師匠ほどじゃないよ」

「そりゃそうだ。年季(ねんき)が違う。それに君の師はエルフ族。もしも誰かと比較したいのならば同じ人族を選ぶべきだろう。ま、もっともそう言うことをしたいのならば、だがね」


 シルクハットを深く(かぶ)りつつこちらを見て言うケルブ。

 なんだかんだで手助けをしてくれるんだ。ありがたい。


「にしても……」

「??? 」

「いやなに。吾輩(わがはい)が記憶している限りだと、ファースト・キスだったような気がするが。もしかして君に今まで色恋沙汰(いろこいざた)が無かったのはそっちの趣味(しゅみ)だったからかい? 」

「なにを言う! オレはヘテロだ! 」

「顔を赤くするところを見るとどうもそう思えないのだが? 」

「だぁかぁらぁ! 違うって!!! 」


 そう怒鳴っていると山の方から音がする。

 すぐさま身構えその場を立つ。

 が、見えてきたのは道を照らす者(ガイド)だった。


「……治っている」

「嘘だろ」

「ありえない」

「どうやって」


 驚く彼女達を近くに寄せて説明しようとするが――その前にウルガスがミスナに、ガロがイリアに殴られ気絶した。


 あ。

 あの騎士、上半身裸のままだった。


 閑話休題(かんわきゅうだい)


 彼女に消毒済みの、少し軽い(よろい)(かぶ)せて説明した。


「わ、私の回復(ヒール)でもその状態からでは」

「なに、回復魔法だけが医療じゃないよ」

(ひび)く言葉です」


 だが実際問題、回復魔法の力は偉大(いだい)だ。即座に傷を治して回復させる。流石は神聖魔法。


 しかし今回は状況が違う。

 恐らく回復魔法で回復させても気付け用のハイ・スタミナ・ポーションが無ければ命はなかっただろう。

 こういう時はオレ達の出番だ。

 ハイ・スタミナ・ポーションには気付け以外に様々な効果がある。その中には名前の通り体力回復効果も十分含まれる。

 処置後なら、時間を待てば目覚めるだろう。


 (よろい)を上下させている彼女を見つつ観察。

 確か腹部をやられていたな。

 (よろい)にも傷があるが貫通(かんつう)している感じではない。

 恐らくだが(よろい)の上からやられたというよりかは隙間(すきま)をやられた感じだな。

 彼女を見ているとイリアがおずおずと口を開いた。


「それで後はどうするんですか? 」

「ん~考えてない! 」


 そう言った瞬間空気が冷めた。


「だからアルケミナは馬鹿なのだ」

「なにを! 」

「一旦店で目覚めるのを待ちましょう。そして目覚めた後に彼女のその後について聞くと良い」

「そっ! それだ! それがいい! 」


 やれやれと首を振る猫紳士。

 反論したいが、出来ない自分が(くや)しい。


「よし。帰るか」


 彼女を背負いオレ達は帰路(きろ)()いた。

お読みいただきありがとうございます。


面白ければ是非ブックマークへの登録や広告下にある★評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ