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白の妖  作者: 夜月シンヤ
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白の妖

初投稿ですがよろしくお願いします。



「あぁ・・・暑いぃ・・・」


高校1年の夏。お盆休みだからと母親の地元である田舎町へやって来て早2時間。

僕は暇だからと着いてきたことに心底後悔している。

実家はネット環境はもちろん、テレビすら置いていない。極めつけはスマホの充電器を忘れてくるという大失態を犯してしまった。

僕は充電器を買うのと暇つぶしのために徒歩30分の最寄りのコンビニへ向かっている。

日光が刺さるように僕の全身に照りつける。

(アイスも買ってこ・・・っと)

とにかくコンビニへ行きたい。両肩に広がるひまわり畑に目もくれず歩く。

・・・ はずだった。

背の高いひまわりの中に、白い何かが見える。

僕は思わず立ち止まって目を凝らす。


「え・・・人・・・?」


よく見ると手と帽子が分かる。でも、人にしてはありえないくらい身長が高い。2メートル近いひまわりよりも一際目立つ程だ。

その時


「!!」


目が合ってしまった。得体の知れない何かと。

僕は焦りと少しの恐怖で足早に立ち去る。


・・・笑顔に見えたのは気のせいだろう。



ーコンビニの帰り道。

しっかり充電器を買ってソーダ味の当たり付きアイスを食べながら家に向かうが、さっきの出来事が頭から離れない。

あのひまわり畑にまだいるのだろうか。

コンビニまで一本道だったので、嫌でも同じ道を通らなければならない。


ひまわり畑の道までやってきた。気になって自然と目を畑の方を見てしまう。


「あ・・・!」


アイスが手から地面へ逃げた。白いヤツはしっかりこっちを見ていたのだ。今度は顔がはっきり見える。

本能的に怖いと思ったのか、目を背けて走り出そうとした。


「・・・ねぇ!君!」


声がした方を振り返る。

さっきの白いヤツが手を振ってこちらに呼びかけている。その元気で優しい声に少し落ち着きを取り戻す。


「君!私が見えるの?」


(見えるのが珍しい?やっぱ人じゃないのかも・・・)

返して良いのか迷ったが


「み、見えるよ!」


興味本位で返事をした。


「あなたニンゲン君よね!ニンゲン君と喋ったのいつぶりかしら!」


快活な声で話してくる。僕は恐怖を忘れていた。

自ら白いヤツに近づいていく。向こうもこっちへ歩きだした。


「し・・・身長が・・・」


近づくにつれて分かる。洒落にならないくらい高い。そして、つばの広い麦わら帽子を被って、真っ白なワンピースを着ている。

ロングヘアーで、髪や瞳まで白い。

そして何より

(綺麗だ・・・)


「ねぇねぇ!」

「え、あ、はいっ!」


急に呼ばれて声が裏返る。


「ニンゲン君は名前、なんていうの?」

「僕は常磐。常磐日彩(ときわひいろ)。」

「トキワ君ね!初めまして!」


笑顔が眩しい。少し耳が熱くなる。昼間だから太陽が本気を出したんだろう。


「よ、よろしく・・・!」

「ぽぽぽ♪よろしくね!」


よろしくとは言ったものの、疑問は山ほどある。

でも、1番気になることが


「あの、あなたは何者なの?」

「そうねぇ・・・。ニンゲン君達からは『八尺様(はっしゃくさま)』なんて呼ばれてたかしら?」


・・・八尺様。たしか、ネット掲示板に書かれた架空の妖怪か何かだったはず。


(てことは・・・今妖怪と会話してる!?)


驚いたが、恐怖は無かった。あの容姿と声を聞いたら、怖さなんか残るはずがない。


「トキワ君も『八尺様』でも、『ハッシャク』でも、好きなように呼んでちょうだいね」

「う、うん・・・」

「あら、やっぱ変?まぁ、私名前とかないからなー。滅多にニンゲン君と話さないし、他に八尺様なんて存在も居ないしね」

「そっか・・・」


そう話す八尺様の顔は少し寂しそうに見えた。やっぱり、『八尺様』では、名前らしくなくて好きじゃない。


「あの、僕が好きなように呼んでいいんだよね」

「全然いいわよ?」

「じゃあ・・・」


ふと、周りのひまわりが目に止まる。

ひまわり・・・ヒマワリ・・・


「えと・・・『ヒマリ』なんてどうかな」

「名前付けてくれたの!?とっても素敵!」


喜んでくれたようで良かった。でも何故か、それよりも


「『ヒマリ』・・・うれしい・・・!」


本当に喜んでいるのが伝わる無邪気な顔が見られたのが僕は嬉しかった。


「これで私たちもう友達よね!」


高校1年の夏。僕は妖怪と友達になってしまった。



お読み下さりありがとうございます。


もっとヒマリを可愛くしていきたい...!

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