第十六話 〔出発〕 [SIDE ???]
ボクたちは関税所へ急いだ。
先程の彼女たちの話、王様が裏切り者だったという話。これが本当ならボクは危険な立場にいることとなる。
――王立騎士団第二分隊長
つまり王様の近衛隊、その隊長だ。
「フレイム、速度上げるよ。」
「ぐるるるるる」
使い魔のフレイムも王立騎士団の証のようなものだ。
少し早く走ったら関税所にたどり着いた。この港では一番立派な建物。一番豪華な建物だ。
迷わずその重厚な扉を開く。その中にいたのは気絶した騎士の格好をした一人の男。その男を無理矢理起こす。
「おい、王様の話を詳しく聞かせろ。」
「・・・王の話?」
「ああ、王様の話だ、裏切り者だとか言う。」
「何故その話を知っている・・・いや、お前は何者だ?」
「ボクか?
ボクは王立騎士団第二分隊長――――ラヴィー=ラングレーだ。」
関税所を静寂が包み込んだ。
[SIDE ジェーン]
「・・・流石高速帆船ね。」
昨日キャロルさんが言ったとおり、港を出て高速船で王城のあるミフェド大陸を目指す。
彼女の言ったとおりこの船は高速帆船。新型の船でかなりの速度が出る為急ぎの旅にはもってこいの船だ。
乗ったのは初めてではないんだがなぁ・・・慣れない。
「わぁ〜、早いですね〜。」
船の甲板でそう子供のようにはしゃいでいるのはシンシアちゃんだ。
ちなみにアリサは流石に疲れたのか部屋で休んでいる。何で疲れたのかは聞かないお約束だ。
そんな時だった。
「久しぶり。」
裏から声を掛けられた。
後ろにいたのは一人の少女。俺に似ている蒼い髪を後ろでひとつに分けた髪型。顔は俺と同じような顔。
ほかの誰でもない一騎当千ラヴィーだった。
その胸元にはひとつの紋章。王立騎士団のものだ。
「何の用、まさか暗殺?」
「本当はその用だったんだけどね。」
そう彼女は前置きし、
「王様の周辺で悪い噂を聞いて。裏切りだとかいう噂を。」
彼女は言い切った。
[SIDE ラヴィー]
ボクは急いだ。
先程関税所にいた騎士から聞いた話。
――王は民を殺す気だ。何故かは知らないがな。恐らく民といっても僻地の異端だろう。
そういった話。でも実際は違うと思う。
異端というのは魔女や異教徒などを指す。だけどジェーンさんたちは違った。だけど暗殺されそうになったんだ。
王様に話を聞くため。いや、ジェーンさん達に合うために船着場へと急いだ。
「高速帆船に乗ります。」
そう係員にいって船へと飛び乗る。
ボクは王立騎士団第二分隊長だ。船なら顔パスで乗れる。
『それでは、出航します。』
どうやらギリギリのようだ。
運がよかったのは感謝しておいて、彼女達を探すことにした。
「いないなぁ。」
この高速帆船。大変大きい。
暫く探してやっと見つけた。自分に良く似た蒼い長髪。背に負った長剣。間違いなく彼だ。
「久しぶり。」
ボクはそう声を掛けた。
[SIDE ジェーン]
彼女も知っていた、王の話。
やっぱり真実なんだろうか。
「なるほどね。」
お互いの持つ情報を交換すると彼女は納得したようにそう一言言った。
「それにしてもどうしたんだその紋章は?」
「ああ、ボクあの後、王立騎士団の入団試験にいったんだけどそこで第二分隊の隊長を倒しちゃって。いまじゃ隊長してるんだ。」
「ふうん。なるほど。」
凄い出世だ。
「じゃあ、ボクはこれから一緒に行動するから。」
「え?」
「でも承諾は貰ってるよ?」
その言葉に驚いた俺はキャロルさんのほうを向く。そこには・・・
『拒否権はナシ。』
そう目で言ってくる笑顔のキャロルさんがいた。