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第6話

第6話


フードを目深に被った黒装束姿の男二人と、セイランがセイランの執務室にて


黒装束姿の男1「かつてこの国の王が天女の支持を得て王となったように、お前が天女に選ばれた者として王都を攻める約束だったはずだが…女は手懐けれたのか?随分と乱暴に抱いているようにみえたが…?」

黒装束姿の男2「記憶を奪えば容易いと言ったのは其方ではないか?」


セイラン「手懐けるとは何だ?マリは元々僕の妻だ…」

セイラン「マリに選ばれなくとも、僕は先代の正妃の血を引き、天上の力に目覚めたのだ。側室でもなく貴賎の血を引くあの男が王である正当性は無くなったのだ!僕こそこの国の王だ!!」


セイランが、2人の男に苛立ち声を凄ませ睨みつけるも、男達は動じず冷静に声色を少しも変える事もなくセイランに話を続ける


黒装束の男1「お前の理屈などどうでもいい、問題は民がどう思うかだ。現王は卑しい身分の子ではあるが生まれながらに天上の力を持ち、天女を妻とし、王としての実績があり、多くの民に支持されている」

黒装束の男1「お前はどうだ?力には目覚めたが、気狂いの母を持ち、母の罪を問われず赦され、貧しい領主の養子となり、今はその跡を継ぎで辺境の1領主にすぎない」

黒装束の男2「現王の母殺しという罪をまだ幼いからという理由で赦され、生かされたお前が、天上の力に目覚めた事を理由に王道に基づき善政を敷いている現王を玉座から引きずり下ろすために立ち上がる…民はどちらに味方するだろうか?」


セイラン「黙れ!!母を侮辱する事は許さん!母は何も間違った事はしてはいない!!」


激高するセイランを無視して、男達は変わらず話を続けた


黒装束の男2「お前が王位に就くには、天女が…神の御使いが、お前を現王よりも王位に相応しいと宣旨て世に知らしめる必要がある…そうすれば天の威光の前に奴から離反し味方する者も現れるだろう」

黒装束の男2「女を早く懐柔しろ、我々はお前に力を貸す用意がある、いつでもお前に手を貸せるよう本国では既に手はずは整えている」

黒装束の男1「奴は手ごわい…我々の協力無くして王位につけると思うなよ」


セイラン「…」






黒髪は長く艶やかで、美しい白い肌に切れ長の瞳…潤んだ健康的な赤い唇…魅惑的な体つき

先王妃は、誰もが羨む美しさを持つ女性だった…


だが彼女は愛される事はなかった…

セイランの記憶の中に、彼の母が笑っている姿は1度もなかった。


先王…セイランの父は、数多の女性と関係を持ち子を成した好色男だったが、結局、氏族の娘で幼なじみであった母の姉を最期まで愛していた。

だが、その女性は父と結ばれる前に若くして病で亡くなり、それ以来先王は、見た目や性格など…どこか似た女性を見つけては関係を持ち、捨てるを繰り返し続けた…

父は母の姉が亡くなってから何か壊れてしまったのだ…とセイランは母から聞かされた。


セイランの母は、姉の代わりに正妃として嫁ぎ、母は父を愛し、愛されたいと父にとって良き妻、良き王妃であるよう努力した…


セイラン(母は父に深く愛されていた姉が心から羨ましかったのだと言っていた…

セイラン(僕が生まれ、母は父に姉の代わりとしても愛されない寂しさや悔しさをやがて僕で埋めるようになった…)

セイラン(父は死に際、母に手を取られながら、姉の名を呼んで亡くなったらしい…)


先王が病で亡くなり、最期まで愛されなかったセイランの母親は、自身の存在意義を息子であるセイランに見出した。


セイラン(父と母の間に生まれた…第一王位継承者であった僕の母である事が母の生きる意味となった…だが奴が生まれ母は狂ってしまった)


現王の母親は先王が行幸先で見つけた…金で一夜を共にしたまだ10代半ばという歳若い貧しい娼婦でセイランの母の姉に見た目が良く似た美しい女性であったという

王とはたった一夜限りの関係だったが娘は王の子を成し、その子供は生まれながらに天上の力を持っていた。


この国は天上の力を受け継いだ者が王位に就く定め…つまり生まれながら力を持たなかったセイランは正妃の息子でありながら第一王位継承者では無くなったのだ


セイランの母「貴方はどうして天上の力に目覚めなかったの?私は一体何のためにここにいるのかしら…」


母は涙を流しながら己の境遇を嘆き、毎日のように僕を責めた


セイラン(そして母は、僕を王位につかせようと奴を暗殺しようとした…)

セイラン(だが、母は奴を殺せなかった…奴をかばって、奴の母親が代わりに命を落とし…母とその家族は処刑され、まだ幼かった僕は赦され名前を変えて跡継ぎのいない貧しい領主の養子に迎えられた)


セイラン(天上の力に目覚めなかった僕が悪かったのだ…そう思って全てを諦めていたのだが…)


だがセイランはある日突然天上の力に目覚めた


セイラン(あの日の事は、よく覚えている…奴が戦場で傷を負い意識不明になったと報せがあった時だ…)

セイラン(最初は戦で死んだ奴の代わりに僕が代わりの王となりこの国を治めよという天からのお告げなのだと考えた…だが数日後、奴は生死の境を彷徨ったものの奇跡的に回復した…)


セイラン(その時確信したのだ!この力は持って生まれた僕の力なのだと…ただ目覚めるのが遅っただけだったのだと!)


セイラン(母は間違っていなかったのだ…母は僕が王家の力に目覚める確信があったのかもしれない…だからいつまでも力に目覚めない僕の不甲斐なさを攻め続けたのだと)

セイラン(奴は、僕の力が目覚めるまでの代理の王だったのだ…いや違う…奴は僕が力に目覚める可能性を全て排し、自ら王位についた…つまり奴は僕から王位を奪った簒奪者、逆賊ではないか)

セイラン(僕はこの国の正妃の息子、第一王位継承者、母の無念を晴らし、国を正しき姿に戻すため、奴を廃し、僕はこの国の王位につかなければならない!!)






黒装束の男2人との密会を終え、セイランがマリの部屋に戻ってくる

月夜に照らされた薄暗い廊下を歩きながらセイランは思い出す…黒装束の男達が、マリの支持を得なければ王位に就く事は難しい…マリを手懐けなければならないと言った事を。


セイラン(奴等は勘違いをしている…マリは誰のものでもない、最初から僕の妻だった。僕は王と偽りあの男に奪われた哀れなマリを救い出したのだ…本来の夫の元へ帰ってくる事ができたマリは喜び、僕に感謝しなければならない)


部屋の扉が少し空いており、マリと老女との会話が聞こえ、立ち止まるセイラン


老女「セイラン様は…王都を攻められるおつもりなのです」

老女「天女である…神の御使いであるマリ様にも選ばれた正統な王位継承者なのだと宣じるおつもりなのです」


ところどころしか聞き取る事はできなかったが、セイランは老女が裏切った事を確信する。

激しい怒りがこみ上げ、鬼の形相のように顔を歪ませるセイラン


セイラン(何のために記憶を奪ったと思うのだ!マリに嘘を吹き込むとは!!僕からマリを奪おうとする者は赦さない!!)


老女「いつか必ず助けが参ります…その時までこの老骨が命に代えてもお守り致します…」

マリ「貴方には感謝しています、どうかこれからも私のそばにいて支えてください」

老女「マリ様…私は罪人つみびとでございます、そのような…」


扉を勢いよく開き、二人の前で腰に刺していた刀を抜き取り、握りしめ、恐ろしい形相で老女を睨みつけるセイラン

激しく怒るセイランを見て話を聞かれていたのだと気づき、驚き怯える二人


セイラン「マリに何を話していた?」


自分が裏切っていた事をセイランに知られ、また激しく怒るセイランを見て、腰を抜かして座り込み、震える老女


老女「セイラン様…」

セイラン「どんな罪を犯したというのだ?言ってみろ!!」

老女「それは…」

セイラン「この裏切り者がっ!!!!」


一歩一歩近づき、老女の前にたどり着き立ち止まると、持っていた刀を勢いよく老女に向けて振り下ろす


マリ「やめて!!!」


マリはセイランを止めようとセイランの腕に飛びかかるも、制止むなしく、老女は肩から腹にかけて真っ二つに斬り裂かれ、倒れ伏したのだった…

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