第一話 【ツンデレのシンデレラ】
この度は作品に興味を持って頂きありがとうございます。
誤字・文章伝わりにくいなどあるかもしれませんがどうか最後までお付き合いください。
昔々、ある所にシンデレラという街娘が暮らしていました。
シンデレラは街の中央にある住宅街の大きな屋敷で住み込みで働いています。
「シンデレラ! 私の服ドレスどこにある~?」
シンデレラの名を大きな屋敷の中で呼んだのは、この屋敷の長女【シャルル】である。 シャルルはボサボサの長い赤髪に寝間着も着替えないままシンデレラを探し回っている。
「シンちゃんー! 今日の朝ご飯って何~?? もぅ私お腹ペコペコ!!」
さらにシンデレラの名を呼んだのはこの屋敷の次女【ペロ】である。 長女のシャルルと違い着替えを終え貴族に相応しいドレスを身に付け、肩にかかるほどの整えられた赤髪のアホ毛がユラユラと動いている。
「シンデレラさん。 すいませんが洗濯物をお願いしてもいいですか? タンスの中を見ると汚れている衣服があったので。」
さらにさらにシンデレラの名を呼んだのはこの屋敷の現主人でありシャルルとペロの母親である婦人。 赤髪を綺麗にまとめ上げ誰が見てもしっかりとしたご婦人と言える立ち振る舞いである。
「ん?」
「あれ~??」
「あら?」
寝室がある二階から長女のシャルルが、キッチンが設備されている左からペロが、そして衣類部屋がある右から婦人が屋敷の入口に入って目の前にある大きな階段で合流した。
「二人共おはよ~。 ねぇシンデレラ見なかった?」
「見てないよ~! というか丁度私もシンちゃん探してたの! お母様も見てないですか?」
「いいえ。 私もシンデレラさんを探していたものですから。」
三人は決して狭くない屋敷の中ではあるが、三人も別々の所から探しているというのに見つからないシンデレラが一体何処に行ったのか首を傾げて考えていると、中庭からドシーンッと何か大きなものが落ちたような音が屋敷の中にまで響いた。
「「「・・・まさか・・・」」」
シャルルは寝間着である為颯爽と走って音がなった中庭に向かい、ドレスであるペロと夫人はドレスの裾を上げて早足でシャルルの跡を追った。
「シンデレラ! 大丈夫!?」
軽装であった為ドレスを着ている二人より早く大きな音が聞こえた中庭に到着した。
「シャルルお姉さま~!! シンちゃんいた~?」
走りにくそうにドレスの裾を上げて遅れて中庭に来たペロは中庭の目の前で立ち止まるシャルルに呼びかけた。
「二人共何をしているの? シンデレラさんはいたんですか?」
先にシャルルが向かったことで走る事を中断した夫人は落ち着いた雰囲気で中庭の前で固まる娘二人に呼びかける。 だが娘二人は呼びかけても反応がなくただジッと中庭の入口の前で部屋を覗いているだけだった。
「一体何をしているの? 早く中庭に入りなさい。」
「それがお母様・・」
「今はちょっとやめてほうがいいかも・・ハハハ。」
シャルルは呆れたように中庭を眺め、ペロはアチャ~と手を額に置き苦笑いしている。 そんな二人を見て不可思議に思った夫人は娘二人の間に入って中庭を見ると、すぐに娘二人が何を見ていたのか理解できた。
「・・・一体何をしているのですか? シンデレラさん。」
シャルルとペロ、そして婦人が中庭で見たのは灰が入った袋をひっくり返して全身に被り真っ黒になっている1人の女性。 この屋敷で住み込みで働くシンデレラという少女だった。
「おはようございます奥様、シャルル様、ペロ様。」
◆◆◆
コンコンッとドアをノックする音が聞こえ眼鏡をかけて書類の仕事をしていた婦人は「どうぞ」と一声かけてペンを置いた。
「失礼します。」
部屋に入ってきたのは先程屋敷の中庭で盛大に灰を自分自身にぶちまけていたこの屋敷の召使いとして住み込みで雇っている少女、シンデレラだ。 灰を被っていたせいで全身真っ黒であったがさきほどすぐに風呂に入らせてきた。 腰まで隠れる金髪の髪を一括りにまとめ上げ動きやすい髪型に、服装は何度も使い込んで縫い合わせている召使い用の服を着ている。 表情はいつも無表情であるものの目が吊り上がっているせいか凛としつつ人を引き付けにくくしている。 短絡的に言えば綺麗な顔で気難しい顔をしているのだ。
「おはようございますシンデレラさん。 今朝はよく眠れた?」
「はい。 奥様やお嬢様方のおかげでぐっすりと。」
表情を変えず主人の質問に答えるシンデレラは深々と頭を下げた。
「それは良かったわ。 貴女はいつも仕事を頑張ってもらっているから体調には気をつけてくださいね。」
「はい。 承知致しました。」
淡々と表情を変えず答えるシンデレラに夫人は「それでね・・」と話を本題に切り替える。 本題とは勿論、何故中庭で灰を被ってしまっていたのかという話だ。
「花に巻こうとしてました。」
シンデレラは表情を変えずにそう答えた。
「え~と・・何故そのような事を?」
「その方がよろしいかと判断しましたので。」
何の悪気もなく答えるシンデレラに夫人はこめかみに手を当て小さく息を吐いた。
「この屋敷の花をすべて真っ黒なブラックフラワーにでもする気ですか? 花に灰を撒く事は止めてください。 いいですね?」
「かしこまりました。」
シンデレラは夫人に何か反発するわけもなく、ただ無表情に頭をさげて同意した。 夫人は同意を確認した事から元々の用事を言い渡してシンデレラを仕事に戻した。 するとすぐに部屋の外からシャルルとペロがシンデレラを呼ぶ声が聞こえてきた。
「まったく。 シンデレラさんにも困ったものです。」
婦人はそういうとすぐに自分の仕事に戻り黙々と自分の仕事に戻った。
◆◆◆
数日後。 今日は天気が良く気温も絶好の昼寝日和となった。 窓からは小鳥の声が聞こえ心地よい風が頬をなぞっていく。
(久しぶりに中庭で本でも読みましょうか。)
部屋で今日も黙々と仕事をしていた婦人は休憩がてらに中庭に出る事にした。 本棚に置いてある本を一冊取り出して一直線に中庭に向かう。 すると中庭にはすでに先客でシンデレラが気難しい顔で中庭の花を手入れしていた。
「お疲れ様シンデレラさん。」
「! お疲れ様です奥様。」
花を手入れしていた事で服は土で汚れていたの見て休憩がてらにシンデレラにお茶でも入れてきてもらおうと考えていたが、婦人はシンデレラの頬に黒い何かが付いている事に気が付いた。
ゆっくりとシンデレラの頬に触れてその黒いのが何なのかを確認する婦人はそれが何なのか瞬時に理解した。
「シンデレラさん・・これは一体どういう事ですか?」
シンデレラの頬についていた黒い汚れ。 それは先日シンデレラが全身を自分でぶっかけた灰だった。
「これは花には使用しないように。 私は貴女に確かにそう言いましたね?」
「・・・はい。」
シンデレラは表情を変えないで婦人の質問に答える。
「それなら何故、貴女の頬に灰が付いているの?」
「花に・・・撒いていました。」
「なんで?」
婦人から低い声が出る。 花に灰を撒くなと注意してシンデレラはそれに同意した。 それなのに屋敷の主人である婦人の言いつけを破って花に灰を撒いていた。 それが一体どういう意味なのか理解できていないわけではない。
「私の言いつけが守れないようなら屋敷から出て行ってもらいますよ?」
「・・・」
表情を変えないシンデレラに苛立ちさえ覚え始めた婦人は腕を組んで持っていた本を指で一定のリズムで叩く。 このまま何も答えず言いつけを守れないなら出て行ってもらおう。 婦人は頭の隅っこでそう考えていた。
「貴女が今手入れしてくれていた花は私の一番のお気に入りの花であるのはご存知ですね?」
「はい。」
「では、貴女は私のお気に入りの花だと理解しておきながら灰を撒いていた。 そう捉えていいのですね?」
「・・・はい。」
この質問の答えに婦人は決断した。 シンデレラには屋敷から出て行ってもらおうと。 主人のお気に入りの花にワザと灰を撒いていたのだ。 このまま簡単に許して屋敷に置いておくわけにはいかない。
「わかりました。 シンデレラさん。 貴女は今日限りで――」
「ちょ~~~~~とまっっったぁあああああ!!!」
中庭の中心辺りには大きな木が1本生えており、その木の上からバサバサと葉や枝を落としながら紅いドレスを身にまとった1人の少女が飛び降りて来た。
「ペロ!」
「ペロ様。」
婦人は唖然として木から飛びありてきた自分の娘を眺め、シンデレラはここでも表情を変えずに小さくお辞儀をした。
「お疲れシンちゃん~! お母様もお疲れ様で~す!」
「ぺ、ペロ! 貴女なんでこんな所に! 今は学校に行ってる筈じゃ!」
「あ・・ははは。 サボっちゃった!」
「さっ!!」
学校をサボり中庭の木に登って昼寝をしていたという自分の娘に婦人は長い溜息をついて花壇に座り込んだ。
「まったく・・貴女って人は・・」
「あははは! ごめんなさいお母様! あとでお叱りはしっかりと受けま~す!」
「当たり前です! あとで私の部屋に来なさい!」
「は~い!」
ペロは反省の色1つ見せないで笑顔で答えると「それよりも」と話を切り替えた。
「お母様。 シンちゃんの事何か勘違いしてない?」
「勘違い?」
一体何を勘違いしているというのか。 先日の忠告を無視してさらには主人である婦人のお気に入りの花に灰を撒いていた。 これは召使であるシンデレラが主人である婦人の事を舐めているとしかとらえられない行動である。 それの一体何が勘違いなのかと目で自分の娘に訴えるとペロは花壇の土を一握り摘まんで手のひらに乗せた。
「シンちゃんは別に花自体に灰を撒こうとしたわけじゃない。 花壇の土に灰を撒いていたんだよ!」
「花壇の・・土?」
それが一体何の意味が? ――と思い浮かべるとペロはさらに婦人がお気に入りであるという花に指をさす。
「この前までここの花壇に植えていた花は皆枯れそうな状態だったんだけどシンちゃんが土に灰を混ぜてから少しずつ元気を取り戻してたんだよ?」
「・・た、確かに。 前と比べると花が元気に見えますが・・・。 それと灰が一体何の意味があるというのですか?」
ペロは後ろで黙ってみていたシンデレラを「ホラ! ホラッ!」と婦人の前に突き出した説明を要求する。
「灰には植物などに栄養を与える効果があると言われています。 実際に庭師として仕事を生業をされている方々がされている方法なのです。 他にも害虫や環境に対しても抵抗力が強くなるのでちょっとした気温の変化や害虫などで枯れる事が少なくなるのです。」
シンデレラは淡々と無表情のまま自分が知る知識を語った。 その様子を婦人は驚いた様子で話を聞き、その様子をペロは満面の笑みで見ていた。
「そ、それじゃあ貴女が庭の花に灰を撒いていたのは・・」
「・・ここに咲かれている花は奥様の大切な思いである花だとペロ様からお聞きました。 それならば少しでも長く咲いて綺麗にと思い近くで庭師として働いている方からお話をお聞きしたのが灰でした。」
そう。 この召使の少女は最初っから主人を舐めているどころか少しでも婦人に喜んで頂けるように色々と考えて行動してくれていたのだ。
その善意ある少女に対して勘違いをしていた婦人は自分の事が少しずつ恥ずかしくなった。
「ごめんなさいシンデレラさん。 私、貴女に酷い事を・・」
「いいえ。 奥様が謝罪される事ではありません。 悪いのはすべて召使の私です。」
表情を変えないでそう言ったシンデレラに婦人は土の泥と灰が付いたシンデレラの手を強く握りしめる。 シンデレラは「汚れます。」と婦人の手を解こうとするが婦人は嫌でも放そうとしなかった。
「シンデレラさん。 ごめんなさい。 そして、私の為にありがとう。」
心からの言葉だった。 普段から家事や洗濯、そして料理もすべてこの広い屋敷を一人でまかせっきりであるシンデレラにいつも感謝している筈が自分の勘違いで感謝どころか屋敷から追い出そうとした。 そんな自分に反省して今回の事の謝罪、そして今までの気配りのお礼をどうしても伝えたかった。 ただいつも通りに目を見て言うのではなく、しっかりとお互いの目線が近い状態でお礼が言いたかった。
「・・・はい。 こちらこそありがとうございます。 奥様。」
その時のシンデレラの顔にペロは「キャー!」とウサギのように飛び跳ね、婦人は少し驚いた表情を見せるとフッと笑みをこぼした。
「貴女・・笑った方が素敵よ!」
「ありがとうございます。」
だがそれも一瞬ですぐにいつもの無表情で凛としたあのシンデレラに戻っていた。 その後シンデレラは婦人の手を拭く手ぬぐいを用意をする為屋敷の中へ早歩きで戻っていった。
「いや~いい物見れた! 久しぶりにシンちゃんのデレ顔を見れた!」
「デレ顔?」
婦人は娘のデレ顔というのが分からず首を傾げて聞き返した。
「ツンデレのデレですよ! つまり普段はツンケンとしている子がデレデレに喜んだり照れたりすることを【デレ】っていうんでよ!」
そのペロの説明に婦人はさらに首を傾げた。 確かに普段のシンデレラは笑顔を見せる事は少ないが別にツンケンとしているわけではない。 珍しく先ほどは微笑んだがそのデレという物になるのだろうかと。
婦人が何を思い考えているのか察したペロは日知刺し指を左右に揺らして仕方がないといった態度を取る。
「普段のシンちゃんは普段お母様が見ているような子じゃないってこと!」
「?」
いまいち娘が言っている事を理解できない婦人はとりあえず話をそこで切り上げた。 シンデレラが普段婦人の知らない一面があるとしても、彼女が自分の為に手入れをしてくれていた花をソッと撫で感謝した。
◆◆◆
土と灰の汚れが付いた婦人の手を拭くために手ぬぐいを用意をしていたシンデレラは一度周りをキョロキョロと見回して一括りにしていた金髪の長い髪を解いた。
「ふぅ。 疲れる。」
目が隠れそうな前髪を濡れた手で上げ鏡に映った自分の顔を見る。
「ったくホント。 何も知識がないおばさんは嫌になるわ。 説明するのもめんどくさい。」
手に持った手ぬぐいを絞りながら先ほど自分に対して苛立ちの態度をとった婦人を思い出す。
「いつもいつも私に仕事を押し付けて。 これだけ広い屋敷なのだからもっと召使雇いなさいよあのダメ婦人!」
花壇の土に灰を撒いたのは普段「花に元気がないわね~」と呟く婦人にイライラしていたからだ。 それだけ心配ならもっと花を上手く咲かせる方法を調べろって話。 ただジッと自然に花が元気になってくれるのを待つだけで何もしない婦人を見ていられなくなり、街の花屋にわざわざ買い出しついでに花の手入れ方法を聞いてきたのだ。
『灰を土に混ぜるとほとんどの植物は元気になるよ。』
『嘘つけ。』
花屋で働く店員の言葉を最初は疑ったが、花屋はこの辺りで庭師の仕事をしている事もあって一応信じる事にしたのだ。 そうして先日さっそく実践してみようと思い灰を集めたらこの屋敷の何処かで住み着いている野良猫に邪魔をされ自分に灰を被るという悲惨を生んだのだ。
「あのバカ猫! 今度見かけたら絶対に追い返してやる!!」
記憶を遡れば遡るほど苛立つ記憶が蘇って来て手ぬぐいを絞る力が強くなり手ぬぐいがブチブチと破れるがシンデレラはそれに気づかない。
『ありがとう。』
苛立ちが最高潮となった所で先ほどの婦人の感謝の言葉がフッと頭を過った。 するとさっきまでの苛立ちは何処に行ったのか代わりにこそばゆい感覚がシンデレラの頬を高揚させていく。
「べっ! 別にあんたみたいなバカ婦人の為じゃないし! いつまでも暗い顔されたら私が嫌なだけだし! 一人で変な勘違いしてんじゃないってあのババァ!!」
更には自分を助けるように間に入って来たペロの事も思い出す。 あの時ペロがシンデレラと婦人の間に入らなければシンデレラは今頃解雇されていただろう。
「あのアホ毛も余計な事してくるんじゃないっての! まぁ別に感謝しなくもないんだけどもね!!」
しばらくそんな悪態を鏡に映る自分に言いながらでいると外から婦人とペロがシンデレラを呼ぶ声が聞こえて来た。 シンデレラは素早く髪を一括りに結い、頬を叩いて普段の顔に戻る。
「さぁ。 行くわよ私。」
いつもの私を見せらば必ず解雇される。 だから私は普段の私を偽りこの屋敷で働く召使として暮らしていく。 それが彼女の信念であり覚悟である。
いつもの私を見せらば必ず解雇される。 だから私は普段の私を偽りこの屋敷で働く召使として暮らしていく。 それが彼女の信念であり覚悟である。
何故か? 破れていた手ぬぐいを新しい手ぬぐいに変えて中庭にいるペロと婦人のお茶も用意して中庭に戻ってきたシンデレラは鬼のように叱りつけている婦人に涙を流して叱られているペロを目撃する。
そんなペロは助けを乞うようにシンデレラに視線を送ると、シンデレラは表情は変えず心の中で「めんどくさいなぁ~」と悪態をつく。
「奥様、ペロ様。 お茶のご用意ができました。」
仕方なく助けに入る事にしたシンデレラは二人の間に入りお茶の準備を始めた。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
書きながら思っていたのですが主人公のシンデレラのこの性格って【ツンデレ】であっているのか不安ではありますがこんな感じで進んで行こうと考えています。
どうか次回もよろしくお願い致します。




