マリィ=パンプキン2
ホヅミとリリィは店主に客室へと案内され、一室に腰を下ろした。着替えも用意してもらい今はそれを着用している。衣服はいつでも出かけられるようにと洗濯を済ませていた。
「やっぱりテレビとかないんよね」
「え? てれ……何だって?」
「ううん、何でもない」
旅館とは言えどここは異世界。ホヅミの元いた世界に存在している様な旅館の一室とは違って娯楽物はほとんどない。本や卓球、カラオケも存在すらしていないのだ。
「何もないよね」
「ん? ……もしかして、元の世界のこと考えてたの?」
「えっ!? あの話信じてくれてたの?」
日本という世界をリリィには話していた。ただ突拍子もない空想物語だと思われているものだとホヅミは思い込んでいた。
「信じるよ……ボクはまだ魔法の勉強は中途半端だけどさ、全く異なる別の世界から何かを呼び寄せるっていう召喚魔法の類だと思うんだよね」
「召喚魔法?」
「もしかしたら、ホヅミんや………あのシュウって人? 誰かに呼ばれたんじゃないかって……」
もしリリィの言っていることが正しければ、自分やシュウの称号に勇者というものがあった事から推測するに、やはり魔王の様な者を倒してくれという事なのかもしれない。ただエルフの村の村長から聞いた話では、魔王が誕生したかどうかは定かでないように思えた。
「それはさておき……どうせこの世界には何もなくてつまらないなぁって思ってたんでしょ? そこで提案。この世界のちょっとした遊びをしない?」
「この世界の遊び?」
「ホヅミんのいた日本ってとこよりは劣るかもだけどね」
ホヅミは興味津々にリリィの話を聞く。リリィの言う遊びというのはこの世界の伝統とも言える指遊びだった。
一つ目の指遊びは指転ばしと言われるもの。互いに両手を使う遊びである。まず両手の人差し指と中指を膝の前で立てる。両手の人差し指と中指の指掌紋がどちらか一方でも地面から離れれば、指が離れた方の手は敗退となる。両手の指を転ばせた方が勝ちである。使うのは指だけ。もちろん足を使えば反則となる。互いに先攻後攻を決めた後、人差し指中指を一歩ずつ歩かせる。歩けるのは互いの手番に片手一歩のみである。反則ルールとしては指一本の太さ以上を進ませない、指を滑らせるなどがある。
「どう? 分かった?」
「うん! この世界にもそういう遊びがあるんだね!」
「そう! そこでもうひとつ、これには先攻後攻を決める必要があってね……」
日本では主に先攻後攻を決めるにはジャンケンと呼ばれる遊びが用いられるが、そのジャンケンと似た様な遊びがこの世界にも存在していた。それは立て指と呼ばれるもの。"たてた指"の掛け声でお互いに指を立てて前に出す。立てられる指の数は一から五まであり、同じ数の指は立てることが出来ない。立てた指の数の和が奇数であれば勝負開始。その時の立てた指の数が多い方が勝ち。同じ数だと引き分け。勝敗が決まるまで繰り返される。
「「たってたっゆびっ!」」「「たってたっゆびっ!」」「「たってたっゆびっ!」」
リリィは一、四、三と順に出してきて、ホヅミは五、二、三、と出した。残りリリィの手札は二と五。ホヅミは一と四である。奇数になってしまえばリリィの勝ち。ホヅミが勝つには残り二手を引き分けでやり過ごし再戦をする他ない。こういった頭を使ったり相手との心の読み合いが肝となる遊びである。
「「たってたっゆびっ!」」
リリィが五を出してホヅミは四を出した。奇数となり勝負開始。立てた指の数が多かったリリィの勝利である。
「やった!!」
「うわー! 負けたぁ〜」
指転ばしでのリリィは先攻。お互いに向き合って正座すると、膝の前に両手を持ってきて人差し指と中指を地面に立てる。リリィから一歩、そしてホヅミも一歩。一歩一歩と徐々に互いの両手は距離を詰めていく。
「ここで注意しなくちゃいけないのは、歩かせる距離だよね。最初に歩く距離を抑えてこれだけしか歩けないと思わせておいて急に大きく歩いて相手の指を転ばせるのもありだし」
「わわっ!」
リリィの人差し指と中指の歩く間隔に凡そを定めてたその思い込みが砕かれて、あっという間にホヅミの右手はバランスを崩す。
「あーもう! 届かないぃー!」
「まあボクは慣れてるから指の長さとか見たら大体分かっちゃうんだよね。どれだけ進めるか」
「良いもーん。じゃあちょっとしか歩かないから」
すっかり膨れ面のホヅミに対して悠々とした表情でリリィは指一本分だけ歩を進める。そしてホヅミも指一本進めるとリリィの中指がぐんと伸びてホヅミの指を転ばした。
「はい、セートルメン」
「ずるい! 大人気ない! 手加減くらいしてよ〜」
「はははっ! ゲームなんだし、全力でしないとつまんないよ」
笑うリリィに向けて闘志を燃やしたホヅミは再度リリィに挑戦をした。やはりこの異世界の住人であるリリィにとってはもはや慣れたゲームであり、初心者のホヅミはなかなかリリィを打ち負かす事が出来ない。他のゲームはないかとリリィに訊ねると他の遊びを教えてくれた。指遊びや手遊び、魔法に準えた実戦的な判断力を育むためのフィジカルなエクササイズなどなど色々ある様だが、ホヅミにはなかなか軍配が上がらない。
「ねぇ待って! もっとさ、ほんわかしたのってないの?!」
「ほんわか? ……ん〜ホンワカ? 例えば?」
「え?? ……例えばって……………にらめっこ……とか……」
急な返しに詰まり、ふと出てきたのがにらめっこであった。リリィの紹介する遊びはどれも頭を使うアクションのあるものばかりで、ホヅミも疲れてきてしまっている。ここで日本の遊びの出番なのかもしれない。
「どうするの?」
「これはね、お互い変顔をして笑っちゃった方が負けなの。いくよ? にーらめっこしーましょっ、あっぷっぷ!」
ホヅミは頬皮を摘んで目をにょろ字に延ばす。
「どぅ? どぅ?」
「……………………」
リリィはホヅミの奇抜な行動に、思考が停止する。
「お……おもひろくにゃかった??」
「…………ぷっ」
日本屈指のにらめっこがリリィに通用したのか不安でじっとリリィの顔を観察していると、吹き出すと同時に仄かに唇が緩む。
「ふふ………ふふふ……あはははははっ!!!」
リリィは大きく笑い転げる。腹を抱えて地面をドンドンと拳で叩いて目からは笑い涙が漏れている。
「な、何急にっっっひひひっ、ぎゃあーっはっはっはっはっ!!」
「え……はは……み、見よ! これぞ日本の力じゃ! ほれほれ」
顔の皮膚を横に引っ張ったり、鼻や瞼を持ち上げたりと次々に変顔を作っていくとリリィはますます大笑い。
「ぎゃあああーっっはっはっはっはっ!!!!! ボ、ボクの顔で……ひゃっはっはっはっはっ!!」
捩れのたうち回るリリィ。ホヅミの圧勝であった。
「えっへん」
リリィとホヅミの二人は程々にお互いの世界の遊びを堪能すると、今後についての話し合いを行った。現状ではリリィがホヅミの体を用いて、その才覚で魔物達と渡り合っているという事である。体はホヅミと同じ。どれだけ才覚があろうとも、それに付随した体でなければいずれ倒せる魔物に限界が来てしまうであろう。それだけでなく、魔力量も体で違ってしまう。ではどうするか。リリィの体を持っているホヅミが魔法を覚えるのが一番であった。
「下位氷魔法!」
ホヅミが両手を前に翳して魔法を唱える。もちろんそれだけでは出ない。リリィのアドバイス通りに魔力を体から絞り出す様にして、両手の前には魔力を冷気に変換させるイメージをする。
「もっと心を落ち着かせて! 空気中の水分に働きかけて凍りつかせるつもりで!」
「……下位氷魔法!」
ホヅミの両手の前には小さな氷が生まれる。
「出来た!」
「うん! でももうちょっと! ホヅミんならもっと出来る!」
リリィは少し考える。どうすればもっと完璧な氷魔法を生み出す事が出来るのか。リリィは火炎魔法が得意だが、氷魔法も使用する事が出来る。ただ得意とまで至らなかったのは、火炎魔法の方が魔力消費量や魔力還元率、威力や制御がとことん精度が良かったからだ。他にも精神質の適合性や魔法数式をしっかりと理解していればより魔法の組立の完成度が高い魔法が放てるだろう。しかしホヅミはこの世界の人間ではない。魔法学など微塵も知らないのだ。だがそれでも、そんな問題を覆してしまえるほどの魔力量がリリィの体には備わっている。
「あ……そうだ」
リリィが氷魔法を取得する際に教えを乞うたのは母マリィだ。マリィの得意とする魔法は氷魔法。そんなマリィから教わった、氷魔法初心者の大事な肝所。
「ホヅミん。花を思い浮かべて」
「花?……」
言われてホヅミはよく道端で見かけるピンク色のガーベラを思い浮かべた。
「その花は枯れることなく、時が止まったようにいつまでもその綺麗な姿は綻びることもない」
普段には似つかわしくない言葉を滔々《とうとう》と、リリィは何かを思い出しながら述べていく。
「永遠を生み出す……さあ!」
「…………下位氷魔法!」
バキバキバキ、バキン!
ホヅミの眼前には疎らな大きさの氷塊、そして地面や壁は一瞬にして凍りついてしまっていた。壁に至っては罅の様なものが入り叩けば簡単に砕けてしまいそうな程だ。つま先で足元前の触りを確かめるとつるつる滑る。そして今の魔法で部屋の気温がかなりと下がってしまった様だった。威力も申し分ない。まさに背筋まで凍ってしまうほどだ。
「や……やったね! ホヅミん!」
「うん! ………でも………」
二人は改めて部屋の惨状を見る。
「とりあえずボクの火炎魔法で溶かすよ。下位火炎魔法!」
リリィの火炎魔法によって、凍りついた部屋は徐々に溶かされていく。凍った部屋や氷塊が全て溶けるまで二人は山上に位置する気温の下がった部屋の中で、しばらく凍える肩を互いに抱き寄せあって過ごすのであった。
「「ガクガクブルブルッ」」
魔法講義ちゃん第10弾!!
パチパチパチパチ〜
ぱふぱふぱふ〜
あっ、今のぱふぅはラッパのぱふぅでボインのぱふぅじゃありませんよぉ?
さあて! 今回の魔法は、下位魔鎧魔法!!
ブーブー。そんなの前回の盾とどう違うんだよー
ブーブー。そんなの簡単に想像がついちまうぜー
と、お思いのあなた。
…………
…………
言い返す言葉もありません全くその通りでございます。
って言うとでも思ったか! へっっっっ(´・∀・`)ヘッ
この魔鎧魔法は身に纏う魔法なんです!
お分かりですか?
普通の鎧とは違って着用するものでなく、体全体を分厚い膜で覆えるものなんですよ!!
ですので鎧は鎧でも、隙間がない鎧!
便利でしょ? 便利でしょ?
これぞ!
世界最強の雨がっぱです!!!
え?
使い方違くねって?
そもそも魔法を戦いに利用するなんて物騒な考えがね、違うんですよ。
平和に生きましょ平和に(●︎´▽︎`●︎)
ま、作者はカオスがお好みですが?
カオスをかけて食うお好み焼きはエコノミー!!なんつって
…………
…………
ヘルプミー!!!!!!!





