第13話 オキニンの島、ズリム
生真面目で熱いズリムの族長。
相手が王族だろうと、言いたいことは言う!
3つ目の島は、ズリム。
港から見える岬には、城砦のような城がそびえ立ち、そこから見下ろす眼下には、町が広がっている。
「ズリムは、昔も今も変わらぬオキニンの産地。紫の色どりこそが我が島の誇り」
そう言うズリムの族長は、歓迎式典が終わると、オキニンの畑にデューン達を案内した。ペーリアとは対照的に、緑の中に色鮮やかな紫の絨毯が広がる。
「族長、シデオールからオキニンの畑を焼き払うよう命令が出ていることは知っているか?」
「ポルトレシアのオキニンを焼き払うのはウール教徒の聖地シデオールの勝手な考え。大方ラール教徒のオキニン畑を焼き払い、ウール教徒のオキニン産業を守ろうという魂胆なのだろう。この美しい光景を見ても、デューン男爵は今すぐ畑を焼き払えと申されるおつもりか?」
族長の視線は、デューンの返答次第で戦闘辞さずの強い、真剣なものだった。
「俺は、王妃の名代としてここに来た。オキニンを焼き払う命令をしに来たわけではない。俺は、ウール教徒の肩も、ラール教徒の肩も持つ気はない。勘違いするな」
「大変失礼なことを申し上げました。しかし、デューン男爵。これだけは覚えておいていただきたい。良質なオキニンを栽培できるのがポルトレシアの島々。オキニン畑が広がる美しい光景は我々の誇りなのです。どうか、この誇りを、首都のエゴで踏みにじろうとすることだけはやめていただきたい」
デューンは、族長の視線から逃れ、オキニンの畑の方を見た。
「これだけ見事なオキニンの畑があるのなら、そこから作られるオキーニュの味も見事なんだろうな」
「おっしゃるとおり」
「俺は、うまいオキーニュが飲めればいい。ポルトレシアのオキーニュはそれぞれの島ごとで風味が違うというじゃないか。メッシュでは、今まで飲んだ中で最高のオキーニュをご馳走になってな。シデオールではチャッカーばかり飲んでいたが、今ではオキーニュの魅力に取りつかれてしまった」
族長の厳しい顔に笑顔が浮かんだ。
「メッシュのオキーニュなど、ズリムのオキーニュに比べれば、水のようなもの。ぜひ、ズリム産のオキーニュの味を楽しんでいっていただこう」
それを聞いて、思わずニヤけるデューン。
「デューン男爵・・・・」
「分かっている。節度を保つよ。ここには魔法の秘薬はないんだからな」
ローディンの小言が出る前に、デューンは先んじて宣言した。




