第12話 オキーニュの島、メッシュ
オキーニュつながりは、生涯の友。
後半戦のカギを握る、豪快なメッシュの族長登場!
翌日、デューンらはペーリアを後にし、2番目の島メッシュに向かった。
メッシュは、七島のうちで最も高い山を抱えている。その山から流れ出た清水は良質なオキーニュを作るのに最適。そのため、街のあちこちに大きな醸造所が作られていた。
「メッシュは、七島随一のオキーニュ醸造所を抱えております。まずは、その味を堪能あれ」
歓迎式典で座に座った途端、族長の勧めでまずは一杯目のオキーニュ。ダイアンが一口含んで毒見すると、ようやくデューンの番。
「いかが?」
族長の、人懐こい笑顔に釣られついつい、
「もう一杯よろしいでしょうか?」
デューンの言葉が、王妃の名代だったのはここまで。
そのあまりのうまさに、ついつい手が出る、足が出る。
王妃の名代はどこへやら。オキーニュに飲まれてヘロヘロ状態のデューン。
「族長!このオキーニュという飲み物は素晴らしいぞ!俺は、もっぱらチャッカー党だったが、これからはオキーニュ党に鞍替えだ!」
「王妃の名代に、そこまでお褒め頂けるとは光栄のしたりでございます」
そういう族長の顔も赤ら顔だ。
「デューン男爵、そろそろオキーニュの方は遠慮された方が・・・・」
「何を言う、ローディン!こんなに素晴らしいオキーニュを前にして遠慮だと?それはオキーニュに失礼だろ!お前も飲め!」
「いやいや、わたしは・・・・それより、毒見役のダイアンのことが心配・・・・」
そう言って、ダイアンの方を見ると、顔色は全然変わっていない。
「ローディン様、わたしは大丈夫です。オキーニュであれば、2樽飲んでも酔いません」
ローディンは、その一言であきらめた。
飲めや歌えの大宴会は、真夜中まで続いた。
その翌朝、デューンは頭痛とともに目を覚ました。
「デューン様、ご機嫌はいかが?」
「・・・・・んー、なぜか知らんが、すべてが黄色く見えるな」
全くけろりとしているダイアンにデューンは、喉をからしながら答える。
そこへ族長が入ってきた。
「デューン男爵、いやー、昨夜は久しぶりに楽しい思いをさせてもらった。あれだけの量を平らげる男子は、ポルトレシア広しと言えどそうはおりませんぞ」
「ありがたきお褒めの言葉。されど、俺は族長ほど強くない。何やら、風景が全て黄色に・・・・」
「黄色・・・・・」
族長は笑いだした。
「デューン男爵、そんなときにとっておきの飲み物が」
「もう、オキーニュはいらない」
「オキーニュではございません」
そう言うと、族長はお付きの者に何かを取りに行かせた。
「我が一族に代々伝わる魔法の飲み物。一口含めばきっと驚かれますぞ」
お付きの者が持ってきた瓶から、カップに赤茶色の液体を注いだ。
ダイアンが、その飲み物を毒見しようと手を伸ばす。
それを制す族長。
「これはすべての酔いを醒ます魔法の秘薬。夢のようでもあり、悪夢のようでもある幻想から自分自身を取り戻す。酔いに苦しむ者以外飲んでも毒なのか薬なのかは分かりはせん」
そういうと、族長自ら一口飲んだ。
「ぷう!ホー!これさえ、飲めば黄色は元の色に一気に戻りますぞ。よろしいか、飲んだら、ぷう、ホーと一気に息を吐き出されよ、デューン男爵」
そう言うと、残りをデューン男爵に渡す族長。
「これを飲めば元の色を取り戻すんだな?」
尋ねるデューンにうなづく族長。
それを見て、カップを一気に飲み干すデューン。
その次の瞬間、デューンは目を見開き、ベッドに向かって飛んだ。
「デューン男爵!ぷう、ホーじゃ!」
族長の声に、一度ベッドに横たわったデューンは立ち上がり、一気に息を吐いた。
「ぷう、ホー!」
その後、ゆっくりと肩で息をする。
「どうじゃな?周りの色は?」
族長に言われて、周りを見るデューン。
「・・・・黄色くない。元に戻った」
「気分はいかが?」
「大丈夫だ。さっきまでのひどい頭痛もどこかに行ってしまった」
「どうやら、効き目はドンピシャのようじゃな。味はいかがだった?」
「味も何も・・・・苦みと、酸っぱさと、痺れと、痛みと・・・。ありとあらゆる災厄が口の中で爆発したようだった」
「うまい表現じゃな。今度、この飲み物を提供する時は、そう紹介することにしよう」
えらい思いをしたデューンだったが、この秘薬のおかげで、2日酔いでダウンすることなく、無事次の島へ向かうことができた。




