第11話 コカの島、ペーリア
ポルトレシア七島の表敬訪問。
一つ目の島で、早速の重大問題発覚!
「これから向かうペーリアはコカの栽培で富を得た島です。一面に広がるコカの黄色い花畑に驚かれるでしょう」
ダイアンが説明する。
今ここは帆船の上。
デューンのボトスチームも一緒だ。
ポルトレシア七島の表敬訪問で、デューン達の船は最初の逗留地であるペーリアに向かっていた。
ペーリアは、ポールトに一番近い、七島の一番南にある島だ。今度の航海では、海賊に狙われぬよう、ウールクラール海軍の艦船が2隻随行している。
ペーリアの港は、緑の丘陵が続く入り江の奥にある。
滅多に入港しない巨大帆船が3隻も来たのだから、島の住民たちも港に殺到する。
デューン男爵たちが下船すると歓声がわき、港近くの広場に案内されたデューン男爵ら一行は、歓迎式典を受けることになった。式典と言っても、ポールトの式典と似たり寄ったり。デューン男爵は欠伸をこらえるのに必死だ。
「今夜は我が屋敷に泊まってもらいますが、その前に、まずペーリア自慢の土地をご覧にいれましょう」
族長は、そう言って、デューン男爵ら一行を馬車に案内した。内陸に馬車を飛ばすこと2時間。ペーリアの中央にあるぺラル山地は裾野が広く、その裾野から荒々しい岩場が屹立する。馬車はその裾野を一望できる小高い丘にとまった。
「どうぞご覧ください。ペーリアが誇る絶景を」
デューンが降りると、目の前は一面、目に映える黄色に染まった。所々に緑の森があるものの、目に見える限り黄色の光景が広がる。
「あの黄色いものは・・・」
「コカの畑です」
「コカの?」
「ポルトレシアといえば、オキニンの産地というのが有名ですが、このペーリアは、土壌がオキニンに合わず、ほとんど栽培できなかった。他の島がオキニンで潤っていても、このペーリアだけは貧しかったのです。だが、このコカはどこでも育つ。今はこの美しい黄色のおかげで、ようやく他の島と同じ程度に豊かになったのです」
デューンは、ローディンと顔を見合わせた。
「・・・・・どう思う?」
夜。
族長の屋敷で仰仰しい夕食を終え、部屋に案内されたデューンは、ローディンを部屋に引き入れて聞いた。
「おそらく、ポルトレシアの人々は、コカのことをシデオールで高額取引されている薬としか教えられていない。中毒で苦しみ、しまいには人を廃人にしてしまう悪魔の植物であると知っていれば、我々にあんな自慢をすることなどあり得ませんから」
「あれだけ広大な畑があればどれだけのコカがとれる?」
「あれだけのコカがあれば、ウールクラール中に相当数のコカ中毒者を発生させることが可能でしょう」
「焼き払うのは、オキニンの畑じゃなく、コカの畑だろう」
「しかし、ペーリアにとっては、唯一島を豊かに出来る産業なのです。コカの畑を簡単に焼き払うことなどできません。このことについては慎重を期すべきと心得ます。不用意な言動は慎むようにして下さい」




