表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/326

第13話 大空の王

大空の王って、誰のこと?‥‥お前か!

 どのくらいそうしていたろう。

 ロイメルは、手のひらの中の躍動と、細く高い小鳥の鳴き声で目を覚ました。

 ロイメルは、いつの間にか眠っていたのだ。

 目を覚ますのを待っていたかのように、ロイメルの掌から末っ子が飛び立つ。

 それと同時に、ロイメルの周りにいた4人の兄弟たちが末っ子の後を追うように飛び立っていった。

 青空を舞う五つの小さな影。

 それを見た瞬間、ロイメルは全身に力がみなぎるのを感じた。

 全く無力な赤ん坊から、一気に大人に成長したかのような感覚。生まれ変わりというものを体感できるとしたらこんな感じなのだろう。そう思わせるような不思議な感覚だった。

 いつの間にか全身の痛みはなくなり、右側に体を動かすと寝返りを打つことも出来た。ロイメルは左手をついて、上半身を起き上がらせた。

「大空の王」

 突然、背後で声がする。

 振り返ると、そこにカシーネが立っていた。

 ロイメルは、よろよろと立ち上がった。

「・・・・・カシーネ。今何て?」

「大空の王」

「・・・・俺のことか?」

 うなづくカシーネ。

 眠りから覚めたばかりで、まだ頭の中に靄がかかったような状態のロイメルの言葉は片言だ。

「・・・・・どうしてここに?」

「デューン様とあなたの試合を見に行ったの」

「試合?ああ、あの負け試合か・・・・」

「試合後、デューン様がどうしてもロイメルに伝えたいことがあるからとあなたを探していたら、会場から一人出てきて突然走り出したあなたを発見した」

「・・・・見ていたのか・・・・」

「ええ。何ごとが起こったのかと思ったわ。とにかくあなたを捕まえようと、その後を追ったの。途中で見失ったけど、ようやくあなたを見つけた時、あなたは・・・・鳥と心を交わしていた」

「俺が・・・・鳥と?」

「鳥を操る者は、自由を制するもの。エルデラ38民族の中でも、大空を舞う鳥を操れる者はいない。わたしが知る限り、カリウェル族の始祖が、大鷲バールと心通わせたのが最後。それから大空の王は長らく不在だった。空を自由に舞う鳥を制することができる者、それこそが、大空の王になれる」

「・・・・・それで俺のことを大空の王と・・・・」

「大空の王は、地上の動物とは心通わすことができない。なぜなら、地上の王にはなりえないから」

「俺が、動物たちと心通わせることができなかったのは、俺が大空の王だったからということ・・・・・?」

 まだ、カシーネの言葉を信じ切れず、この現実を飲みこめないロイメル。だが、頭の中にかかった靄は、すっきりと晴れてきた。

「うぬぼれるなよ、大空の王」

 その声にロイメルが顔を上げると、そこにデューンが立っていた。

「お前が誇りを感じるもの、情熱の全てを傾けられるもの、それの半分はこれだったんだな。お前は、動物と心通わせることができなくても、それを求め続けていた。ボトスは、叶わぬ欲求で渇ききった心を満たすものだったんだ。だが、それで満たされるのは心の半分。大空の王となって、これでお前の心は完全に満たされた。俺は、お前の試合を全て見てきた。俺達にあって、お前たちにないものが何かを知っている。かつてのお前なら、こう言ったろう。男爵のお前にあって、伯爵の俺にないものなどないと。今でもそう言うか?」

「俺は、シデオールのボトスを変革するための起爆剤になりたい。その起爆剤の導火線になるものなら何でもいい。どうか、デューンチームにあって、俺達にないものを教えてほしい」

「タダでという訳にはいかない。お前が大空の王なら、たっぷりのお礼をもらえそうだが、それは今じゃない。その時が来るまで、指南代はお預けだ」

 ロイメルは、笑ってうなづいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ