第2話 じゅくじゅく坊ちゃん、思いを果たす
天然少女にそんなこと言ったらやばいぞ。あっ、ついに、やっぱり‥‥!
「・・・・・と、いう訳です」
とローディン。
「・・・・・王妃のキモ入りじゃ、俺が今さらどうこう言うことじゃないだろ」
とデューン。
目の前には、メイド服を着たカシーネが立っている。
どうも、さっきからもぞもぞしている。
「どうした?トイレか?」
お下劣なデューンの一言。
早速のいやがらせ開始か?
上からの押し付けとなると、いやがらせも1・5倍というところか。
「いえ・・・・服がきつくて・・・・」
たしかに、豊かな胸は広い襟周りから飛び出しそうで極めて危険な状態だ。
北の厳しい自然の中成長したカシーネのボディラインは、通常のメイド服では全然覆いきれない。少しでも前かがみになればパンツ丸見えだ。まるでアダルトロ○ゲームの主人公のようなありさま。
「急な採用だったんで、合う物がないんだ。今、大急ぎで作らせているところだ。しばらくの間我慢してくれ」
ローディンが申し訳なさそうに言う。
「動きづらいのが気になりますが、裸でやれと言われないだけましです」
ローディンは思わずデューンの方を見た。
「この仕事は、希望してもなかなかつくことができない仕事だ。ぜひ、その辺のことを自覚して頑張ってほしい」
ローディンはやれやれという雰囲気で、カシーネに言った。
早速、最初の難関。
その夜の夕食で、毒見の仕事からスタートだ。
給仕が、カシーネの前に出す。
カシーネは、目の前に出された物をぺろりと平らげた。
「カシーネ、俺の食べる分は?」
カシーネは、「あっ」という表情になり、デューンを見た。
給仕が、カラの皿を下げながら、
「大丈夫です。いずれはこういうこともあろうかと、メニューは常に多めに作ってありますので」
カシーネはそれを聞いて笑顔になった。給仕はその笑顔にうなづいて答える。
カシーネは、その笑顔をデューンに向けた。だが、その笑顔もデューンの笑顔まで呼び起こすことはできなかった。
再び同じ物が出される。
カシーネは、見た目と匂いを嗅ぎ、次に盛りつけた物を、パクリと一口。小さな塊を選んで、慎重に食材を口にする。
「大丈夫です。どうぞお召し上がりください」
そう言いながら、皿をデューンの方に差し出す。
デューンは、カシーネの方を見たまま、皿を引き寄せると、ようやく夕食にありついた。
そして、風呂の時間だ。
デューンは、正面をじっと見ながら湯船につかっている。
「・・・・・・なぜ、お前が入っている?」
デューンの視線の先には、浴衣を羽織ったままカシーネが湯船につかっている。
「なぜ?と言いますと・・・・?」
逆に聞き返すカシーネ。
「いいか、メイドは、出口近くで控えていればいいんだ。俺に何かあった時だけ、湯船に入ればいい。一緒にお湯に入っていて、2人同時にどうにかなったら、いったい誰が助けに来てくれるんだ?」
「そうなんですね。なぜ、浴衣を着たままお風呂に入るのか不思議だったんです。出口で控えているのなら、裸のままという訳にはいきませんものね」
「いいか、王宮に中に裸でする仕事なんてない・・・・・少しは考えろ」
「話してもらえなければ、王宮のルールは難しすぎて分かりません。あまりにも常識から外れているので」
「それなら、お前は言われたことだけすればいい。何も考えるな。それくらい、お前にだってできるだろ」
「・・・・・・分かりました」
そう言うと、濡れた浴衣を体の曲線にぴったりと張り付けたまま、カシーネは湯船から上がった。
デューンは、チラチラとカシーネを見ながら、
「・・・・・これじゃ裸とそう変わらん」
そう言うと、湯船に頭から沈んだ。
そして、例の朝の儀式だ。
まあ、食事も風呂もそんな感じだったんだから、やめておけばよかった。
だが、デューンは、いつもどおりに排尿の後、しまうべきものをしまわずに、
「触れよ」
デューンがそう言うと、カシーネは何の抵抗もなく、デューンのしまうべきモノに触れた。
「わっ!離せ!」
デューンは、便器から離れようとして体勢を崩した。
「危ない!」
その瞬間、カシーネは倒れそうになったデューンを支えようとして、思いきりモノを掴んでしまった。
「カッ・・・・・!離せ、カシーネ!・・・・・いてて・・・・!」
そこで、カシーネはようやくモノを離した。カシーネの握力はボトス選手並みだった。
デューンは、しまうべきモノを慌ててしまうと、
「なぜ、掴んだ!」
「なぜ?触れと言ったのはデューン様ではありませんか」
「本当に触る奴がいるか!」
「それなら、なぜ触れと?」
「お前は言われればなんでもするのか?」
「言われたことだけすればいい、何も考えるな、と言ったのはデューン様ではありませんか」
そこへ、ローディンがやってきた。
「どうしたんです?」
「・・・・・いや、なんでも・・・・」
デューンが誤魔化そうとすると、
「触れと言われたので触ったら、なぜ触るのかと急に怒り出したんです」
とカシーネが正直に報告する。
ローディンは、デューンの股間を見て尋ねる。
「・・・・触られたんですか?」
デューンは、恥ずかしさでローディンの方を見られなかった。
「ようやく希望がかなえられたわけですが、感想は?」
デューンは、ローディンの言葉に答えず、無言のままその場を去った。
ローディンは、カシーネに向き直った。
「ああいうモノは触り慣れているか?」
「生まれて初めて触りました」
「抵抗は感じなかったのか?」
「デューン様の命令でしたので」
ローディンはため息をついた。
「デューン男爵は、時々メイドにいやがらせをする。それを真に受けちゃだめだ。王宮の中のルールは、社会の常識とは違う。だが、道理や倫理観は王宮だろうとどこだろうと変わらない。カシーネにも、自分なりの道理や倫理があるだろう。それがさっきの行為を許すのならいい。だが、もし許しがたい行為なら、わたしに言え。しかるべく対応する」
「自分なりの道理にかなわなければ、時には断ってもいいということですか?」
「そうだ」
「分かりました。もし、デューン様が道理をわきまえていなければ、ローディン様の手は煩わせません。わたしが直接言います」
そういうと、カシーネはにこやかな表情になり、寝室から出ていった。




