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第6話 青い爪の伝説

おいおい、魔族とか混血とか、なんか変なのが出てきたぞ。

 デューンは設計士の件を断るため、東の塔にマーレヌノアを訪ねた。マーレヌノアのキツイ性格から、ローディンを連れて行くとひと悶着ありそうなので、デューンは一人で来ていた。

「・・・・そうですか。設計士を見つけられたのであれば、ドロンの必要はありませんね」

「せっかくの御好意を無下にしてしまい申し訳ありません」

 マーレヌノアからどんな御小言があるかと思ったが、あっさり承諾してくれたのでデューンはひと安心した。

「それよりも、心配なことがあります」

「心配なこと?」

「あなたのメイドのことです」

「メイド?ナターシャのことですか?」

「あの娘の爪に注意しなさい」

「爪?」

「デールメティリアは、魔族と人間が戦った最後の土地。その混乱の中、魔族と人間の混血が生まれたのです」

「混血?」

「混血は大きく2つに分かれました。生き血を吸う者と切り裂く者。生き血を吸う者は牙が、切り裂く者には鋭い爪が生えました。しかし、人間たちは混血を見つけ出し、虐殺していきました。混血は絶滅したと言われています」

「まだ、絶滅していないのですか」

「牙を持つ者は、月夜の夜になると牙が生え、人の生き血を吸うことで、その若さを永遠に保ちます。そして、爪を持つ者は、その感情が高ぶると爪が青く染まるのです。青く染まった爪は、強靭な刃と同じ。その爪に襲われたら、逃げる以外生き残る道はありません」

「ナターシャがその混血のどちらかだと?」

「わたしは見ました」

「見た?何を?」

「ナターシャの爪です。わたしと言いあった時、彼女の爪は青く染まっていました」

「・・・・ナターシャが・・・・・」

「爪が青いからと混血と決めつけることはできません。でもお気をつけなさい。何かあれば力になります。いつでも相談に来なさい」

 デューンは、マーレヌノアに一礼すると、東の塔を辞した。


 食事の時間。

 ミロディの時の同様、ナターシャはデューンの正面に座り、見た目、匂いを確認し、出された食べ物を吟味する。

 ナターシャは、その食べ物に問題がないと食べ物の皿をデューンの方に差し出す。デューンはそれを受け取り食べる。

 デューンは、食べ物を口に含みながら、差しだした時のナターシャの手に注目した。その爪の色を。

 だが、その爪の色は健康的なピンク色。

 その爪に、青は全く混じっていなかった。


「明日には、設計士がきます。部屋は用意しました。時に、次のボトスの試合はいつですか?」

 ローディンが聞く。

「明後日だ」

「では、その際に最前列の席をお取り下さい。アルギユヌスとの約束ですので」

「アルギユヌス?」

「設計士の名です。彼にとって、デューン男爵チームのボトスを最前列で見ることは、何よりの楽しみなのです」

 デューンの表情は、うれしさを隠しきれない。半分ニヤけながら、

「・・・・分かった。手配させよう」

 ローディンは、デューンのその一言を聞き、お辞儀をして出て行こうとした。

「ローディン」

 デューンが呼び止める。

「お前は、歴史にも造詣が深いと言うが、デールメティリアにいたと言う魔族と人間の混血のことを知っているか?」

「マーレとダーレですか」

「マーレとダーレ?」

「マーレは、牙を持つ者。人の生き血を吸う。ダーレは切り裂く者。鋭い爪ですべてを引き裂く。しかし、それは、単なる伝説です。実在したかもしれませんが、今は絶滅しています」

「もし、絶滅していなかったら?」

 ローディンは振り返り、デューンと向き合った。

「マーレとダーレに狙われたら、助かる道はありません。かつて、混血種族を制圧したカリギャンという狩猟民族は今は存在しない。奴らを倒せる者はいないということです」


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