一日の大切さ
「ディネ、ルル、お早う」
階段を降りれば、何時もの光景が広がってる
筈、だったが、昨日殻少し変わった事を忘れていた
家の大半が他の地区に移動中なので、今此処にいるのは極小数の仲間のみ
昨日当番だったルルと言う娼婦
最近見習いを卒業したばかりの新人なのだが、私は彼女と良く話す
特に好みが合うとかそういう事がある訳でもないのだが、唯、彼女と居ると和むのだ
そしてまだこの時間は当番じゃなくとも皆家に居る
☪︎⋆。˚✩ 起床時間 . 午前3時
姉である私は責任と皆の気持ちを背負わなければいけない
昨日の様な寝坊等以ての外なのだ
クソ程に長い髪を上で束ね“仕事の時間よ、支度なさい”一声かける
すると先程迄寝惚けて居た子らも目を覚ましたように動き出す
家にとって姉の言葉とは、それ程迄に尊重されるものなのだ
一言一言が皆の思いを背負い、それだけの責任を負っている
どれだけ家にとって姉が大切かと簡潔に表す楢ば、例えば家の中の誰かが人様を殺めたとしよう、するとその娼婦は罪に問われず、家の天辺である姉が罪に問われる
...有り得ないであろうこんな事も、此処では有りうるのだ
姉はデメリットも大きいがメリットも大きい
情報が直ぐに届くのだ
例えば昨日隣の地区の娼婦が、また一人JACKにやられた、とか
後は些細な情報もこまめに入る
そして何時ぞやに聞いた事件はこうだ
“○○地区娼婦 . 濡れ衣死刑”
...とても好かれた姉がいたらしい
優しくて人を思いやる、とても素晴らしい娼婦だったと、そう聞いている
だがある日、そんな印象が一変する
その姉は家の一人に暴力を振るった、唯の躾のつもりだったのだろう
“頬を平手打ちしただけだ”
だのに皆気が狂ったのだと勘違いし、混乱し始めた
城で王が狂ったの楢周りはどうなる?冷静でいられるだろうか
いいや、狂うと言いきれる
娼婦だってそうだ、姉が狂えば皆狂う
家の一人が、人を殺めた
大騒ぎになった
だが何故か、殺した張本人は咎められはしなかった
その家の皆の言い分はこうだ
“姉様がこの子を狂わせたからです、だからこの子は殺してしまったんです”
そしてその家の娼婦は処刑された
その姉は処刑の直前“御免なさい、○○”一言残して逝った
勿論姉の死を嘆き“こんなのはきっとおかしい”と訴える奴もいる
その場合は家から追い出されるか省けにされるか
普通の人が聞いたらそんな事きっとおかしいと思う筈だ
だが、もう一度言おう、之が娼婦の規則だ
私やライムは、そんな死と隣合わせの世界で生きてきた
何故ライムが命の危機にあったのか、
...“忌み子に付いて産まれた双子の妹は消しておくべきだ”と
また狂った言い伝えがあるからだ
親が私達を貧民街(此処)に捨てて行ったのは、もしかするとせめてもの温情だったのかもしれない
だなんて、今更考える
長く考え込んだ様なので、気分を切り替えて洗面所に向かう
顔を洗ってから薄めの化粧をして、服を着替えて外に出る
☪︎⋆。˚✩ 行動開始 午前五時
辺りが明るくなり始め、太陽が顔を出し始める頃
カツンと靴音を鳴らして、行って来ます、の合図
今日の当番が窓から初々しくにこりと笑ッた
今日は確か貴族から予約が入っていたんだ
此処からは近いけれど...。
そも〃こんな身なりの娼婦に“屋敷へ来い”だなんてどうかして居る
確か男爵家を継いで最近美人を娶ったばかりでは無かったか
馬車で堂々と行くのも気が引けるし、かと言って徒歩で行けば確実に身なりを気にされ門番に止められる
悩んだ挙句、結局徒歩で行く事にした
貴族の屋敷というのは本当に何時見ても飽きない
“俺は金持ちだろう”と自慢して建てた感じが目に見えて居て笑えてくる
そして何故か“門番は居なかった”
こんな金持ち感溢れる屋敷なんだから何時泥棒に入られても可笑しくは無いだろうに
嗚呼、また、面倒くさい
何故か眠気が襲ってきて、私は_________
_________其こはとても暗かった
暗くて、深くて、其れは私を襲う
“ ライラ ! ”
近い何処かで誰かが私を呼ぶ
“誰か”だなんて分かっていた
この声はあの人だ
“ お母様 ! ”
偶に分かるんだ、感じる
“嗚呼、之は夢なんだ”ッて
夢は、自分の身の回りの出来事、そして、願望
之は確実に私の願望だ
優しかった母を独り占めしたかった
“ ライラは今日もいい子ね ”
やめろ
やめろ母上
それは私に向けた言葉じゃないだろう
私の中の本当の記憶は...
“ ライムは本当にいい子ね ”
私にそんな言葉を吐くな
散々蔑んだ癖に
私を捨てた癖に
之は私の想像、望んでいない望み
矛盾過ぎて辛いんだ
母上が大好きだから、そんな事言わないでいて欲しい
言って欲しいと願った自分が憎いよ
母上、母上、御免なさい、ライムを守れませんでした
貴方と父上の愛の証を私は守れませんでした
夢の中のライムは笑っていた
母上に愛されて嬉しそうに
夢の中の母上は綺麗だった
“二人の子供”を愛して
夢の中の私は泣いていた
母上に愛されなかった此自分と、妹を守れなかった自分を憎んで
夢の中、遠くで誰かが私達を見つめていた
それが誰かは分からなかった
“誰か”には顔が無かったのだ
不思議と恐ろしいとは思わず、私は誰かの方へ走ってった
誰かは私を抱き留めて、嬉しそうに笑う
母上じゃない、父上じゃない、ライムじゃない
他人に愛されて居る様な幻覚を覚えた
何故だか泣けてきて、又意識が遠のいて行く
だから聞こえなかった、見えなかった
夢の中の母上が、私の後ろで泣いていた事を
“御免なさい、二人とも”
まだ私は知らない
母上が“子供の一人”愛さず
二人を捨てたのか
知っているつもりでいた
“私が忌み子だから、魔女の子だから”
そんな理由で括って(くくって)居た
私は未だ知らない
家族の裏側を
母上が捨てた本当の理由を