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ある娼婦と化け物の話  作者: 檸檬型来良
4/7

魔女の子


 「死に、神...」


喉は、もう動かないと思っていた

もしかしたらかき切られたのでは、と、あの短い時間の中で思った程だ

目の前にいるのは人間、それとも...それ以外の“何か”なのか

自分には分からないし知る術も持っていなかった

名前も何もわからないので、今は“それ”と書いておこう

それは私の言葉に首を傾げて


 「死神?へへッ、俺がァ?」


声は仮面(ますく)をしているからなのか莎もッており、少し聞きずらかったが、何となく言っている事くらいは分かッた

明るい声に驚く素振りを見せると、私が死神だと思っていたそれは“俺にそんな大層な名前着いてたんだなァ”と、またケラケラと笑い出した


 「いやァ怖がるのは分かるがヨ。卦度(けど)俺、あの歌声が気に入ったんだ。もう1回歌っちゃくれねェ(かな)~」


よく見るとそれは背が高く、人間にすればモデルのような体型のだった

私の身長は英国では低い150

とすると、それは2m程、は、あると思う。


 「ありャ、やっぱシ駄目ヵ ネ?」


私は切り裂きジャックを殺すんだぞ、これくらいで怯えるな

そう何度も言い聞かせる

決心が着くも着かないもない、なにか返さなければ失礼だ

もしかしたら幻覚かもしれないし変装(コスプレ)してるだけかもしれない


 「いいわよ、だけどそれ脱ぎなさい、目立つでしょう」


 「ソレ...ッ、てフードと仮面(ますく)(かな)?」


付け足すように“鎌とかも、危ないでしょう”と言う

黒いフードに鎌だなんて、悪目立ちすぎる

一昔前にオカルトが流行り、まだ街には名残があるのだ

と言うか現にまだそう言う危ない(やから)が居る時代、変装(コスプレ)だとしてもこんな服装は避けるべきだ...


 「やァすまねェ...こりゃ何方(どちら)も外せねェンだ...

鎌くらいなら消せるが ネ ...」


それは鎌に触れると、何か呪文のようなものを唱え始めた

最初こそ何やってんだ頭飛んだのか此奴(こいつ)状態だったのだが、鎌から煙が出てきたりして流石に疑うのにも無理が出始める

一分くらい経つと、あったはずの鎌は“無くなっていた”

空いた口が塞がらずどうしたらいいのかも分からなかった

魔法?魔術?ドッキリ?マジシャン?

否、どれも此処(ここ)(まで)込んだ(こんだ)トリック(など)仕掛け(しかけ)ない


 「誰しも譲れねェモンッでのがあるだろ?俺にとっちゃ(これ)が譲れねェモンなのよ、御免(ごめん)ネ」


“これ”と指したのは顔をつけてある仮面と身につけているフードの事らしかった

そしてまたそれは会話を笑ッて流す

何処と無くライムと面影が重なって腹が立った


 「ねぇ貴方、」


“人様の会話で笑い流すなんて失礼よ”、そう言おうとして止めた

言いたいの事は山々だったけれど、今回の(これ)は殺された妹と面影が重なったと言う私の私情に過ぎない

ならばせめて睨んでやろうと仮面の中の瞳を探す


 「ン?俺ノ顔が見てェ、ッてか?」


此処で正直にYESと頷くのにも気が引けて、だが嘘をつくというわけにもいかなかったので


 「かもしれないわね、貴方は珍しいから」


強がって嘲笑うように言えば、“お嬢さんのその瞳と髪も、俺ァ随分と珍しいと思うがね”私の一番求めていない返事が帰ってきた

...ライムは、英国人らしく金髪碧眼、私は、_________


“虹色の瞳に白い髪、俺ァ好きだがな”


 「ヱ...」


本当は何処かで分かっていた

この言葉が“全て嘘である事位”

それでも喜びたかった

人から貰った“好き”ッて言葉を大事にしかった

ライムでさえもこの髪の色や瞳の事は口に出さず、家の皆は哀れんでさえいた

だのに今になってこんな言葉を貰えるだなんて、嗚呼、世界は思ッた以上に残酷だ


 「...貴方は知っている?白い髪は、この瞳の色は、童話に書かれた“魔女”の見た目そのものなのよ。この瞳を持つものは世界から嫌われた“忌み子”。この髪を持つものは魔女の子供。“東の醜き魔女”の子供よ。」


その昔、彼の魔女は魔法で国を滅ぼそうとした

その魔女は、王直属の部下だったらし

つまりは“反逆”である

多くの仲間を集め王に対抗し、最終的には毒を盛って殺害した

それはそれは大層立派な王だったと言う

国民は魔女等に怒り、魔女対国民の全面戦争が始まる

次々に殺されていくのは国民の方だ

魔女に対して為す術を何も持っていなかった

魔法、魔術、様々なもので魔女は国民を支配し、城下は激しい混乱に陥る

だがそんな魔女もまた一人の人間であり、食べ物を食べなければ生きてゆく事を出来ない

人々を洗脳し畑を作らせ、金銭も自分達に捧げさせた

そんなある日、“一番従順だった筈の洗脳者に、魔女が一人殺された”

魔女も国民も之は一体どういう事だと焦る

事実、“一部の人間には魔術が効かない”と言う事が判明した

魔女の混乱で彼女等の力は落ち、国民の状況が有利に立つ

魔女を殺せる“魔女に対する反逆者”が増え、日に日に魔女は減って行った

そして行われた“魔女狩り”である

王を殺したと言う筆頭であった魔女は捕まらなかった

もう何年も過ぎており、何処かで死んでいるのか、それとも身を潜めて暮らしているのか、子供を作り幸せに居るのか、...誰にも分かりはしなかったが、一つだけ確かな事があると言う


その魔女は、アルビノ...白髪だったと言う


そして魔女として認められるには、自らの瞳に薬を流し込み、虹色に輝かせる事

それは片方でも認められるが、もし失敗すれば体は腐敗し目は見えなくなり、3日以内に死んでゆく

忌み子の印である虹色の瞳と、筆頭であった“東の醜き魔女”の子孫と示す白髪を持った子供は“次の反逆者”になりうる為、産まれて直ぐに殺さなければならない...


 「俺だッて莫迦じゃァねェ、それ位知ってるサ。魔女狩りは本当にあった、だからその童話も全て本当なんじゃねェかッて話も出てンだろ?」


“そうよ、”と小さく肯定すれば


 「だから?」


それからは予想外の答えが帰ってきた

“例え手前が()の魔女ノ子供だッたとして、今反逆してる訳じゃねェだロ?”


 「私は魔女の子供よ」


再度確認をとるように言い放った

(また)それは笑ッて流すと思っていたのだが、今回は笑いはしなかった

嗚呼、やっと引いてくれるか、と思っていたのだが、それの答えは思っていたのとはまた違った


 「手前は忌み子“かもしれねェ”。ならば俺は“本当の”忌み子さ」


意味が分からずに首を傾げると、今度は笑い飛ばされた

“冗談だヨ”と言って

冗談じゃなかったら、貴方は一体何者か

いずれ知る事になる“それ”の存在は、私の人生を大きく揺さぶる事になる

私は未だ知らなかった。“それ”の恐ろしさを


 「おっと、すまねェ時間だ、又機会があったら会おうゼ」


教会の大時計を見れば、それは焦り、闇の中に消えていく

不思議だ、“居た痕跡が何処にも無い”のだから

偶然か必然か、何方にせよこの出会いは、今後を大きく変えることには違いなかった








時は魔女狩りが終わった頃。


後に語り継がれることになるこの話は、


娼婦と化け物の話。














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