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ある娼婦と化け物の話  作者: 檸檬型来良
2/7

喪失


今日は仕事の予定がなく、だが何をする訳でもないので

只そこに座って客を待っている、それだけの事だ

当たり障りのない何時もの時間

空を見あげれば真っ青であんなにも素敵なのに、どうしても手が届かない

それが何処か切なくもあるけれど、自分は捨てられたのだから仕方ない

妹がいるのだ、大丈夫、切なくなんてない、そう言い聞かせるのが毎日の日課

嗚呼素晴らしい青空よ、美しい女神よ、どうか今日も妹を守ってくれ、


 「ライラ ? 珍 しい 名前 だな ~ 」


静かに黙っていると、遠くから聞こえる音にも又敏感だ

何故自分の名を知っている?

声からして男か、客だろうか


 「(いや...)」




スコットランドヤード_________?!



ドクン。



心臓が嫌な音を立てた

おい、やめろ

なんでこんな音を立てるんだ

まるで何かを察したように

まるで何かを怯えるように



ドクン



 「いやあ、娼婦ッて大体名前が付いてないから探すの大変なんだけど...」


“お宅が有名で助かったよ”蔑むような声だった

娼婦を軽蔑するような眼差しだった

法律があるから、秩序が有るから守っているだけで

娼婦何かとは関わり逢いたくないんだ、と

『私達に』告げるようだった

その続きなんて手に取るうように分かるんだ、だから言わないで


 「お宅んとこのライムさん、切り裂きジャックにやられたらしいんだ」



_________




切り裂きジャック娼婦を狙う

喉元を刃物で切り裂いて、臓物を抉り出す

それも極めて美しい手際で

その為犯人は医者なのではと言う意見もしばしば、

医者に芸術家、...出てくる職は後を絶たない

何故娼婦を狙うのか、あくまでも政府の考えだが、答えはこうだ

“娼婦から産まれ、捨てられた子供の仕返しではないだろうか”

娼婦に恨みを持ち、これ以上自分のような者を産まないために娼婦をこの世から消す

...切り裂きジャックがロンドンに現れて3ヶ月

政府に悪戯の手紙が届くようになった

“偽のJACK誕生の悲劇”である

自分がジャックだと名乗り人を殺す

だが、その偽は大体すぐに見つかるのだ

何故なら、“偽は本物に殺されるから”




_________



耳が焼けるように痛かった

目元が焦げるように熱かった

喉が破裂しそうだった

誰かの悲鳴が聞こえた

立てなくなってしゃがみ込んだ

誰だろうと思った


嗚呼、自分の悲鳴だった



 「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!」



ライム、お前って妹は、昔は凄く優しかったンだよ

お姉様お姉様ッて懐いてさ、可愛かった

今は今は凄い好きだッた、変わらず好きだッた

ほんのりと姉思いなんだよ、今も昔も変わらずさ

最後の家族、大切にしようッて、ずっと思ってた



御免、姉ちゃん守ってやれなかった









大好きだよ










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