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監獄のなかで  作者: さばいわし
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パノプティコン型超実験監獄

「んっ...もう朝...?」

まぶたの裏に朝の光がさしこむ。

まだ眠気の覚めないまま眩しい太陽の光を受け入れた私の目にありえないものが映った。嘘かと思ってついさっきまで寝ていたところを確認すると、なんとも無機質なやわらかな温かみのないコンクリートだった。嘘ではなかった。私、如月杏は 監獄 『パノプティコン』の中にいた。




もう一度あたりを見回す。右も左も天井も灰色に染まったコンクリートで囲まれている。後ろ側には小さな穴があるがきっと私の身長では届かないだろう。目の前には大きな鉄格子があり、パノプティコン特有の大きな看守塔が良く見えている。この無機質な部屋にあるものといったら小さな水道と鏡とトイレとぺらぺらの敷布団だけ。私は寝相が悪いからきっと布団から出てしまったのだろう。

「あれ...なんか変な服着てるっ...」

鏡を見てみると私は青ボーダーの無駄に長いワンピースのようなものを着ていた。昨日はちゃんとパジャマを着て布団にくるまって寝たはずなのに...

「ん...なんでそもそも私はここにいるんだろう?私なにか悪いことでもしたのかな?」

そんな自問自答を繰り返していると隣の部屋と思われるところから声が聞こえた。コンクリート1枚挟んだ向こう側から私と同じくらいの年の女の子の声が聞こえた。

「ねぇっ!ねぇっ!ここから出して!!ここはどこなの!ねぇっ誰か助けてよぉ!」

声を荒らげて半泣きで訴えかける彼女は気が動転しているようだった。

「もぅやだよぉ...ゆいはなにも悪いことしてないよ...?なんでこんなとこにいなくちゃいけないの?...」

やっぱり泣いている。可哀想だな...

ていうか意外に落ち着いている私がおかしいのか?まぁいっか。

隣の部屋からまた違う声が聞こえてきた。

「ゆい、落ち着けって!ここで泣いてもどうしようもないんだぞ!絶対に助けは来る!」

「うぅっ...こうちゃん...分かったぁ落ち着くよぉ...」

どうやら隣の部屋は1人じゃないらしい。こっちからコンタクトをとってみたいなぁ...でも私の声が聞こえるかどうか...とりあえずやってみよ。

「すいませーん!誰かいらっしゃるんですかー!」

返事がこない...やはり聞こえてないんだろうか?

「はーい いますよー!ここに閉じ込められたの俺達だけじゃなかったんですね!」

少したってから男の子の声が聞こえた。さっきこうちゃんと呼ばれていた人だろう。

「私の名前は如月杏っていいます!えっと...叢雲学院高等学校1の年です!」

「あっ!同じ高校なんだね!俺は中村航希です!んで、さっきから泣いてるのは長澤結衣。俺達も同じ1年だよ!」

同じ高校だったのか...全く知らないけど笑

でもまぁとりあえず向こう側とコンタクトがとれてよかった。

だが、これからどうしたらよいのか検討もつかない。

とりあえず寝よっかな...


"ビビッビッビビッビッ パチッ"


刹那電気が消えた。そして陽の光が射し込んでいた窓もシャッターが閉まりパノプティコン内は暗闇に落ちた。一体何が起きたのだろう?何かするのも怖いのでとりあえずへなへなと座り込む。


"ヒューン パチッ"


看守塔に巨大なモニターが現れなぜか私を映し出した。モニターにはあと2人映っていた。

「なんでゆいたちが映ってるの?こうちゃぁん怖いよぉぉ」

向こうの女の子が震えながら言っている。では、あのモニターに映っているのは向こうの2人なのかな?やっぱり私と同じ服を来ている。


『皆さんこんばんわぁってまだ朝か☆えー毎度お馴染みの看守長でぇーっす』


突如監獄内に響くように軽薄な声が聞こえてきた。


『今日わぁ新入りをご紹介いたしまぁーす

ピッチピチの高校生、きょうちゃんとゆいちゃん&こうきくんでーす 皆仲良くしてあげてね〜♪』


『新入りが入ったときはなぜここに来たのか説明してあげなくちゃね ここは「パノプティコン型超実験監獄」って言いますぅ

皆様がここに連れてこられた理由は実験のため。いわば研究者様のためのマウスになるためなのよぉ 』


マ、マウスっ...!?どうゆうこと?私はこれからどんな実験をされるの?怖くて怖くて今まで抑えてきた恐怖が一気に押し寄せてくるっ...


『実験といっても別に死ぬようなことじゃないのよ?まぁちょっとは痛い思いをするかもだけど♡でも痛い思いをするのは逃げ出そうとしたときだけ☆だからおとなしく従順なマウスになってちょーだいねっ☆』


この看守長と名乗る怪しい声の正体はなんなのだろうか。とりあえず今わかったことは私に逃げるなんて選択肢はないということ。そして万が一逃げようとしたら死なない程度の痛みを与えられること。じゃあどうしろっていうの。


『ここでの実験は超極秘だから皆の前では言えないのぉ

個別に依頼があると思うからそこで確認してねぇ♪

研究者様がもう必要無いと思ったら貴方達はここから出られるわ♪まぁそれがいつかはわかんないけどね☆』


どんな実験を与えられるのだろうか。怖くて想像もしたくない。

私はいつまでここにいなくちゃいけないのだろうか。

早く帰りたい...


"ギュイーン..."


突如コンクリートだけだった部屋が変形し始めた。壁は1枚なくなり向こうの部屋とつながった。そして真っ白な天井に変わり大きな窓が下から出てきた。ぺらぺらの布団が真っ暗闇に落ちて消え、普通のベッドか浮かんできた。


『これが貴方達のお部屋よ 好きにつかってね♪

以上で説明終わりっ あと、部屋にあるパソコンはお仕事でつかうからね〜じゃあバイバイっ』


モニターが消えいつの間にか3台のパソコンが目の前に現れた。

パソコンにはご丁寧にそれぞれの名前がかいてあった。

「とりあえず疲れちゃったから寝ていいかな?」

「うんっ俺らも一旦寝るよ。じゃまたあとで」

同室になった男の子に声をかけて寝ることにした。

実際不安で寝れるかわからなかったけど、案外体は疲れているようで素直にまぶたが閉じた...





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