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戻る世界の騙り屋青年  作者: 時白
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ドワーフのパン屋を騙る

初投稿です…よろしくお願い致します。

「さて、今日は何を話そう」

 部長の田中なんとか先輩がそう言って僕を見た。

 意外に下の名前って覚えないよなとか思いつつ僕はぼんやりとしつつも、

「田中先輩の好きにしてくださいよ」

 と答えた。

「ふう。たまには冴木くんからも何か話して欲しいものだがね。しょうがないから今日も私が話そう」

 語り部。

 それが僕と先輩の入部してる非公認部活動だ。

 部員数は僕と先輩の二人のみ。

 ぶっちゃけ資料室という誰も来ない教室で二人で喋ってるだけの集まりでしかない。

 それ部活動じゃなくね!?

 そんな感じで誰かにツッコミをもらいたいものだ。

「さて、では今日は近所のパン屋について話そう」

 おっと話が始まるみたいだ。

「近所に『ドワーフのパン屋』というパン屋があるのだがね。どう思う」

 どう思うですか……

「うーん。最初のドワーフをなくせばただのパン屋ですね」

「そう。パン屋がパン屋と言っていいものなのか。私もそこが疑問だよ。『ドワーフの正拳突き』などがパン屋としては適切なのではないだろうか?」

「それは空手教室になると思います。後、着眼点が意味わかりません。僕は何故ドワーフなのかが一番気になります。『妖精のパン屋』のほうが可愛らしくていいと思いませんか?」

「なるほど。そういう見方もあるわけか……確かに気になるな。店主がドワーフみたいな外見をしているのかね?」

「いやいや。入店してないんですか?」

「なんか一人で入店するの怖くないか?」

「いや、僕はそういうの感じないタイプです」

「一人カラオケとかいくタイプか。君は」

「はい。よく行きますね」

「よし。今から君には『ドワーフのパン屋』の一人入店を命じる。明日私に結果を報告したまえ」

「えっ。何故に僕が行くんですか?」

「うるさい。カラオケに私を誘わない君への罰だ。一人で突撃してこい」

「場所とか分からないです」

「携帯で調べなさい。はやく行きなさい。私はちょっとカラオケに君が誘わないショックで今から一人で泣くから」

「あ、はい。行ってきます」

「慰めろ!!」





 十月八日。

 少し肌寒い。

 ちょっとめんどくさくなってきた田中先輩からダッシュで逃げて学校から外に出る。

 これでパン屋に行かなかったら明日はさらにめんどくさい先輩になると思うので仕方なくパン屋に向かう。

 携帯で地図を見ながらレビューとかも見る。

 なんかそこそこ有名らしい。

 レビューの感想はネタバレしたくないからまず行ってみろとかそんなのばっかだった。

 味の感想もなかった。

 ちょっと怖い。行ってない人に喋っちゃいけないみたいな流れが出来てるみたいだ。

 学校から歩いて約十分ぐらいにそこはあった。

『ドワーフのパン屋』

 店を見た感想、ラーメン屋じゃね?

 見たかんじ外装はラーメン屋だった。

 中で食券を買ってラーメン頼む店みたいな外装だった。

 後、豚骨の匂いがする。

「ふう……」

 一息つき、意を決して店の中に入る。

「らっしゃせー!!」

 店内に入ると威勢のいい女性の声。

 声に目を向けると長身のお姉さんが立っていた。

 長い黒髪で白いワンピースの上に黒いエプロンを着けたとても清楚で綺麗なお姉さんだった。

 帰りたくなってきた。

 ここだけでツッコミどころがなかなかにある。

 店内もカウンターと座敷があるラーメン屋的な内装だった。

 うん。ラーメン屋だねこの店。店員は白いワンピース着てるけど。

「すみません。この店始めてなんですけどおすすめありますか?」

「とりあえず空いてる席に座れ兄ちゃん」

 モデルでもやってそうな外見の人なのに口調が荒々しい。

 とりあえず席に着く。

「ご注文は?」

 うーん。もう帰ってラーメン屋でしたでいいと思うけど、せっかくだから頼もうと思う。

 さっき外で匂いがした豚骨でも頼もう。

「豚骨ラーメン一つ」

「はあ?」

 疑問で返された。

「すみません始めてでして……おすすめとかありますか?」

 謝りつつ、おすすめを聞いてみる。豚骨の匂いがしたと思ったんだけどな。というかここメニューがない。こだわりの店とかなのかな。

「そうだな。今日だと塩だな」

「じゃあそれ一つください」

「あいよ。持ち帰りか?」

 いや、ラーメン持ち帰らないよ。

「ここで食べます」

「あいよ!!」

 そういって店主は厨房の奥に引っ込んでいった。

 厨房の中は普通のラーメン屋みたいな厨房だった。

 ふむ。豚骨塩ラーメンとかかな。

 そう考えてると店主がお盆を持って戻ってきた。はやいな。

「あいよ。秋の恵みに彩られた季節の恵みパン。塩キャラメルソースを添えておまちどお!!」

 すんごいの来たあああ!!!

 ラーメンじゃなかったああ!!

 パン屋だったああああ!!

 塩の要素少なかったあああ!!

 心の中で我慢していたツッコミの心が溢れだしていたけど、それを顔に出さずに気になる疑問を聞く。

「さっき外で豚骨の匂いがしたんですけど」

「ああ。豚骨ラーメンが好きでさ。毎日小腹が空いたら食べてんだ。本格的に調理してな」

 なるほど。だからラーメン屋みたいな厨房があるわけか。

「なんでラーメン屋みたいな外装と内装なんですか?」

「そりゃパンよりラーメンが好きだからだろ」

 なにいってんだコイツみたいな顔で僕を見るな。こっちの感情だろそれは。

「…なんでラーメン屋じゃなくパン屋やってるんですか?」

「仕事と趣味は分けるタイプなんでな」

「パンを作るための調理機材は奥にあるみたいですけど何故です?」

「仕事より趣味のほうが大事だからだ」

 うん。イカれてるねこのパン屋。

「最後に一つ。なんで『ドワーフのパン屋』なんです?」

「二代目だからわかんねえ」

「ありがとうございました。色々質問してしまいすみませんでした」

「いいってことよ。そんなことより食べな。冷めちまうぜ残したら酷いことするからな」

 なにする気なんだろう。怖いから食べよう。

「いただきます」

 パンは今まで食べた事がないぐらいに最高に甘くて美味しかった。





 十月九日。

 少し肌寒い。

「先輩行ってきました」

「おお! どうだった?」

「今度、無性に塩ラーメンが食べたい時に行くといいですよ」

「ふふ。やはりラーメン屋だったか。びっくりしただろう」

「はい。それはもう。後、店のルールで頼むときは塩一つと言わないと出してくれませんから入ってすぐ言ってくださいね」

「こだわりの店と言うやつだな。味はどうだった?」

「最高に美味しかったです。今まで食べた事ないレベルですね」

「すごい気になってきた。今から行ってくる!!」

「行ってらっしゃい先輩。あ、店主は洒落た人なのでお持ち帰りしますかとか聞いてきますけどきにしないでくださいね」

「ラーメンは持ち帰らないだろう。面白い店主なのだな。楽しみだ」

「はい。それでは行ってらっしゃい」

「それではな!!」




 十月十日。

 肌寒い。

 スープの中で先輩は溺死した。





























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