オンラインゲームの中に閉じ込められた俺達が出会ったのはチートでスパイの女の子でした
【作者より】
作者は『チート』については疎いです。
そのことを承知の上拝読願います。
西暦2100年10月29日金曜日……。
俺は『マスカトール』というオンラインゲームをやっており、明日30日の0時からはログインすれば誰でももれなくもらえる限定アイテムが配布される大切な日なのだ。
俺はそれが楽しみで夕飯と風呂を急いで済ませ、自室に籠もり、宿題を済ませた。
「宿題、終わった! あと少しで限定アイテムがもらえるぞ……!」
そして、パソコンの電源を入れる。
別に『マスカトール』はスマートフォンでもできるが、俺はパソコンでやっている。
なぜなら、スマートフォンより、パソコンの方が画面がずっと大きいし、見やすいからという単純な理由だけどな。
あれから数分後……。
まばゆい光が俺を包むようにパソコンの中に入っていくような感覚があった。
「痛っ! こ、ここは……?」
いざ、この地に踏み込んだ時、どこかで見慣れた街並みが広がっていた。
アイテムショップやご飯屋などと、見覚えがあったのだ。
自分の今の姿を見てみると、ここにくる前はパジャマの上にパーカーを羽織っていたが、今は勇者みたいな服装をしている。
近くに川があったため、ちょっと水面を使って見てみると、ここにくる前の俺の顔が現れたため、アバターではないみたいだ。
よって、ここは少し前に人気があったオンラインゲームの中が生活の拠点の話があったような気がする……。
「ゲームの中じゃねぇか!」
と俺は思わず叫んでいた。
周りにいた人達は俺と同じように困惑したようにな表情を浮かべる者がいたり、店員に向かって怒鳴り散らす者がいたり、パーティーメンバーと会えたらしく喜んだりと様々だ。
「あれ? ユース?」
「ユースだよね?」
「うん」
と訊き覚えのある3人の女性の声が耳に入ってきた。
「サナ、ラーン、リルか?」
と俺は自分のパーティーメンバーの名前を言う。
「うん」
「そうだけど」
「そうだよ」
とそれぞれ答える。
「私、レアアイテムのためにログインしただけなのに……」
「まさか、あたし達がどこぞの小説みたいにゲームの中に閉じこめられるとはね……」
「でも、ユースもログインしててよかった……」
『ユースって、意外とイケメンだよね』
「そ、それはどうも……。まぁ、俺もみんながログインしてくれて嬉しいぞ。他のパーティーは欠員しているところもあるみたいだ」
俺達はあちこちに散らばっているパーティーを見てみると、
「あれ? あいついなくないか?」
「あの子がいない!」
「やばい! 繋がらない!」
などと騒いでいる。
そんな中、一部の欠員しているパーティーはその穴埋めとして新規プレイヤーやソロプレイヤーを誘い始めていた。
「俺達も誰か新規プレイヤーかソロプレイヤーを入れるか?」
『うん!』
「わたしは新規プレイヤーがいいな」
「私はソロプレイヤーがいい」
「あたしもソロプレイヤー派だな。なんか頼もしいイメージがあるからね」
サナが新規プレイヤー派でリルとラーンがソロプレイヤー派かぁ……。
「実は俺もソロプレイヤー派。理由はラーンと同じだ……」
と自分の意見を言っている時に俺の左手首を掴んでいる。
身長は俺のパーティーメンバーの女性陣の中でも1番小さくて、黒のゴスロリみたいなものを着ていた。
「どうしたんですか?」
「あ、あの……一緒にパーティーを組んでくれませんか?」
「いいですが……新規プレイヤーですか? ソロプレイヤーですか?」
「ハイ。ソロプレイヤーとしてきていまして、一緒に組んでくれそうな人を探していたんです」
「ソロプレイヤー?」
「ハイ」
「ちょっと、ユース、あたし達のパーティーはユース以外みんな女の子しかいないんだよ?」
「俺はハーレムが好きなんだ! だから、放っといてくれ!」
「まぁ、ユースらしいよね」
「そうだね」
「お願いします! みなさんの言うことは訊きますので!」
「そうか、君の名前は?」
「わ、私はサリーです」
「サリーか……。俺はユース。今日から一緒に冒険しよう」
「ハイ!」
「あっ、他はご覧の通りに女の子ばかりだからいろいろと話しやすいと思う。右からラーン、リル、サナだ」
「よろしく」
「よろしくね」
「よろしくどうぞ」
こうして、俺達は相変わらずのハーレムパーティーではあるもののオンラインゲーム上の再会と新たな出会いを果たしたのであった。
***************
あれから数日が経った。
「なぁ、せっかくだからどこかのダンジョンに行って1発やってみるか?」
『うん!』
「ハイ!」
「じゃあ、準備をして行くか」
俺達はダンジョンに行く準備をする。
その時、俺はサリーは何者かは分からないが、誰かと電話をしている姿があった。
何分か経ったあと、サリーは電話を終え、ふと顔を上げると俺が見ていたことに気づき、彼女はハッとした表情を浮かべた。
俺達はサリーの実力を知ることになる……。
今回訪れたダンジョンは俺達5人でできるものだった。
その規模はあまり広くない部屋の一角なのに対してたくさんのゴブリン。
「キャーッ! ゴブリンがいっぱいいる!」
「気持ち悪い……」
「イヤーッ! こっちにこないで!」
サナ、ラーン、リルが悲鳴を上げている。
「では、みなさん、行きましょう」
『怖くないの!?』
「サリーは怖くないのか?」
「ハイ。あまり怖くないです」
怯える俺達に対してサリーは平然としている。
彼女は最初に会った時は可愛らしい声で話していたが、現在は悪魔のような笑みを浮かべている。
「さて……行きましょう、ユースさん?」
「あ、あぁ……」
「ユース、行くの?」
「サリーが行くんだから、行くしかないだろう?」
「そうだけど……」
「とにかく行くから、回復と護衛、オペレーターを頼んだ」
「り、了解」
俺は剣を抜き、サリーは鞭を出す。
護衛メンバーも武器を構える。
ゴブリンがギャーッ! と言うと、サリーと俺が、
「さあ、ゴブリン、私達が相手よ!」
「かかってこい!」
とこの部屋に響くような声で言う。
そして、一斉にゴブリンが俺達のところに集まってきた。
ビシビシン! とサリーの鞭を打つ音が鳴り響き、俺は剣でゴブリンを刺す。
一方のラーン達は
「す、凄い……」
「サリーちゃん、凄すぎるよ……。自分の力で回復してる」
「サナはユースの回復、ラーンはユースの代わりに入って?」
『了解』
俺とサリーはゴブリンと戦っているときに、自分のステータスを見た。
「ユース、回復するね!」
「その間にあたしがユースの代わりに入る」
そろそろ回復してほしいと思った時にサナが俺の回復に入り、その間にラーンが銃でゴブリンと戦ってくれた。
彼女のステータスを見ると、残りが0に近いのに、その瞬間にグッと60くらいまで回復し、戦い続けていた。
「彼女はすべてにおいて秀でてる……」
「なんか、私達はどこか劣っているような気がするのは……。あっ、ユース、回復は終わりね」
「サナ、ありがとな」
「いえいえ! 頑張ってね!」
「ユース、ある程度は片付いたけど、あたし、限界……」
「ラーンもありがとな。リル、ラーンの回復を頼ん……」
もしかして、サリーは『チート』というものなのか? このダンジョンにくる前に彼女は誰かと電話をしていたから……。
チートでスパイなのだろうかと思っていたら、
「終わりました」
と、俺とラーンの会話を遮るかのようにサリーがゴブリンの血にまみれた床の上に後ろを向いて立っていた。
「サリーちゃん、凄いよ!」
「わたし、尊敬してるよ」
「自分の力で回復したりできるから凄く偉いね」
とサナ達がサリーのことを称賛していた。
そんな中、俺は先ほど引っかかっていることを口にしようとした。
「……サリー……」
「なんでしょう?」
「俺、ここにくる前に君が誰かに電話をしているところを見たのは気づいてるよな?」
「ハイ」
「最初にソロプレイヤーとしてきたと言ったよな? それと、自分の力で回復したり、戦ったりしている。それはチート行為じゃないのか?」
と俺は彼女に問いかけると、彼女は、
「ええ、よくお分かりで。今まで伏せていましたが、私は有名パーティーの所属でして、あなた達に興味があったので、追わせていただきましたわ」
と後ろを向いていた身体を俺の方に向けた。
「チート行為でスパイ? 笑わせてくれる」
「ご自由にどうぞ? 私はあなた達のことを幹部に報告させていただくけどね」
「俺は君を見損なった。このパーティーから外れてくれ」
「ええ、今日を持って外させていただきますので、ご安心を。ではまたいつかお会いできる日を楽しみにしています」
「ユース……」
「サリーちゃん……」
「ユース、結論はチートでスパイなサリーを外す結論でいいの?」
「ラーン、まとめてくれてありがとう。そうするとする」
「分かった。また、違う誰かを誘えばいいしね」
「あぁ」
俺達はチート行為でスパイな彼女と別れ、4人で冒険の旅に出た。