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排他的魔法使いと今日。日常帰還戦争。(1/?)

 ―――記憶の本流を第三者の視点で見ている自分を見ている自分がいる。

 タダの夢なのか、現実なのか、分からない。

 情報が混然として、判断がどっちつかずだ。

 まるで――右目は左、左目は右を見ているかのような不可思議さ。

 本流の水がはねる。俺の視界に跳ねた水滴が通りすがる。

 水滴の中には記憶が――映画のように流れていた。

 左右反転の記憶の映像。

 これが脳に流れる。―――――――。

 俺は意味の分からない矛盾が嫌いだ。

 意味の分からない矛盾――というのはおかしな話だが。

 言い換えると理不尽な矛盾が嫌いだ。

 例えばの話――ゲームや漫画などでよくある魔法使い。なぜ現実では絶対にありもしないのにこんなに周知なのだろう。人間の想像力。それに妄想力。これは素晴らしいと思う。だけど、それにずっとおんぶってのはいただけない。持論だが。

 だから、ファンタジーなんかも受け付けなかった。けれど、このゲームは違った。

 DEAD KILL → ARIVEは違った。

 全てが現実と近似し、不条理な攻撃は一切なく、全て自分が出来る範囲の行動で行われる。恐怖だってあるし、撃たれた時の感覚だって疑似体験できる。銃と格闘だけだが、これで十分だ。この二つが醍醐味。

 もしも、このゲームがアップデートされて魔法の要素が入ってきたならば即刻に自分のアカウントを消去するだろう。

 一位のスコアを持つアカウントを。

 この世界はこんなのばかりだ。

 戦争。言葉を聞くだけでウザったくなる。それほど嫌いだ。

 だからだろうか。俺がこのゲームにはまったのは。

 子供の空想みたいに戦争を無くしたかったのだろうか。

 大人の虚言のように強くなりたかったのだろうか。

 どうでもいいよ。

 疑似感覚だけど、人を殺すってな感覚は凄い。

 凄いの―――一言に尽きる。

 一瞬の高揚とそれに続く後悔の念。なのに立て続けに殺すとその感覚自体が《ナニ》かとの摩擦で摩耗してどんどん当たり前になってくる。

 だが、俺はこの感覚は自分の『欠落』していて、『欠陥品』であることをまざまざとしらしめてくることを自覚している。

 《ナニ》か――俺はコレを常識と呼んでいる。

 これも疑似かと思っていたけど、ソレは違った。

 そこまでの高度な演算は出来ないんだと。

 高度なプログラムは組み込んでいないんだと。

 この事実をある場所で知った。

 このゲームのバグのデータの容量に『住む』というキャラクターに。

 たった数バイトの空間に巣食うデータに。

 自称ゲームマスター――キリヤに教えてもらった。

 自分自身に絶望したね。いや、渇望したのか。

 もっと殺してみたいと。

 自分の中に秘められている殺人衝動の衝撃に歓喜した。

 昔から欲の無い奴だといわれ続けてきたこの俺。言われるのは当然だった。

 ベクトルが違ったのだから。

 物欲や金に対する欲望ではないのだから。

 そりゃ――正反対の対面の存在だろうな。

 いや、ほんとに。

 自分はどれほど稀有な存在なんだろう。

 考える必要はない。

 少なからず皆持っているモノなのだから。

 で、最初の話しに回帰しようか。

 俺は魔法が嫌いだ。嫌悪している。

 魔法は悪だ。

 なんだって魔法の所為に出来るから。

 なんだって魔法で解決できるから。

 なんだって魔法の力が最強だから。

 なんだって魔法は当てはまるから。

 だから、目の前に魔法を行使するナニかが現れても否定するつもりだった。

 まぁ、まずそんなことはないと思うけど。

 あの夜、友と別れてから邂逅した、――いや、アレはわざわざこちらに向かってきた。偶然という運命的出会いだったのだ。

 一つの欠片が俺の視界を遮ったのだ。

 いや、一つの闇というべきか。

 とにかく、銃や暴力よりも轟々として台風のような存在だった。

 そして、一つの闇は有るべき姿へと成った。

 彼女――少女は、聞いたことの無い言語を口ずさんだ。

 まるでゲームや漫画によくある《××》に近い発音だったことを記憶はしかと焼き付けている。

 その後、何が起こったのかは知らない。

 ただ、一つ覚えていることは、胸に激痛が走って一瞬で意識が暴風にでも吹き飛ばされたように掻き消えたことだ。

 そういえば少女は右手に悪意しか見受けられない形状のナイフを背握っていた。

 意識は残っていたのかもしれない。

 どうやら俺の脳にはその理由が録音されている。んだろうか。

 なんとなくだが―――そんな気がする。

 今思えば俺のこの何とも言えない感覚は――相当オカルトチックな事に起因したのだろうか。


 遙か空高くから自分の体を視覚が捉えていたのだから。…幽体離脱ってやつ?


 少女はナイフを右手に握り、刀身には――持ち主の、彼女の血がぽたぽたと伝っていた。鮮血に染まったナイフ。




 ―――死んだのだ。と思い至ったのは意識が起きて間もなくのことだった。“死後の世界”なんて想像はなかったが。そんなチープな想像は地を這うより無様だ。ま、この年になると想像というよりは妄想の部類だよな。

 意識が覚める前にあった出来事が濁流のように流々と今や忘れ去られたアナログの極みであるテープレコーダーのように脳に再生される。最後は暗転だった。死んだ後の走馬灯って一番無駄じゃないか。

「はぁ、ここ――どこだよ」

 マジで死後の世界かよ。

 辺り一面灰色の世界。空は曇天。こちらが苦しくなるような灰色の空。惨憺としているが、昔はさぞかし繁盛していたことが窺われる町。栄枯盛衰の四文字熟語が上手に当てはまる光景だった。俺はその町の中央に位置するであろう大きな噴水のある公園のベンチに倒れていた。

 服装は制服になり、種類は判別つかないが絶対にあり得ないモノが腕に付いていた。こんな物体を『メビウスの輪』とかいうのだろう。奇妙にダイアモンドやパールの様な鉱石が綺麗に捻れて、ソレが腕に嵌っている。しかも、継ぎ目なく別種のメビウスの輪を創っている鉱物の腕輪が目では数えられない(自分で言っても意味不明)が腕に嵌っていた。

しかも、音がしない。物質ではあり得ないだろ。物理でもないしな。

「重さもない…変なの」

 ここで気付く。

 ファンタジックな展開が待ち受けている可能性に。

 背中に冷や汗が滝のように流れてシャツがピチャっと張り付く感覚が妙に不快だった。

最悪だ。死んだのに苦痛が待つとか。

 えーと、状況を整理整頓しようか。

 コンビニへ行って酒を買って、そこらへん飲んで、一時間ほど時間を潰して帰宅しようとした。うん、記憶はバッチリあるな。

 そこで――うーん、襲われて――撃退して――認めるのはこちらとしては不本意極まりないが一応仮に魔法使いとして、記憶にある少女に殺された。そして今に至る、と。

 うん、完璧だ。

「なわけねーっ!!」

 ノリ突っ込みを入れてしまうほど俺の精神は病んでいるのだろうかっ?(真剣に)。あと、異常に声が響いた。夜なのか?でも明るいぞ。

 ――それにしても、生物の気配が全くしない。木々はもちろん、雑草一本見かけない。全てが無機質に囲まれている感じだ。しかも、現代の科学では考えられない愚かしいローテクな技術結集であったであろう建造物ばかりだ。

 過去にタイムスリップ…とか。あ、けどそれじゃあこの荒廃した世界のつじつまが合わなくて矛盾するか。まさかのパラレルワールドなんかしちゃったりしてな。はは。

「全然違うよー。ここは魔法の世界、ティルワールドだってば」

「………―――――っ!」

 いおいおいおいおいおい、焦り過ぎて「い」から始めちゃったじゃねーか。

いや、そういうことではなくてだ、心の声に返答するって無敵じゃねえか。しかもあからさまなロリじゃねえかよ。

「だーかーら、ここは魔法世界ティルワールドなんだってばっ!」

 無視するなぁーとブリっ子な声があとに響く。

 声の主は一体どこからこちらに語っているのだろうか。

 俺の視界には映っていないんだが…、空にもいない。あるのは灰色の重圧な雲のみだ。やべ、幻覚見てるのかも。あー、今確かに俺普通の精神状態じゃないしな…。

「あー、ごめんっ。魔法解いてなかったっ、ごめんね☆」

 すると、俺の真正面に――噴水の丁度上空に位置するであろう場所にドロ――と現れた。まるで空間が溶け落ちたみたいな感じだった。

 しかも声に同調するような「ド」が百個ぐらいいてソレを六乗したみたいな超「ド」ロリボディーの少女が箒に尻を乗っけて浮いていた。

 ―――勘弁してくれ。

「私はこの世界の主――『Leリィ』、よろしくねっ☆」(しかもイタイ)。

「よ、よろしく…俺は――」

「あー、いーよ。知ってるしねー。蓮回時空って名前なんだね。変なのー」

 手足をバタバタと振りながら笑うリィという人物。きゃははとシニカルに軽快に無垢な笑顔で笑う。

 でも、今コイツ魔法って言ったよな。

 ――魔法世界ティルワールド。彼女の言葉を鵜呑みにするなら、目の前にいるコイツは―――、

戯言(たわごと)戯言(ざれごと)は抜きにしないか――、《魔法使い》」

「ばれちゃってるのかー、うん。いいねぇ。その洞察力。私は好きだよーそういうの。けどー、この世には知らなくていい事実ってあるんだけどなー」

「白々しい。自分でここまでヒント…正解を振りまいといて今更知らない振りとは」

「…あははははっは!せーいーかーいーっ!」

 魔法使い――リィは尻を箒に乗せたまま、器用に両手を上に掲げて歓喜のポーズ(ロリver)をとる。バランス感覚がきもちわりー。

「それに、俺はし、…――s」

「死んだはず――かなっ☆だいせーかいっ。蓮回は死んでその魂を私が魔法でここまで連れてきたってカラクリなんだけど…あーオ―ケ?」

「ノーだ。大体まず、どうして俺が殺されなきゃならない」

「依頼されたんだよっ」「誰に」「ひーみーちゅっ」

「お前ッ――」「カリカリしなーいっ、こんな些細なことで」

「黙れ、ふざけるな。こちらは状況が一切理解できていないんだ。ちゃんと分かるように説明しろ。俺を殺した奴にこんなことを言うのは論外なんだろうが、今はお前しかいないからな」

「はー、別にいいけど。だーけど、『ちょいと口が悪いんじゃないか、若造が』。私は善良な魔法使いであり、魔女であるから蓮回の魂を呪魂しなかったし、無闇やたらで闇雲な肉体も与えず、元の肉体を再現し構築してやった。さらに思考力――精神も復元してやった。いや、連れて来てやったという言い方が正しい。しかも、他の奴らから狙われないように私の創った世界にまで登場させてやった。それなのに、それであるのに、それ以上の事を望むというのかお前は。命知らずもいいところだ。他の三人はもっとマシな対応だったわ。ただちにお前を殺すことだって可能なんだぞ。速攻一瞬で間隔を開けずに6123回ほど一秒で殺すことが出来るんだぞ。己が身を弁えんか。お前は状況をつかめていないだけでなく、ちょっとしたパニックにもなっている。そんな不安定な精神が私に抗議するな」

「――…、お前は、いやあんたは何時如何なる理由で俺を殺したんだ?」

「…ふんっ。お前だのあんただの代名詞のオンパだな。リィと呼ばないか。まぁいい。お前だけ…違う。前提から違うんだよ。私は殺してなどいない。ふんっ、ちったぁ人の話を…魔法使いの話を聞け。それに、お前だけじゃない。あと三人しんでいて、全員の魂を回収した」

「さんにんって…そりゃ、俺の予感は当たらずしも遠からずってわけじゃないようだな」あと三人―――容易に想像がつく。

「そうさ、だーが、ここで一つ問題が発生した」

「もんだい?」

「そう、復唱してくれてるところ悪いけど、どうしようもできないどうしようもない現実を提示させてもらうよ」お前を含めた四人の魂を私は手中に収めていた――が、ソレを横から文字通り横取りされたんだよ」魔術師にね」そしたらどーだい、その魔術師は去る間際に私の世界をここまで壊して去っていきやがったんだ」酷いと思うだろうー?そこで、だ」

「ちょっと待て」俺は少々ズレたことをベラベラと惜しげもなく喋りまわるロリ魔女に静止を掛けた。ついていけない。話が飛躍しすぎだ。俺の中で噛み合わない。只でさえファンタジーが嫌いな俺は予備知識が無いことは無いにしても、それでも程良く零に近いんだ。それなのに魔術師がどーやら魂がどーやらと厨二みたいなことを言われてもこちらが御話しにならない――うえにだ、本質的にも御話しにならない。

「話す速度が速すぎだし、まずおかしいだろ。《どうしてお前はそんな一方的な喋り方をする》んだ」―――《頭に響いて苛々するんだよ》。

「ああ、これか。なんてことない。ただの、ただの―――



 ―――――――《魔法》だ」


西尾維新絶賛――講談社ノベルズから今月発売した、「酸素は鏡に映らない」は


かなりおもしろいです。


こんな自分の小説の話を全くしない作者でしたとさ。


イラストレーターの「toi8」の絵もかなりイイ!!


「まおゆう」を呼んで文章・イラスト(toi8)に感銘を受けた直後の話でしたとさ。


めでたしめでたし。


ではなく、少し話を。


今回の話の切り方は尻切れトンボっぽいです。


なにとぞご了承を。

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