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濁った日常。VERSION 1.11

「…――――――ッブンッ!」

 誰かがテレビのリモコンの電源ボタンを指の腹で押す。この時代のテレビは全時代のブラウン管仕様のアナログは時代の端へと追いやられ、デジタルテレビというハイビジョン画質のテレビが流通している。一部では世界初のホログラムテレビという未来感溢れる、胸躍るテレビもある。

 リモコンから放出された赤外線は反射し、テレビに当たり、電源が入る。朝のニュース番組。出勤時間が五時代や六時代という健康を通り越して不健康ではないのかと言いたくなるニュースキャスターを眠たげな眼で見る。ピシッとした端正なスーツを身にまとい、朝からはきはきとウザったくなるように喋るニュースキャスターが今朝も実際にあった事件や出来事を大袈裟に淡々と喋っていく。

 芸能人についての与太話。芸能人より一般人の方がもっと凄いことをしていることは言わずとも知れた、事実である。

 幼児虐待やら人身売買やらのダークな話。住んでいる現実とあまりに乖離しすぎてニュースキャスターの腹式呼吸からなるハキハキとした喋りは只、耳を無駄に通過していく。

 次に話すことは地元の事らしい。

 言葉を紡ぐ前に一度えー、という言葉を間に入れる癖のある二十代の若手の人気のあるそこそこ美人のキャスターが朗々と読み上げる。


「えー、 昨夜十二時頃に××県×××市で高校生四人が殺されるという殺人事件が起こりました。

 殺されたのは月波子高校二年、蓮回時空(17)、壱奈岐友(17)、空垣咲良(17)、荒峰乙夜(17)、の四人らであり、全員が違う場所で発見されております。

 この不可解な殺人事件は四人の死因が共通しており、全員がナイフで心臓を刺され、即死だったと思われます。

 なお、蓮回時空さんの頭部にはバットか何かで殴られたような跡がありました。

 なにより不可解なことは全員が同じ死因であるにもかかわらず、死亡推定時刻が全員一致している事です。つまり、全員が同じ時間に別々の場所で殺されたという事になります。それに、全員に刺さっていたナイフの柄には全員同じ指紋が検出されており、偽造されている…という事はあり得ないようです。

 なお、蓮回時空さんの右手にも傷があり、犯人ともみ合ったと思われます。

 犯人の特定は未だ出来ておらず事件は未だ解決されておりません。

 警察はこれらの状況証拠から複数犯のグループ犯行とみて捜査を続けています。

 今朝も随時捜査を進めるという予定です」


「えー、では次のニュースです―――」


 地元のニュースはまだ続いたが、これ以上の凶悪な事件は発表されなかった。キャスターもごく普通というような様子だった。


 どこの知らないテレビを見ている誰かはフンっと鼻息を出し、こう思った。

 今朝も普通の日常だと。

 地元の事でありながら重要視しない。

 これが人間というものなのだろうか。

 いや、無関心なだけである。

 無関心―――無頓着でありたいのだ。

 そう思い、どこのだれか――筑ヶ 説『つくが せつ』は学校へ行く準備をしだした。月波子高校へと。


 だが、そんなことはあり得ないだろう。

 ―――死。

 これは絶対的な事象であり、逃れることが出来ない。

 だが、この事件は異常だった。

 一目見ればそれは一目瞭然。

 だが、『なぜこの程度の騒ぎにしかならない』のだろう。いや、

 ―――『騒ぎにさえなっていない』。このニュースを聞いている人間はこの事実に『疑問を抱いていない』。

まさしく異常である。

普通なら取材陣が被害者の親族へ取材をしたりするものだ。

裏で何かしらの圧力が働いた―――ワケはない。

それならばニュースとして取り扱われる筈がない。

ならば、―――どうしてこのような中途半端な自体が起きるのか。

―――全てが謎だった。

それは、月波子にこれから登校する――筑ヶ 説でさえ気付いていない。



二つ名―――『天才添削視(スペルチェッカー)』を持つ彼でさえ。



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