1.花を知らぬ魔女に焦がれる
男主人公視点
西暦23◯◯年。
争いが絶えない世界の片隅は、汚染された大気と死体、硝煙と死臭に満ちていた。
不要な才能により軍属になった俺の世界は、いつも灰色。
「こちらポラリス02。生存者を発見。至急救助する」
その女の子を見た瞬間、花の香りがした。
世界に光が溢れ、鮮やかな色が乗った。
「二千翔ちゃん! ご飯行こ」
「お断りします」
淡い緋色を帯びた白髪の彼女━━二千翔ちゃん。
俺こと湊ユウリは出会ってから二週間、時間を見つけては彼女にアタックしていた。
この星は、終わらない戦争と気象兵器の実験で限界が近い。
俺は元々イタリアに住んでいたが、日本人の父に殺しの才能を見出されるや日本の軍人学校に放り込まれた。
訓練はキツいし人殺しなんて本当は嫌だ。
それでも家族を守るには、1人でも多く殺す必要がある。
が、二千翔ちゃんと出会えたから、この場所も許せる気がしてきた。
彼女は『魔女』。国が作った人工人間だ。周囲は生物兵器だと怯えてるけど、馬鹿げてる。
色白で睫毛長くて背も高い美人の女子、例えるなら女神だろ。
「食事は1人でします。諦めて下さい」
「無理! 二千翔ちゃん好き!」
「何度も申し上げますが、私には恋愛感情がインプットされていません。その気持ちを理解出来ません」
今日も拒絶。
仕方ない。弁当を貪る同級生に慰めてもらおう。
「いや慰めねーよ。言ってんじゃん魔女とは無理だって。学べや」
「鬼畜!」
「お前さ、腹筋バッキバキで背も高くて褐色肌で顔も人当たりも良いんだから、普通に可愛い子いけよ」
「軍人学校の『普通に可愛い子』とは?」
基本、ここゴリラの巣よ? あと俺の肌色って良いとこ?
「とにかく、魔女は傷付くだけだ。余計な感情を持たないように薬で調整されて、短命だからな」
飯を先に食い終えた友人は「次、現場だぞ」と肩を叩いて出ていく。
『現場』とは、戦場の事だ。
今日も、ダガーで何人の首を掻き切っただろう……。
いっそ命乞いでもしろよ。
誰も彼も諦めずに立ち向かって来るな。
血が舞う。
手足が舞う。
銃も使って撃ち殺す。
返り血で視界が悪い。頭痛を覚える程、疲労が増す。
あ、二千翔ちゃんだ。今日は同じ現場だっ━━刹那、彼女に至近距離でライフルを向けている男を見た。
ダンッ!!
足の筋肉が爆ぜる程の速度で跳び、銃弾を受けたのは俺だ。
駄目だ。まだ倒れられない!
獣のように吠え、ライフルを両断。
抵抗する男の腕を削ぎ、首を掻き切る。
これで二千翔ちゃんは安全だ。
そして血を吐いた。
あ、駄目な所撃たれたわ。もう体に力入んない。
「何で私なんか助けたんですか! 聞こえてますか!?」
二千翔ちゃんだ、焦った声も可愛いなぁ。
でも、視界が暗い。
君の顔を見たいのに……暗い。
「二千翔ちゃん、大好きだよ」
「今言う事じゃ無い! 私はその感情を知らないっ! だから━━」
続きが気になった。
けれども俺は、冷たい闇に沈み、
君の声が聞こえなかった。
※ちゃんとハッピーエンドにしますよー!




