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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

芋虫母さん (前編)

作者: にぼしS
掲載日:2025/10/26

転校生のくぅちゃんは寂しい男の子です。


くぅちゃんの青白いというよりは黄ばんだ顔色を見ると、僕はいつも21歳で死んだ田中のおじちゃんを思い出します。


くぅちゃんの手足はひょろひょろで、意地悪な子からは骨、優しい子からはヒョロリンと言われています。


けれど、くぅちゃんは誰の仲間でもありません。




最初はみんな転校生とあって、くぅちゃんに砂糖を見つけたありんこのように群がったのですが、今ではみんなくぅちゃんを遠くから眺めることはあっても、直接近づくことはありません。


くぅちゃんはいつも黙っていて、隅っこでモジモジしている。


僕が時々優しい気持ちになって話しかけてやると、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべます。

そうして、ぶつぶつ何か口の中でつぶやくのです。


そんなんだから誰にも好かれないんだよ?


くぅちゃんにはお姉ちゃんがいます。

中学生で僕よりだいぶ背たけが大っきいです。



お姉ちゃんは長い髪をポニーテールにして、いつも高く結っています。

お姉ちゃんの目には濃い睫毛がびっしり縁取っています。

話すたびにほっぺたが活き活きと動いて、 

目を細めた時の顔が納豆のおかめちゃんにそっくりです。


僕達の授業が6限の日には、下校の時にくぅちゃんのお姉ちゃんと必ず会えます。


お姉ちゃんはくぅちゃんに話しかけますが、

くぅちゃんは応えません。


お姉ちゃんはそんなくぅちゃんに、困った顔をして眉をちょっぴり潜めるのです。


お姉ちゃんは僕にも優しく声をかけてくれます。

僕は嬉しくなってくぅちゃんの代わりにいっぱい話します。


お姉ちゃんと話していると帰り道の時間があっと言う間に過ぎていきます。


そんな時、くぅちゃんはひたすら地面を見ながら僕達の後ろをとぼとぼ歩いています。


僕と話している時も、

お姉ちゃんは時折振り返ってくぅちゃんの様子を確認します。


僕はそんなくぅちゃんが鬱陶しいです。


早く先に帰っちゃえばいいのにね。


ある日、お昼休みに僕がみんなとサッカーをしているとボールが中庭の方に入り込んでしまいました。


慌てて、僕が中庭にボールを取りに行くとその先にくぅちゃんが居ました。


僕はボールを拾うと、

ツツヂの木の下にしゃがみ込んでいるくぅちゃんに声をかけました。


「何してるの?」


僕が声をかけると、くぅちゃんは振り向きました。



青白い顔のほっぺたはほんのりピンクに色づいて、痩せて大きな目はきらきらと輝いていました。


そして次の瞬間僕に向かって、目を細めてにっこりとしました。

納豆のおかめちゃんが目の前に突然現れた。


その時、くぅちゃんがお姉ちゃんに似ていることに僕は気づいたのです。


「あのね、友達をね、つくってあげてたんだ。」


くぅちゃんがボソボソと、でも僕にも聞こえる声で言いました。


「友達?」


僕の視線はゆっくりとくぅちゃんの手元に動いていきます。


細長い濡れた二匹のミミズがくぅちゃんの手の平の上で絡み合い身をよじって身体をくねらせていました。


くぅちゃんはもう片方の手で絡み合ったミミズをつまみ上げると、


「ア゛っ!」


僕は叫び声をあげました。


くぅちゃんは空いた先ほどの手も使って、ミミズを引きちぎったのです。


ちぎられた二匹のミミズは絡み合ったまま激しく波打つように身体を動かしていました。


切り離された方の身体は地面に落ちていきました。


僕の視線はそのまま地面へと動いていきました。


「ひっ……いっ……!」




地面には沢山のちぎらたミミズが蠢いていたのです。


小さなものから大きなもの、

活きのいいのからぐったり動かないものまで。


「ミミズってね、ちぎられても死なないんだ。」


くぅちゃんはまたか細い、けれど耳にまとわりつくような嗄れた声で言いました。


「ねっ、友達?」


そう言ってまた、にっこり笑いました。

その顔はやっぱりお姉ちゃんにそっくりでした。









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