表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定眼の社畜、今日もブラック魔王軍でなんとかがんばります!  作者: 鳶丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/39

第008話 社畜、鍛冶場へ赴いてなにを見る


「まったく! まったく! まったく! ですわ!」


 ヴェラがぷんすこ怒っている。

 なんでかって?

 

 スターバ祭りを開催しようとして怒られたからだ。

 魔王様に。

 

 そんな余裕なんてねぇ! って。

 

「ぜんぶハルトが悪いのです。甘言を弄してわたくしを騙したのですわ!」


 矛先がこっちに向いてきた。

 魔王様にはあんまり言いにくいんだろうな。

 まぁべつにいいけど。

 

「ヴェラさんや、ちょっとお聞きなさい」


 ここはひとつ社畜のセルフケアを語ってやろうじゃないの。

 貫禄ってやつを見せてやんよ。

 

「いいですか。組織というものは理不尽なものなのですよ。時には個人よりも組織を優先しなくてはならない。どれだけ個人が傷つくことがあってもね。その代わり、魔王軍という組織が維持されるのです。あとは言わなくてもわかるね?」


「ハルト……何を言っているのかさっぱりですわ!」


 ガクッときたが、まぁそんなもんだろう。

 ヴェラに聞いたんだけど、実は魔王軍って歴史はかなり浅い。

 

 だって、ニンゲンが攻めてくるようになって作られたものだから。

 そもそも魔族は種族や氏族単位で生活していたわけ。

 

 もちろん交流はあるんだけど、一緒には暮らしていなかった。

 一部はそういうこともあっただろうけど。

 まぁ一般的じゃないわけ。

 

 で、ニンゲンたちの猛威にさらされて結成したのが魔王軍。

 とにかく魔族の中でも、突出して強い魔王様を担ぎだして、なんとか組織という形を作っただけ。

 

 そりゃ色々と問題でてくるわなぁ。

 

「で、鍛冶場ってこっちでいいんかな」


 ホテホテと魔王城を歩いているオレたち。

 行く先はもちろん鍛冶場だ。

 魔王様から指示があったからね。

 

「あっていますわよ。お城の外にある離れに鍛冶場があります」


 ヴェラに案内されながら離れに行く。

 なんか想像していた離れという雰囲気じゃない。

 

 なんかサイズがでかいんだもん。

 建物の規模もそうだけど、入り口とか五メートル近くありそうだ。

 

「お邪魔しますわよ!」


 ヴェラがふぬぬと力を入れて扉を開いた。

 中に入ってもびっくりだ。


 椅子とかテーブルとかもでかい。

 オレの身長よりも大きいんだもんよ。

 

 むわっとした空気に、なんとも言えない臭い。

 これが鍛冶場か。

 

 なんて思っていると、にゅうと顔をだした人がいた。

 思わず叫びそうになっちまったじゃねえか。

 

 単眼の巨人、サイクロプスだったから。

 

 青白い肌に黒色の瞳。

 赤銅色の髪。

 頭頂部には小さな角。

 筋骨隆々の巨人だ。

 

「おお! あんたらが魔王様が言っとった人らかね! 鍛冶士のギーガだ。よろしく」


 全身が見えた。

 でかいなぁ。

 四メートルくらいはありそう。

 

 ローマ風の肩をだした服か。

 足下はサンダル。


 うへぇ。

 こんなんとケンカしてるって、こっちのニンゲンは正気かよ?


「そうですわ。なんでも鍛冶場でお困りごとがあるとか」


「そうなんだわ、いま、えらい困っとってな。魔王様に相談したら、あんたらを紹介してくれたってわけよ」


「その困りごとを教えてくださいな」

 

 その前に、と。

 サイクロプス親方は、頭部にある小さな角をこすった。

 すると、しゅるしゅるっと身体が小さくなっていく。

 

 だいたい二メートルくらい。

 これで落ちついて話せるな。

 

「ついてきやあ」


 サイクロプス親方に案内された先は、このサイズ用の部屋だった。

 ふつうに座れる椅子とテーブルだ。

 オレの分まで白湯まで用意してくれる心遣いが嬉しい。

 

「どっから話しゃあいいかわからんだけど、最近オラが作る武器の質がよう落ちとるんだわ。このままじゃ魔王軍の武器として出せんのだわ」


 名古屋弁っぽいのはいいとして、だ。

 まぁ要するに品質が落ちてしまった、と。

 

 見たところ、親方の腕が鈍ったってわけじゃなさそうだ。

 だったら変わったのは鉱石の方かな。

 この鍛冶場の道具が劣化したって方向性もあるな。

 

「と言うことは、なぜ品質が劣化したのかの原因ですわね。ハルト、なにか思い当たりますか?」


 ヴェラがこっちに話を振ってきた。

 だから、さっき考えたことを言ってみる。

 

「んー鍛冶場の道具は劣化しとらんわ。オラが毎日ちゃんと面倒みとるでね。異変があったらすぐわかるんだわ」


 だろうね。

 そう思った。

 なら、鉱石の方かな。

 

「鉱石の方はどうなっていますの?」


「鉱石も変わったようには思わんのだけどさ」


 だろうね。

 きっちりとしてるっぽいもの。

 

「さっぱりですわね。ハルト、出番ですわよ!」


 はいはい、と腰をあげた。

 最初は従者とか言ってたくせに、もうなんかオレの方が従者だな。

 ま、建前としてヴェラの奴隷だからべつにいいけど。

 

「ギーガ親方、鉱石の仕入れが変わったとか、そういうのはないかな?」


「仕入れ? いっつも魔王城に来る商人から買っとるだけだから、詳しいことまではようわからんのだわ」


「前に使ってた鉱石は残ってる?」


「余りもんやったら」


「じゃあ、悪いんだけど鉱石を見せてもらっていいかな? 前に使ってたのと今使ってるの両方」


 ふふ……鑑定先生の出番だぜ。

 

「ほんなら、とってくるわ」


 ドスドスと音を立てて部屋を出て行く親方だ。

 

「ハルト……今日はなんだかやる気ですわね」


「ふっ……おだててもなんもでてこんよ」


「ちっ。スターバの新しい料理がでてくると思いましたのに」


 あら。

 意外と食い意地が張ってるのね。

 食事はしない魔族だと言ってたのが懐かしいよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ