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第004話 社畜、鑑定眼先生の気まぐれに振り回される


 ヴェラに聞いた話な。

 

 魔族って言っても色んな人たちがいる。

 ざっくりニンゲン以外のヒト種は魔族っていう分け方だそうだ。

 

 例えば魔王様は龍人族っていう希少種。

 ヴェラみたいな悪魔型は魔人族らしい。

 

 他にも巨人族や鬼人族、霊人族に虫人族。

 不死人族に精人族などなど。

 

 本当に多種多様なのが魔族だ。

 これに加えて、ヒト型ではない魔獣などを総称して魔物って呼ぶ。

 

 まぁ多すぎて訳わからん。

 

 さて、オレとヴェラは連れだって魔王城の外にでた。

 ちなみにオレの首には隷属の首輪ってのがハマっている。

 なんでかって? ニンゲンだからだよ。

 

 敵対している種族が我が物顔で魔王城を闊歩できるわけがない。

 だもんで、ヴェラに言って着けてもらった。

 そういう趣味があるからじゃないぞ、断じてな。

 

 ちなみに隷属の首輪って言っても革製のチョーカーだ。

 実はちょっとデザインが格好いいから気に入っているのは内緒な。

 

 魔王城の敷地内には傷病者のための治療施設がある。

 そこに顔をだすためだ。

 

『ハルト、聞こえていますか?』


『オーケー、オーケー、聞こえてるよ』


 今のは念話。

 ヴェラが古き神に与えられた能力だ。

 今のところ、オレとしか通話ができない。

 

『さて、準備はいいですか?』


『うん。さっきも練習したから大丈夫』


 鑑定眼の力ね。

 さっき使ってみた。

 色々と便利な能力だと思う。

 

 ただ、ひとつだけ弱点があってだな。

 それは――。

 

「魔王様から伝達がきていると思いますが、わたくしたちは調査係ですわ」


 ヴェラが治療施設の衛兵に話しかけている。

 オークってやつかな。

 イノシシみたいな顔をしたでっかい人だ。

 

「ブヒ! 聞いておりますです!」


 あっさり中に入れてくれた。

 ヴェラの後に続いて、治療施設の中に入る。

 

 意外と広いな。

 病院の大部屋みたいな感じで、粗末なベッドが並んでいる。

 三十人くらいはいるかな。

 

「ブヒ! 体調不良を起こした者たちはそこにいますブヒ!」


 オークの衛兵が指さした一角には、十人くらいの魔族が寝ていた。

 ん? 全員ゴブリンなのか?

 

 小汚くくすんだ緑色の肌。

 小学生高学年くらいの大きさで、頭には小さな角がある。

 

 とりあえず手前のヤツからやるか。


「ハルト、お願いしますわ」


「あいよ!」

 

 はあぁぁと気合いを入れる。

 指をピースにして、目の前に。

 

「鑑定!」


 ポーズはとらなくてもいいし、声をかけなくてもいい。

 ただまぁこうやってると、何やってるのかわかりやすいんだよ。

 多少の恥は承知の上だ。

 

 ぶぅおん、と音も鳴らずに、オレの視界に映るデータ。

 

 氏名:オルグ

 種族:ゴブリン

 性別:オス

 状態:食中毒(弱)

 備考:悪食で有名なゴブリン。現在、食中毒の真っ最中。自然治癒可能

 

 うむ。

 食中毒とな。

 自然治癒が可能なのか。

 

 ただ、なんの食中毒なんだ。

 そこが問題だと思うんだが……。

 続いて二人目を見てみよう。

 

「鑑定!」

 

 氏名:ゴーゴーム

 種族:ゴブリン紳士

 性別:オス

 状態:食中毒(弱)

 備考:悪食で有名なゴブリン紳士。現在、食中毒の真っ最中。自然治癒可能

 

 って一緒じゃねーか!

 紳士の意味は?

 なんだったら見た目も一緒だろうが!

 

「次!」


 氏名:モノスタ

 種族:レディース・ゴブリン

 性別:メス

 状態:食中毒(弱)

 備考:悪食で有名なレディース・ゴブリン。以下略

 

 仕事しろよ!

 まさかの省略とか、鑑定さんにあるまじきだぞ!

 あと、種族名! もうそれはよくわからん!

 

「ふぅ……」


 ちょっと待ってくれ。

 鑑定さんが鑑定してくれない。

 いったいどういうことなんだ?

 

 救いを求めてヴェラを見る。

 

「どうかしましたの?」


「いや、鑑定さんが職場放棄してるんだけど」

 

「……それはどういうことでしょう?」


 説明するのが面倒くさい。

 だから、息を吐いて流すことにした。

 

「んー他の人たちは体調不良じゃないのか?」


「さぁ? 確認してみますか?」


 さっきのオークの衛兵さんをヴェラが呼ぶ。

 

「他の体調不良ブヒか? 聞いてないブヒ!」


「鑑定!」


「な、なにをするブヒいいい!」


 氏名:ハッ・カーイ

 種族:オーク

 性別:オス

 状態:食中毒(微弱)

 備考:外見に反してきれい好きなオーク。一日三度の水浴びは欠かせない。ちょっと今日は調子悪いかなぁくらいの体調不良。

 

 お仕事してくれてるじゃない。

 鑑定さん。

 ありがとう、さっきは文句言ってごめんなさい。

 

『ヴェラ、頼みがあるんだけど』


 今度は念話で頼んでおく。

 いちおう、ここでは奴隷って立場だからな。


『なにかしら?』


『ここにいる衛士も含めて全員鑑定したい』


『いいでしょう。わたくしに任せてくださいな』


 ということで鑑定すること数十回。

 さすがにヘトヘトになっちまった。

 

 くらりと立ちくらみがする。

 

 体力というよりは精神的にくるな。

 鑑定の使いすぎには注意しよう。

 

「さて、なにかわかりましたか?」


「ああ……だいたいわかった」


「じゃあ原因は突きとめたのですか?」


「いんや、ぜんぜんわかってにゃい!」


 ヴェラがちっと舌打ちをした。

 

「使えませんわね……ふふ、まぁ『にゃい』が可愛いから許してあげますけど」


 おっと。

 気に入られてしまった。

 モテる男は辛いぜ。


 わし、探偵ちゃうねんから。

 しらんがな、とは思うけど!


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