表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/39

第003話 社畜、魔王軍の相談役に転職する


 ざっくりいこうか。

 あれから色々あったんだ。

 

 で、今のところオレは与えられた部屋で寝転がっている。

 うん。牢屋じゃないだけマシかな。

 

 草のベッドの上だ。

 ちくちくするけど。

 服はまだない。

 

 状況を再確認しようか。

 

 オレは転生したと思う。

 たぶん。

 

 転移なのかもしれんけど、タマゴから生まれたからね。

 いちおう転生枠とする。

 

 で、どうやら話をまとめると、だ。

 

 この世界はもともと古き神が治めていたらしい。

 ただ新しき神の奸計によって封印されてしまったんだって。


 問題は新しき神が依怙贔屓していることなんだわ。

 人間側を優遇して、魔族を冷遇している。

 

 それが理由か知らんけど、今はニンゲンと戦争の最中らしい。

 どうにもニンゲン側が一方的に攻めてきた感じだな。

 

 で、オレはと言うと集団転移を察知した古き神が紛れこませたみたいだ。

 あんまり派手に動けないから、チャンスを見計らってたんだろうな。

 

 ただ、オレを紛れこませるので精一杯。

 だから別口でヴェラを派遣したって感じだと思う。

 

「ならば、そのニンゲンには特別な力があるのか?」


 ちびっ子魔王様がヴェラに聞いたわけ。

 

「そうですね。わたくしとニンゲンには特別な力が授けられましたの。ただしその力は古き神の力に依存するのですわ」


 ってことだから、たぶんこの緋色になった目はその影響だと思う。

 十中八九、まちがいないね。

 オレは魔眼持ちってわけだ。

 

「ニンゲン、お前はなにができるのだ?」


 そう。

 オレは古き神から魔王軍に派遣されたわけ。

 だから、魔王軍に貢献しなきゃいけない。

 

 でも、なにができると聞かれても、だ。

 力の詳細もわからないから、どう答えていいのかわからんのだよね。

 

 戦闘で役立つことはできんと思う。

 なら、オレが培ってきた知識と経験を役立てることくらいだ。

 

「ふむ……しばらく考えているがいい。我が軍も今はただ飯食らいを養えるほど余裕はないのでな。仕事はしてもらうぞ」


 ニートは許さない発言を魔王様にされてしまったわけ。

 その後で、オレだけここに移された。

 

 一応、逃げないように扉には鍵がかかっている。

 ついでに言うと、扉のむこうには見張りの兵士もいた。

 

 うん。

 やっぱり……牢屋かな。

 

 その日、オレは腹を空かせて眠ることになったんだ。

 チクチクする草のベッドの上で。

 

 どんなところだって寝れるよ。

 社畜なんだから。

 

「ハルト、ハルト」


 んにゃ? と目をあけると美人の顔。

 ヴェラって言ったかな。

 悪魔っ娘だ。

 

「食事を持ってきてあげましたわ」


「メシ!」


 見れば、お盆の上に水とスープっぽいものがあった。

 あとは硬そうな握りこぶし大のパン。

 

 正直に言おう。

 げんなり、だ。

 

 朝の旅館とまではいかなくても、ちゃんとしたメシが食えると思ってた。

 ううむ。

 これは要改善だな。

 

 とりあえずパンをちぎって、スープに浸す。

 

 硬い。

 しょっぱい。

 酸味が強い。

 

 まぁ保存食っぽいからこんなもんか。

 マズくて食えたもんじゃねえと言うほどでもないけど、美味しくもない。

 

 黙々と食事をとって、一息ついた。

 

「ありがとな、ヴェラ」


「どういたしまして。お腹が空いてたのね」


 ほっこりするような笑顔だ。

 さすが美人は強い。

 

「まぁ食べてなかったし。ヴェラは食べたの?」


「わたくし? わたくしは食事を摂らなくてもいいもの」


「んーそれって魔族だから?」


 いや、本当に魔族とか言われてもわかんないんだよな。

 だって、オレってばたぶんニンゲンだし。

 

「そうね……魔族にもよるわね。食事が必要な魔族もいれば、そうでない魔族もいるって感じですわ」


 ほおん……。

 

「色々と聞きたいことがあるんだけどさ、時間とってもらってもいい?」


「ええ、わたくしもそのつもりできたのよ」


 ありがとな、と礼を言う。

 

「いいの。それより先にわたくしから告げておくことがあるの」


「ん? なにかな?」


「昨日、魔王様が言ってた仕事なんだけどね。魔王軍の相談役ってことにしといたから」


「……相談役。オレ、なんも知らないんだけど?」


「いいのよ、知らない方が。その代わり、あなたには異界の知識があるでしょう? それを役立ててほしいのよ」


「まぁヴェラがそういうなら、それでいいよ」


 どうせ仕事しろって言われても、何をしていいかわからなかったし。

 シンプルな肉体労働に比べたら、相談役なんてマシな方だろう。

 

「で、なにを聞きたいのですか?」


「いや、本当になにもかも全部。教えてくんなきゃわかんねえから」


「……そうね。じゃあ、あなたが聞きたいことを聞いてくれたらいいわ」


 紫紺の瞳ってきれいだな。

 茶褐色の肌にアッシュブロンドの髪の毛もいい。

 あと、生まれたばっかりでバインバインなのもグッド。

 

 おっと。

 そんなことを考えている場合じゃねえな。

 

「とりあえずさ、相談役ってなにをしたらいいの?」


「そうね。実は体調不良を起こす魔族が増えているのよ。その原因を突きとめてくれって魔王様は仰ってたわ」


「いきなり、でっかい相談だな」


 てっきり個人的な悩みとかを聞くと思ってたんだけど。

 んーいや、あれか魔王様の個人的な悩みとも言えるのか。

 かなり無理筋だけど。

 

「そうそう。わたくしたち、古き神から能力をもらってますから。その能力を使えば、かんたんに解決できますわよ」


「その能力ってなに?」


「ハルトが授かったのは鑑定眼の能力ですわ」


「鑑定! キタコレーー!」


 チートの大定番。

 鑑定か。

 

「まぁ喜んでばかりもいられませんわよ。今のところ使えるのは最低限ですから。あなたの活躍次第で能力が拡張されていきますわ」


「いいね! そういうレベルアップ的なこと大好き!」


「でも、あなたの活躍が及ばなければ、古き神の力も弱るので最終的には能力が使えなくなることもありますのよ?」


「なぬ!」


 ううーん。

 これは嫌でも成果をあげなきゃいけないタイプだな。

 

 いっちょ魔王軍の相談役、がんばりますか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ