第027話 社畜、霊地サハルーサへと到着する
さて、腹がいっぱいになった。
ヴェラとドラドの二人はまだ食べている。
こりゃ骨になるまで食う気だな。
まぁべつにいいや。
「お二人さん、ちょいと香り草を吸ってもいいかな?」
ヴェラとドラドの二人がオレを見て頷いた。
いちおう確認をとっておかないとな。
キセルに葉っぱを丸めて火をつける。
焚き火に近づけて、胸いっぱいに煙を吸う。
なんか不思議な感覚だな。
煙草は煙草なんだろうけど。
やっぱりちょっとちがう。
危ない葉っぱとかじゃなくてよかった。
ぼけっとしながら煙草を吸う。
ぷかぷかと空にむかって、わっかを作る。
まぁこのくらいはお手のものだ。
「むむ! ハルト! その輪っかは!」
ヴェラだ。
好奇心旺盛か。
なんでも食いついてくるな。
「秘技! 鯉の滝登り!」
口の中に煙をためて舌で外へ。
その煙を鼻で吸うだけの技だ。
でも、見た目のインパクトがある。
煙が口ひげみたいになるからな
まぁちょっとした宴会芸みたいなもんだ。
「あははは! ハルトにおひげが生えましたわ!」
こんな素直に反応してくれると嬉しい。
「むぅ……ハルトは煙を扱う魔法を使うのか」
ドルドは真面目だな。
魔法じゃないけど、面白そうだから黙っていよう。
他愛のない雑談をもう少しする。
そして、見事にイノシシは骨だけになった。
どんだけ食うんだよ。
「さて、メシも食ったし里へ行くか」
ドルドがばさっと背中から羽をだす。
ドラゴンっぽい皮膜って感じだ。
ヴェラも翼をだした。
こっちは悪魔っ娘らしいコウモリっぽい感じ。
まぁ遠目で見たら、ドルドの羽と似てるか。
入り口のところから、だいたい十分くらいだと思う。
霊地サハルーサに到着だ。
と言っても集落ってくらいの大きさだな。
周囲には環状の列石があって、その中心に家が数戸。
テントみたいな簡易の作りの家だ。
「思ってたより小さいな」
「よく言われる」
ドルドはニヤッと笑う。
なんでも龍人族というのは、かなり長命な種族らしい。
加えて、魔族の中でも飛び抜けた力を持っている。
故に、そんなに人数がいないとのことだ。
ちなみに家族単位でいくつかの場所にばらけて住んでいるそう。
偶に交流があるってことだ。
「祖母さま! 祖母さま!」
ドルドが声を張り上げる。
すると中年くらいの女性がテントからでてきた。
ふわぁとあくびをしている。
白い髪に黄金色の瞳。
ナイスバディの美熟女だ。
「んあ? ドルド? そちらの客人は……ああ、ララゼヴィンクの」
すぐに察したようだ。
つい、ぺこっと会釈してしまうのが社畜のサガだな。
「ほおん……そうか、そういうことか」
祖母さまと呼ばれた女性はオレをじっとみた。
そしてニヤリと笑う。
なんだ、この背すじがゾクゾクする感じ。
「古き神の使者殿か。そちらは従者だな。私はザライアヴィタという。アヴィタとでも呼んでおくれ」
「霊地サハルーサの長殿ですわね。わたくしはヴェラ、こちらはハルトですわ」
もう一度、軽く会釈をしておく。
「用を聞こうか」
アヴィタさんは話が早い。
ヴェラが説明をした。
魔王軍に所属していること。
魔王城の鍛冶場で使う炎晶石を修理するには、上質な炎の魔力が必要なことなどだ。
すべてを聞いて、アヴィタさんが口を開く。
「わかった。では明日にでもドルドに案内させよう」
「ありがとうございます。ご協力いただけて感謝ですわ。あ、そうそう。これは魔王様から預かったものです」
ヴェラがアヴィタさんに小袋を渡す。
故郷に帰るなら渡しておいてほしいと言われたものだ。
「ふむ……」
小袋の中を見て、にやりとするアヴィタさん。
「ララゼヴィンクも気が利くようになったものだな」
あの……と小さく手をあげる。
「ちょっといいです?」
なんじゃと鷹揚に答えるアヴィタさん。
オレを変な目で見てこないってのは安心するね。
「他の家族の方は? お出かけになっている?」
「ああ、お出かけというか。まぁ巡回じゃな。ここ霊地サハルーサは広いからな。毎日、見て回っておるのだ」
「なるほど。そういうことでしたか」
納得だ。
家の中にいるのかと思いきや、誰もでてこなかったからな。
気になってたんだ。
「時にハルトというたな」
アヴィタさんがオレを見た。
目を細めて、胸の辺りをじっと見つめている。
「なんでしょうか?」
「おぬし、ちと休んだ方がいいぞ」
「ええと……どういうことでしょう?」
「ちと、揺らいでおるからの。今のままではいかん。しばらくは……」
いきなりだ。
アヴィタさんの声が遠くなっていく。
「ハルト!」
ヴェラの声だ。
でも、眠気にあらがえない。
なんだ、これ……。




