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鑑定眼の社畜、今日もブラック魔王軍でなんとかがんばります!  作者: 鳶丸


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第025話 社畜、霊地サハルーサを訪れる


 ヴェラは言う。

 高位の魔族は魔力の供給があれば食事をしなくてもいい、と。

 逆に言えば、魔力の供給が追いつかないのなら食事が必要だということ。


 つまり、あの超高速飛行は魔力を大量に消費するのだろう。

 だから食いしん坊が加速する。

 

 そんなことをドライフルーツを摘まみながら言った。

 なるほどな、と納得する部分はあるよ。

 

 だけどさー。

 オレもペコペコりんだよ。

 ま、魔王様の故郷でメシでも恵んでもらおう。

 

 と言うか、長いなこの階段。

 もうかなり下りたと思うんだけど。

 

「ヴェラ、まだ着きそうにないのかな?」


「そうですわね。まだ先……でしょうね。魔力は感じますが、まだ遠いので」


 むーん。

 王道バトル漫画の登場人物みたいなことを言う。

 スカウターもしてないのに。

 

「まだかぁ……遠いなぁ」


 こういう場所はエスカレーターでもほしいね。

 ないとわかる便利さよ。

 

 確かいちばん長いエスカレーターでも、百メートルくらいだったか。

 それじゃあぜんぜん足りないな。

 

 ぎゅるると腹が虫が鳴く。

 あー腹へったなぁ。

 

 水を飲みながら、どんどこ下りる。

 下りて下りて、足が棒になってきた頃に到着にした。

 

 いちばん底だ。

 金属製の扉がある。

 ヴェラが開けてくれた。

 

「さぁ行きましょう」


 扉のむこうは、草原が広がっていた。

 なんだこれ。

 地下じゃないのか?

 

 なんで草原?

 しかも、空には太陽らしきものもある。

 

 さすがファンタジー。

 

 ついキョロキョロとしちゃう。

 広い草原だ。

 

 足下は踝くらいの背の高さの草が生えている。

 草原の奥には木々が見えた。

 

 風が吹いた(・・・・・)

 

 地下なのに?

 訳わからん。

 でも、楽しい。

 

 なんだこれ。

 ワクワクする。

 

「ハルト、そのまま止まっていなさいな」


「ん? なんで?」


「案内人がきたからですわね」


 ヴェラが空を指さす。

 そちらを見ると、なにかが近づいてきていた。

 

 ばさっと背中の翼をはばたかせて地面に下りてくる。 

 あっという間だ。


 頭の左右には巻き角。

 ちびっ子魔王様と同じだ。

 

 でも性別は男性で、見た目は青年だな。

 大学生くらい。

 イケメンなのが悔しい。

 

「貴殿たちは誰だ? 何用があって、この地を訪れた?」


「私たちは魔王ララゼヴィンクの使いですわ。こちらを確認してください」


 と、ヴェラが腰につけたポーチから黒い鱗をだす。

 その鱗を見て、納得したのかな。

 爽やかな笑顔になった。

 

「確かにその魔力、ララゼヴィンクのものだな。なるほど……同胞からの紹介であれば、我らが里に案内しよう」


 おお!

 さすが魔王様!

 話が実にスムーズに進んだ。


「私はドラドオルレリン。ドラドと呼んでくれてかまわない」


 急にフレンドリーになったな。

 

「わたくしはヴェラ、こちらはハルトですわ」


「彼は……ニンゲンなのか?」


 ドラドがオレを見て首を傾げている。

 いや、正直に言ってオレも自信がない。

 だってタマゴ生まれだもん。


「その点も含めて後ほど説明しますわ。見ての通り彼は隷属の首輪をしていますし、わたくしたちに害意を持っていません。わたくしを信用してくださいませんか?」


「……いいだろう。ララゼヴィンクの使いでなければ、即、殺していたがな」


 また、この目だ。

 やっぱりニンゲンには風当たりが強いな。

 

 仕方ないんだと思うけどな。

 でも、ちょっとしんどい。

 

 一応、魔族視点だとニンゲンが一方的に攻めてきたみたいな話だからな。

 そりゃあ恨まれるよって話。

 

 でも、異世界人のオレには関係のない話だ。

 そして彼はそのことを知らないんだから、何を言ってもせんないだけ。


「なんて言ったらいいかわからんけど、ドラド」


 コミュニケーションをとっておかないとな。

 

「……なんだ?」


「お腹がぺこりんなので、里についたらなんか食べさせてください!」


 大げさなまでに頭を下げる。

 

「……」


 ドラドは無言で目を丸くしている。

 

「……」


 ヴェラは天を仰いで、目を手で覆っていた。

 ……たぶん。

 

「……」


 オレはまだ頭を下げている。

 ま、こんなもんだろ。

 

 顔をあげてドラドを見る。

 そして、ニッと笑ってみせた。

 

「ぶはははは! お前、面白いヤツだな」


「いやぁそれほどでも」


「腹が減ってるのか。いいだろう、少し待っていてくれ」


 ドラドが飛んで行く。

 その背を見送ってヴェラが口を開いた。


「とんだ恥をかきましたわ!」


「いやいや、この流れはなんか食べさせてもらえる流れじゃん」


「……確かにそうですけど」


「ヴェラだってお腹ぺこりんだろう? 無理するなって」


「うう……わたくし食いしん坊じゃありませんのに」


「はあ? どの口が言うねん!」


 オレからドライフルーツをかつあげしたくせに。

 まったく、ヴェラにも困ったもんだ。


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