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鑑定眼の社畜、今日もブラック魔王軍でなんとかがんばります!  作者: 鳶丸


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第002話 社畜、誰も説明してくれないから困る


 ぱき、ぱきと音がした。

 目をやると、他のタマゴからも生まれてくる。

 

 なんだろう。

 犬耳に尻尾がある女の子だ。

 やっぱり裸だけど、今はそこを見ている場合じゃない。

 

 他にも猫耳の女の子とか。

 あるいはエルフっぽい耳の女の子とか。

 

 悪魔っぽい女の子もいた。

 他にもスライム系女子とか。

 虫系女子もいる。

 

「あの……ここっていったいなんでしょう?」


 大きなラミアのお姉さんはふぅと息を吐いた。

 眉間に皺を寄せているところを見ると、困っているんだろう。

 

「ここは魔族が生まれる特別な場所。そして、私はその子たちの母親であり、この場所の管理者でもあるわ」


 と言うことは、だ。

 このタマゴはお姉さんが産んだということだろう。

 

 ん? 魔族ってタマゴから生まれるの?

 なんかちょっと思ってたのとちがう。

 

「マザーと呼んでくれていいけど……あなたはニンゲンでいいのよね?」


「いや、正直なところ自分でもわからなくて。いや、本当に。どうなってるの?」


「それはこっちが聞きたいわよ!」


 おっとヒステリー持ちかな。

 星ひとつ減らしまーす!

 いや、まぁ混乱してるだけだといいんだけど。

 

「仕方ないわね。私じゃあなたのこと対処できそうにないわ。なので魔王様に判断を仰ぎましょう」


「魔王様!」


 おっと。

 話がきな臭くなってきたな。


 要はあれだろ?

 魔族しか生まれないはずのタマゴからニンゲンがでてきた。

 桃から生まれた桃太郎みたいな話だもんな。

 

 いや、ちがうか!

 

 アホなことを考えていると、むんずと首根っこを掴まれた。

 猫の子どもにでもなった感じだ。

 そのまま、ぶらーんとしたままオレは運ばれてしまう。

 

 ラミアのお姉さんは速かった。

 ヘビってこんなに速く動けるのって感じ。

 思っていた十倍は速い。

 

 そんなこんなで洞窟をでて、お城の中へ。

 お城の中は顔パスだ。

 

 オレは素っ裸のままなんだよ。

 通りがかる色んな魔族の人たちに見せて回っているようなもんだ。


 おかしくねえ?

 そんな趣味はないんだけど、なんか目覚めちゃいそう。

 

「魔王様!」


 どーんとアポなしで大きな扉を開けるお姉さん。

 いわゆる謁見の間というやつだろうか。

 

 奥の方に玉座があって魔王様らしき人がいた。

 あぐらをかいて座っている。

 

 頭には巻き角が左右に一本ずつ。

 背中にはドラゴンぽい翼が一対。


 尻尾まで生えている女の子だ。

 だいたい中学生くらいかな。

 いや、魔族の女子率高くね?

 

「ん? マザーか」


 あふぅといった感じであくびしている魔王様。

 これは十中八九、玉座で寝ていたはずだ。

 

「魔王様、緊急事態が出来(しゅったい)しましたので、失礼を承知で罷り越しました」


 丁寧な言葉遣いのお姉さん。

 そのお姉さんに対して、魔王様は鷹揚に頷いた。


「そのニンゲンのことか」


「はい。魔樹のタマゴ(・・・・・・)から生まれたニンゲンです」


「は?」


 魔王様は目をひんむいている。

 よっぽどおかしなことになっているんだろう。

 

 その理由はなんだ?

 オレだって知らないよ。

 

「ふーむ。正直、よくわからんな!」


「そのとおりですぅ!」


 やったね。

 みんな仲間さ。

 

 三人が首をひねっているところにどーんと扉が開いた。

 魔王城のセキュリティ、大丈夫か、おい。

 

「ちょっとよろしいかしら」


 ぐわっと振り向く。

 またもや女の子だ。

 

 背中に悪魔っぽい翼がある茶褐色の肌。

 紫紺の瞳にくすみが強めのアッシュブロンドの髪。

 露出多めのボンテージ風の衣装。

 

 さっきの広間にいた子のひとりか。

 なんか見たことあるぞ。

 

「私はヴェラと申します。お初にお目にかかります。魔王様、マザー」


「そこのニンゲンに関わりがあるのか?」


 魔王様は冷静だった。

 ヴェラと名乗った女の子は真面目な顔で頷いている。

 

「そこのニンゲン、古き神からの使者ですわ」


「なん……だと?」


 ちょっと待って。

 古き神とか言われても、なんのことだかわからない。

 誰か、説明プリーズ!

 

「それはいいのですが、ヴェラと言いましたか。なぜあなたが知っているのです?」


 いいぞ、マザー。

 その調子だ。

 ちゃんと理由を聞いてくれ。

 

「わたくしも古き神からの使者だからです。わたくしはそのニンゲンの従者となるべく、魔樹のタマゴから生まれました」


 相棒ってことでいいのかな。

 このお嬢様風の悪魔っ娘が。


「待て、古き神は確かに我ら魔族が信仰している。しかし、あのクソ女神に封印されているはずだ」


 いや、だから待ってくれ。

 謎が謎を呼ぶみたいな展開にはまだ早いから。

 

 オレはぜんぜんついていけてませんってば。

 魔王様!

 

「ふむ……あなたのその言葉を証明するものはありますか?」


 マザーもか!

 あなたは味方だと思っていたのに。

 

「もちろんです! はああ!」


 悪魔っ娘が両腕をクロスして胸の前でバッテンを作る。

 その手の甲に輝く紋様が現れた。

 炎がめらめらと燃えるように、光が揺らめいている。

 

 おお……なんか選ばれし者みたいだ!

 かっこいいぞ!

 オレもできるのかな?

 

「そ、その紋様は……確かに古き神のもの」


 マザーが驚いている。

 驚いてばっかりだな、さっきから。

 

「確かにその紋章は……わかった。話を聞こうじゃないか」


 魔王様も納得しちゃった。

 仕方ない。

 ここはちゃんと伝えよう。

 

「あの……いいですか」


「なんだ?」


「オレも服を用意してくれません?」


 魔王様が上から下までじっと見てくる。

 そして、おもむろに口を開いた。


「……却下だ。百年早い」


 なんでだよ!

 百年経ったら死んでるわ!

 生涯、服なしってどこの蛮族だよ!

 

「プークスクス!」


 これはもうわからせ案件ですわ。

 メスガキ魔王め!


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